銀行口座が凍結された!口座の凍結と差押えの違いや対処法を解説

銀行口座からお金を出金しようとしたら、引き出すことができなくなっていたということはありませんか?
また、住宅ローンを滞納していて口座凍結されるのではないかと心配している方もいるでしょう。

口座からの出金ができないので、口座凍結されたと思っていても、実は口座差押の可能性があります。似ているように思いますが、口座凍結と口座差押は異なる手続きです。

口座差押をするためには、債権者が債務名義(裁判の確定判決、裁判上の和解、強制執行認諾文言付き公正証書等)を取得していることが必要となり、債務名義の取得までに訴訟提起が必要であるなど、時間も手間もかかります。そのため、直ちに債務名義を取得することができない債権者は、差押えの代替手段として、債権の存在と債権保全の必要性を疎明し、担保金等を裁判所に預けることで債務者の資産に対し「仮差押え」をすることができます。

特に財産の流出、移動が容易な金融機関の口座には、差押よりも直ぐに対処できる「仮差押え」によって手続きを進めるケースが見受けられます。

本記事では、「仮差押え」についての説明は「差押」と異なる部分のみ簡略的に説明させていただき、『口座凍結』と『口座差押』の違い、それぞれの対処法について解説いたします。

【執筆】

株式会社いちとり
代表取締役/代表相談員

林 達治

東証一部上場不動産会社、外資系金融機関、任意売却専門会社を経て、日本全国の不動産を対象とした任意売却を専門に扱う「株式会社いちとり」を設立。

勇気を出して相談してくださったご相談者様に最後まで寄り添ってサポートすることを信条に、現在も会社代表を務めながら代表相談員として、住宅ローンの悩みを抱える方々の問題解決のために精力的に活動している。

長年培ってきた任意売却に関する豊富な知識と経験を活かして、個人・法人問わず、年間500件以上の相談を受けており信頼も篤い。

目次

銀行口座の凍結や差押えが行われるケースとは

銀行口座の凍結や差押は、正当な理由がなければ行われるものではありません。

口座の凍結や差押が実行に移されるケースとしては、

  • クレジットカードの引き落とし不能
  • 消費者金融やカードローンの返済遅延
  • 税金の滞納
  • 住宅ローンの滞納

などが一般的には挙げられます。

しかし、支払い日(引落日)までに支払い(入金)が確認できないからといって、直ぐに銀行口座の凍結や差押が行われるわけではありません。法律に基づいた督促などを行っても支払われない場合の最終的な措置として、銀行口座の凍結や差押の手続きが行われます。

口座凍結と口座差押の違い

「口座凍結」と「口座差押」は混同されがちですが、それぞれ異なる手続きです。口座凍結が行われるケースと、口座差押が行われるケースでは状況が異なります。

では、それぞれの手続きは、どのような場合に行われるのでしょうか。

口座差押とは

債権者が口座開設をした金融機関以外であった場合に行われる手続きが「口座差押」です。

例えば、キャッシングやカードローンを利用している場合の消費者金融業者、法人の場合では商品を作るための材料や部品を仕入れている場合の仕入先などをイメージすると分かりやすいかもしれません。支払い(返済)を求めている債権者が、口座開設をした当該金融機関ではないときに「口座差押」の手続きが行われます。

それでは、手続きの流れを大まかにみていきましょう。

口座の差押を行うために、債権者はまず「債務名義」を取得します。
債務名義とは、強制執行が実現されるべき債権の存在や範囲などを証明した公的文書であり、この債務名義をもって裁判所などの執行機関に口座差押の強制執行を申立てることができます。

債務名義の取得方法としては、次のようなものが挙げられます。(民事執行法第22条)

【一例】
  • 裁判によって「確定判決」や「仮執行宣言付判決」を得る
  • 債権者と債務者の話し合いによる「和解調書」を得る
  • 債権者の申立てによって送達される「支払督促」から「仮執行宣言付支払督促」を得る

などです。

これらの債務名義を得ることで、債権者は裁判所を通して口座差押ができるようになります。口座差押は、このように段階を踏んだ手続きを要するため、督促や訴訟が始まった直後に差押がされるわけではなく、一定期間経過後に手続きが実行されます。

尚、冒頭で申し上げた「仮差押え」は、債務名義の代わりに債権の存在及び債権保全の必要性を裁判所に疎明し、裁判所が決定する担保金を支払うことで可能となります。

口座凍結とは

さて、次に「口座凍結」のケースです。

口座凍結は、銀行カードローンなど、口座開設した銀行からの借入れの返済を長期的に滞納していた場合などに実行される手続きです。

口座差押の場合には、段階を踏んで手続きが行われますが、口座凍結の場合は、債務名義の取得や執行機関への申立てなどを行わなくても直ちに実行することができます。理由は、ローン契約等に基づいて行われている正当な手続きだからです。

また、債務整理を行うため、弁護士が受任通知を金融機関に送付した場合にも口座凍結が行われる可能性があります。金融機関が、銀行取引約定書等に基づき、自らの貸付債権の保全を図るために行うこととなります。

裁判所を通して行う手続きとは異なるため、差押よりも早急に行われる傾向があります。

銀行口座が凍結や差押になるとどうなるのか

銀行口座の凍結と差押は異なる手続きになるため、制限される内容も異なります。どちらも預金は差押えられますが、入出金などの利用に違いが生じます。

口座差押の場合

口座差押が実行されると、その時点の預金残高から債務名義で示された金額を上限として債務者の預金が「別段預金(銀行が設ける別口座)」へ移し替えられます。その際、預金口座内の残高が債務名義で示された金額より少ない場合には、預金の全額が別段預金に移されてしまいますので、預金残高はになってしまいます。

しかし、口座差押は凍結とは異なり、別段預金への移し替えが完了したら、その後は今まで通り口座を利用することが可能です。そのため、差押えられた口座であっても、引き続き給与振込先口座としての利用は可能ですし、ATMなどで入出金も行えます。

口座凍結の場合

口座凍結が実行されると、口座の利用に制限が設けられます。

口座凍結の場合は、口座への入金は可能ですが、原則として口座凍結が行われている期間中ずっと出金をすることができなくなります。

そのため、「住宅ローンや公共料金、税金などの口座引落としができない」「口座からの家賃振込みが行えない」などといったトラブルが生じる恐れがあります。

口座凍結や口座差押の期間、タイミングについて

銀行口座の凍結や差押えの可能性がある場合、いつ頃手続きが行われるのか、予め知っておきたいものです。口座の凍結や差押えのタイミング、期間などについても確認していきましょう。

口座の凍結や差押えが行われるタイミング

まず、口座差押の場合です。

長期に渡って滞納を続けていると、いずれ裁判所から支払督促が届きます。その支払督促にも応じない場合には、差押に向けて手続きが進んでいくことになります。

実際に「差押」となると、まずは訴訟提起等を行い、裁判で勝訴判決を得てからの手続きになりますので半年~1年以上かかります。判決が出るまでには、ある程度の時間がかかりますので、まずは「仮差押え」をしておくというケースが多いようです。

仮差押えとは、訴訟提起前あるいは提起している間に、債務者の財産を仮に差押えることで、勝訴判決が出るまでの間に債務者がその財産を処分してしまわないよう、裁判所に保証金を供託し、債務者の財産を事前に保全しておく手続きです。そして、勝訴判決が出た暁には「差押」によって、債務者による財産の処分を禁止した上で、強制執行によりその財産を売却し、売却代金から債権を回収します。

差押や仮差押えが行われやすいタイミングとしては、給料日の直後や振替日の直前が多いと言われています。

次に、口座凍結の場合です。

債務整理による口座凍結の場合には、弁護士に債務整理を依頼した後、早期の段階で口座凍結が行われる可能性があります。

弁護士に依頼した場合、弁護士が金融機関に受任通知を送付することが一般的なため、これを契機に金融機関が「支払停止」であると捉え、預金を引き出されないようにするために口座の凍結が行われるのです。

口座凍結や差押が行われる期間

口座の凍結や差押が行われると、どれくらいの期間影響を受けるのかという点も気になると思います。

口座差押の場合、その効力は一度きりですので、差押によって受ける影響は一時的です。しかし、差押が行われる期間(差押がなされる可能性のある期間)は、一定の期間が経過すれば解除されるというわけではなく、債務を完済するか、時効が消滅するまで続く可能性があります。

口座凍結の場合は、口座差押より影響を受ける期間は長期に及びます。
保証協会もしくは、保証会社の保証がある債務については、代位弁済が完了した時点で口座凍結は解除され、解除までの期間は13ヶ月ほどが一般的ですが、保証がついていない債務等についてはその限りではありません。

口座の凍結や差押に関する注意点

口座の凍結や差押が実行されれば、口座内の預金が引き出せなくなります。(口座差押の場合は、別段預金へ必要額が移行された後であれば口座は利用できます)

もし、同じ口座で他の支払い(住宅ローン、税金、公共料金、クレジットカード、携帯電話料金など)も行っているような場合には、タイミングによっては口座から引き落としができないといったことが起きる可能性があります。

そうなると、電気やガス、水道などのライフラインや携帯電話などが止まってしまう可能性がありますし、住宅ローンや税金の滞納になる恐れもありますので、このような新たな問題が起きないように注意しなければなりません。

口座の凍結や差押を回避するための対処法

口座の凍結や差押を避けるためには、その原因となった債務を支払う必要があります。
しかし、口座の凍結や差押になるかもしれないという状況下では、今すぐ支払うお金がないというケースが多いでしょう。

そこで、債務を支払う以外の方法で、口座凍結や口座差押を回避するための対処法をご紹介します。

個人再生

個人再生は、債務整理手続きのひとつです。

大幅に借金を減額して残債務を分割(概ね3年から5年)で支払っていく方法です。自己破産とは異なり、持家などの財産を残したまま債務整理を行える可能性が出てくることが特徴です。

但し、債務整理をした後も返済は続くため、ある程度、返済ができるという見込みが必要になります。

自己破産

自己破産は、借金が全て免除される債務整理手続きです。(但し、公租公課(税金関係)などの債務は、非免責債権として免除されません)

借金が全額免除されるため、自己破産手続きが終了すれば返済する必要はなくなります。しかし、持家や車などの財産は、原則として破産管財人により換価・処分され、債権者に配分されることになります。

また、連帯保証人のついている借金の場合には、連帯保証人に残債務の督促が行われることになりますので注意が必要です。

任意売却

住宅ローン滞納の場合は、銀行口座の凍結や差押が行われる前に、競売による住宅の売却が優先されます。そのため、住宅ローンの支払いに困っている場合には、任意売却の手続きを検討されることをお勧めします。

任意売却であれば、競売よりも高値で売却することができ、売却代金から住宅ローンを完済するなどして、口座の凍結や差押になる前に問題を解決できる可能性があります。

債務整理や任意売却の相談は専門家にすることをお勧めします

債務整理は、法的に借金問題を解決する手続きになりますので、法律の専門家である弁護士にまずは相談してみることをお勧めします。

任意売却の場合は、不動産を売却する手続きになりますので、不動産の専門家である不動産会社への相談がお勧めです。その中でも任意売却を専門に扱う不動産会社がベストです。金銭問題の原因が住宅ローンの場合には、まずは任意売却を検討してみてください。

また、「債務整理」と「任意売却」の先後で悩んでいる場合には、任意売却で不動産を売却してから債務整理手続きに着手するという流れで対処するほうが、良い結果に結びつく可能性が高いと考えます。

どのような状況にあったとしても、早めの段階でご相談いただくことで、解決への選択肢が広がります。

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