住宅ローンの自己破産はするべき?デメリットや自己破産以外の対応を紹介
住宅ローンの返済が滞り始めたときに、自己破産の選択肢を考える方もいらっしゃると思います。
周りに自己破産をしたと気軽に話せるものではないので、どのようなデメリットがあるのかなど、分からないのも無理はありません。
このページでは、住宅ローンがある場合の自己破産のデメリットと、自己破産以外の対応方法などについてお伝えします。
自己破産とは?
自己破産とは、裁判所に申立てを行い所定の手続きを経て、債務を免責(免除)してもらう債務整理手続きのひとつです。
借金返済に困ったときには、その人の状況に応じて、「任意整理」「自己破産」「個人再生」などの手続きを利用します。
いくつかある債務整理手続きの中で、債務を免責してもらうという点に特徴があるのが自己破産です。
自己破産の条件
自己破産には、次の2つの条件があります。
支払不能状態であること(破産法15条)
自己破産は、本来支払うべき債務について一方的に免責するものですので、本当にもう支払うことができないという場合に限られます。
免責不許可事由がないこと(破産法252条1項)
免責という特別な効果を認めるのですから、それに相応しくない事を行っている者に免責を認めないとしています。
ギャンブルや浪費で借金を作った場合(4号)、身内や友達だけに支払ったような場合(3号)、裁判所に虚偽の説明をした場合(8号)などがこれに該当します。
万が一、免責不許可事由にあたる場合でも、借入れ状況やその後の反省などを考慮して免責を認めるのが相当な場合には、裁判所の裁量で免責できます。(裁量免責:破産法252条2項)
自己破産をした際のデメリットとは?
自己破産は、借金を免責してもらえるメリットがある強力な手続きですが、その一方でデメリットもあります。
住宅ローンで購入した住宅を手放さなければならない
免責不許可事由のところでお伝えしたのですが、自己破産手続きを利用した場合、特定の債権者に対しての返済が禁止されます。(破産法252条1項4号:偏波弁済の禁止)住宅ローンの支払いも例外ではありません。
そのため、住宅ローン債権者は、住宅についている抵当権を実行して競売を行い、競売代金から債権回収を図ります。
つまり、住宅ローンを組んでいる人が自己破産をするということは、住宅を手放さなければならないことになります。
一定以上の資産や現金を没収される
自己破産手続きは、資産を一度清算して債権者に配当を行い、残った債務を免責する手続きです。そのため、資産・現金を没収され配当されることになります。
とはいえ、自己破産手続きによって債務者を一文無しに追い込んで放り出すわけではなく、一定以上の資産・現金を持ち続けることは認めています。例えば、現金は99万円までは持っておくことが可能です。
保証人や連帯保証人が債権者から返済を迫られる
自己破産は、すべての債権者について自己破産手続きの中で処理される必要があります。
債務の中には、保証人や連帯保証人がついているケースもあります。
このような場合に自己破産手続きを利用すると、債権者は保証人・連帯保証人に返済を迫ることになります。
信用情報機関に情報が登録される
債務整理をした事実は、信用情報機関に登録されることになります。これによって、新たな借入れ等が難しくなります。
このような状態のことを世間一般では「ブラックリスト」と呼んでいます。
これが原因で、日常生活を送れないようなイメージを持つ方が多いのですが、デビットカードやETCパーソナルカード、携帯電話やスマートフォンは一括で購入するなど、代替となる方法はいくらでもあるので、暮らせなくなるということはありません。
官報に掲載されてしまう
自己破産をすると、官報に掲載されることになります。
官報とは、国による法律の公布や会社の決算公告など、法律で公にするために利用するもので、自己破産の場合にはそのことを知らずにいる債権者がいないかを確認するために公告がされます。
官報には氏名、住所、自己破産手続きの開始決定がされた旨が記載され、公にされます。官報は誰でも閲覧することが可能ですが、これをいちいち見ている人は殆どいませんので、気にする必要はありません。
職業に制限がかかる
自己破産手続きをすると、警備員、保険募集人、宅建士など一部の資格を利用した職業に就けなくなります。
但し、自己破産手続きが終了して復権すれば、再度資格への登録は可能です。
非免責債権の支払いはしなければいけない
自己破産手続きでは、借金などの債務は基本的に免責されることになります。しかし、一部の債務については政策的な観点から、免責の対象となっていません。
このような債務を「非免責債権」と呼んでおり、破産法253条に規定されています。
主なものとしては、「税金」「養育費」「重大な不法行為損害賠償請求権」などが挙げられます。
自宅を守るために自己破産以外の方法はないのか
ここまで、債務整理の方法として自己破産を利用するということを前提でお話ししました。
しかし、他の方法によって自宅を維持できないものでしょうか。自己破産以外の方法について確認しましょう。
任意整理
任意整理とは、債権者と話し合いをして借金返済を楽にしてもらうものです。
個別に話し合いをするので、住宅ローンは従来通り支払い続けるということが可能ですし、連帯保証人がいる債務について債務整理の対象とすることを避けることもできます。
しかし、自己破産とは違い、元本の分割弁済を必要とする手続きですので、その支払いをすることができるかどうかが鍵となるといえます。
個人再生
個人再生とは、裁判所に申立てをして債務を減額してもらい、分割で支払う手続きをいいます。
この個人再生では、住宅ローンはそのまま支払い続けることが可能なので、住宅を維持できる可能性があります。
しかし、住宅ローンの長期滞納(6ヶ月以上)があると利用できません。
任意売却
債務整理ではないのですが、「任意売却」という方法があります。
任意売却は、住宅ローンで購入した物件を競売ではなく自身で売却して、引っ越し代などの工面を受けることができる売却方法をいいます。
場合によっては、購入した人と賃貸契約を結ぶことで、所有権者ではなくなっても賃貸として住み続けることができる「リースバック」という方法を利用できる場合もあります。
任意売却は、債権者と話し合いをしながら売却を行う必要があるので、専門の不動産会社に依頼して行います。
自己破産後に住宅ローンを組むためには
住宅ローンについてもうひとつ確認しておきたいのが、
■ 自己破産後に住宅ローンを組むことができるのか
■ 住宅ローンが組める場合にはどのようにすればよいのか
ということではないでしょうか。
自己破産手続き後に住宅ローンを組むことも可能である
まず、自己破産手続き後にも住宅ローンを組むことは可能です。
自己破産手続きで住宅ローンを組むことができなくなるのは、信用情報に自己破産をした旨が記載される(ブラックリストに載る)からです。
ブラックリストは永遠ではなく、最長で10年後には消えますので、その後であれば住宅ローンの借入れにブラックリストが影響を及ぼすということはありません。
しかし、信用情報に自己破産をした旨が記載され、その後消去されると、信用情報は「何一つ残っていない」という状況になります。このような状況を「スーパーホワイト」と呼んでいます。
通常、社会人であれば、「クレジットカードを作る」「スマートフォンの分割契約をする」などで、ある程度の信用情報が残っているのが一般的で、それらの情報が無いのは逆に不自然です。
このことを踏まえて、自己破産後に住宅ローンを組む方法を以下で考えてみましょう。
信用情報機関に登録情報の開示を求める
自己破産をした場合、およそ7年~10年で信用情報が消えることになります。
ケースによって7年の場合や10年の場合があるので、7年後に一度、信用情報機関の登録について確認してみると良いでしょう。信用情報機関に問い合わせをすると、自分の信用情報に関する情報の開示を求めることが可能になっています。
しっかりした頭金をつくる
住宅ローンの借入れは、消費者金融の借入れのように簡易な審査ではなく、収入や貯蓄の状況などの総合判断を行います。
ブラックリストには載っていないからと言って、それで住宅ローンの借入れをすることができるということにはならないので、借入れ時の状況をより良くしておく必要があります。きちんと節約をして、頭金をより多く貯めるようにしましょう。
ブラックリスト後にクレジットヒストリー(クレヒス)を作る
自己破産をした後は、スーパーホワイトという状態になります。
これは、信用情報の記録がないという状態であることは上述した通りですので、あえて信用情報に何らかの記録をつけることは重要です。
このような信用情報上のクレジットに関する記録のことを「クレジットヒストリー(クレヒス)」と呼んでいます。
突然住宅ローンの申込みをするのはハードルが高いので、「クレジットカードを作る」「ETCカードを作る」「スマートフォンの分割購入をする」など、最初はハードルが低いものを利用してクレジットヒストリーを作るようにしましょう。
自己破産の際に関係があった金融機関を避ける
自己破産をすると、借入れをしていた会社からは信用情報が消えた後も借入れをすることができません。
このような状態を「社内ブラック」と呼んでいます。
社内ブラックとなっている金融機関に、住宅ローンの申込みをしても審査は通りません。
その結果、審査を何件も行ってしまうと、その行為がさらにマイナスに影響することになります。自己破産の際に関係のあった金融機関からの借入れは避けましょう。
家に住み続けたい人や再度ローンを利用したい人は任意売却を
借金返済に困っている場合や、今は自宅を手放しても再度住宅ローンで自宅を購入したいという場合には、「任意売却」を検討してみてください。