競売開始が決定すると行われる現況調査。裁判所執行官による現況調査とは?
住宅ローンの滞納により競売を申立てられ、競売開始の決定がなされると、対象不動産の現況を調査するために、裁判所から執行官がやって来ます。裁判所執行官は、どのような調査をするのでしょうか。
今回は、裁判所執行官が行う現況調査について、詳しく説明いたします。
滞納~競売までのタイムスケジュール
まずは、住宅ローンを滞納してから競売になるまでの、時間的な流れを確認しましょう。
約3ヶ月~6ヶ月
約1ヶ月~3ヶ月
約1週間~2週間
約3ヶ月~5ヶ月
約1ヶ月半
滞納が始まってから競売の期間入札が始まるまでの期間は、おおよそ8ヶ月~1年数ヶ月というのが一般的です。
但し、滞納者の状況や世の中の情勢、執行裁判所の業務の混雑具合などによって、タイムスケジュールは変動しますので、全員が同じとは限らない点には注意が必要です。
競売における現況調査とは
では、裁判所執行官が行う現況調査とは、どのようなものなのでしょうか。
現況調査が行われるタイミング
執行官による現況調査は、競売開始決定の通知が債務者に届いてから、概ね1~2週間後に行われることが多いです。
滞納が始まってから、おおよそ4~9ヶ月後というイメージです。
突然執行官が訪問してくるわけではなく、事前に裁判所より現況調査に係る通知書が送られてきます。通知書には、現況調査が行われる日時が記載されていますので、都合が悪い場合には通知書記載の指示に従い、早めに裁判所へ連絡して日程調整を図るようにしてください。
詳細は、通知書に記載されています
現況調査では何をするのか
執行官による現況調査では、主に以下の調査が行われます。
外観・建物基礎などの状態確認
室内の状態確認・現状の写真撮影
周辺環境の確認
居住者・関係者などへのヒアリング
現況調査には不動産鑑定士も同行して調査・確認を行います。現況調査の受け手側が何かするということは特になく、執行官や不動産鑑定士から質問等があった場合に答える程度です。
現況調査はなぜ行われるのか
現況調査が行われる理由は、競売不動産の購入検討者(入札参加者)に対して、入札の検討材料となる資料を作成するためです。
通常、不動産を購入する際には、対象不動産の内部を実際に見て判断するのが一般的です。しかし、競売不動産に関しては、原則、内部を見ることができません。
そのため、競売不動産を購入したい人は、執行官と不動産鑑定士が現況調査に基づいて作成した調査資料だけで購入の判断をしなければならないのです。
競売不動産の物件資料とは
では、現況調査に基づく競売不動産の物件資料には、どのようなものがあるのでしょうか。
競売不動産の物件資料は、「三点セット」と呼ばれています。「三点セット」の内容は、次の通りです。
現況調査報告書
現況調査報告書とは、裁判所執行官が実際に競売物件を見た上で、その物件に関する権利関係や占有状況、形状などについて調査した内容を記載した書類です。
現況調査報告書には、土地の現況地目、建物の種類、構造等、不動産の現在の状況のほか、不動産を占有している者の氏名やその者が占有する権原を有しているかどうかなどが記載されており、不動産の写真も添付されています。
評価書
評価書とは、裁判所が選任した不動産鑑定士が、その物件の価格評価とその算出過程などについて記載した書類です。
評価書には、不動産の評価額、周囲の環境の概要など、不動産の現況とそれを巡る公法上の規制等、法律関係のあらましが分かるようになっています。
物件明細書
物件明細書とは、買受人が引き受けることとなる権利関係など、競売物件に関する一定の情報が記載された書類です。
物件明細書には、作成した裁判所書記官の氏名および、その所属する執行裁判所名、事件番号、作成日付のほか
- 不動産の表示
- 売却により成立する法定条件の概要
- 買受人が負担することとなる他人の権利
- 物件の占有状況等に関する特記事項
- その他買受けの参考となる事項
といったものが記載されています。
物件明細書は、裁判所書記官が記録上表れている事実等とそれに基づく認識を記載したものに過ぎず、当事者の権利関係を確定するものではなく、権利関係に関する裁判を拘束するものでもありません。
したがって、新たな事実の発生・発覚等によって権利関係が変わることもあり、また、物件の状態が変わることもあり得ます。
現況調査への対応方法
裁判所執行官による現況調査は、それほど長い時間はかかりません。
当日の立会いに関しても、絶対に立ち会わなければならないというものでもなく、罰則等も特に設けられているわけではありません。
しかし、執行官による現況調査には強制力があるため、不在や居留守をしたとしても、自宅の鍵を強制的に開錠され、調査は行われてしまいます。
裁判所執行官の現況調査における強制執行(鍵を壊して屋内に立ち入る等)は、法律によって認められています。
現況調査がある場合には、調査をスムーズに終わらせるためにもきちんと立会い、執行官などからの質問にもしっかり受け答えをして対応することが望ましいでしょう。
現況調査が行われても任意売却は可能!
現況調査が行われる段階になっては、もう任意売却は無理だと思われている方も意外と多くいらっしゃいます。しかし、この段階でもまだ任意売却ができる可能性はあります。
但し、競売までのタイムリミットは既に決まっている状態です。時間的な猶予はあまりありませんので、任意売却による解決を希望される場合には、早急に任意売却の専門家に相談されるようにしてください。