老後破産にならないために。ライフイベントを把握して原因と対策を考えよう

人生設計を考えるにあたって、絶対に避けたいのが「老後破産」ではないでしょうか。

■ 老後の生活に苦労するのはなぜか
■ どのような対策があるのか

50代から、どのようなライフイベントがあるのかを確認しながらお伝えします。

目次

老後破産とは?

老後破産とは、老後に借金が返済できなくなり自己破産することをいいます。

法律用語のように明確な定義はありませんが、老後になって生活費に困る生活をする人が増え「下流老人」という言葉などと一緒に言われ始めた用語です。

老後に発生するライフイベント

老後破産を知るにあたっては、老後と言われる生活を迎え始める50代くらいから、どのような資金需要があるのかを知っておく必要があるでしょう。

50代に発生するライフイベント

50代は、子育てがひと段落して、老後に向けての貯金をしっかり貯め始める時期です。

人によっては住宅ローンを完済している時期でもあります。

しかし一方で、「人生80年時代」という言葉がありますが、これを考えると50代の頃には親が70歳~80歳代になってくる頃です。つまり、50代になってくると、親の介護や終末期にかかる費用が必要となってきます。

勿論、人にもよりますが、公益財団法人生命保険文化センターの調査によりますと介護期間の平均は4年7か月にも渡ります。
また、介護に要した費用については、一時的な費用の平均が69万円、月々の費用の平均は7.8万円かかることになります。

親の介護のために費用がかかったり、共働き夫婦の一方が仕事を辞める・制限することになる可能性も出てきます。

60代に発生するライフイベント

60代は、定年によって退職する時期になります。

退職金を手にして年金で暮らす、再雇用をしてもらうなどの変化がある時期です。

中央労働委員会の「令和元年退職金、年金及び定年制事情調査」によると、定年退職によって手にする退職金の平均は、大卒で21,578,000円、高卒で16,396,000円となっています(勤続35年)。

この退職金を見込んで海外旅行をする、慣れない投資をするなどで、ついつい出費が増えることになり、気が付くと貯蓄が大幅に減っているようなことがあります。再雇用などで働くにしても、たくさん働いてたくさん稼ぐということが難しく、年金の貰い方次第では働き損というケースもあるようです。浪費癖が抜けずに、生活苦に陥ることがあります。

70代以降に発生するライフイベント

70代以降は、年金や貯蓄を取り崩しながら生活をすることになります。

自分の介護医療に関する費用や、自宅のリフォームなどに大きな出費が必要となることがあります。

また、孫もできる頃で、孫に関わるイベントに出費をする方も多いです。特に健康面での出費によって生活が苦しくなってしまう方が多い時期です。

老後破産の原因とは

前述のようなライフイベントから、老後破産が起きる原因として多いものに、次のようなものが挙げられます。

生活水準を落とすことができない

特に65歳以降ですが、退職をした後も生活水準を落とすことができないことがあります。

生活水準を落とさなくても十分に暮らしていけるだけの貯蓄や退職金があるような場合や、不動産投資をしていて家賃収入があるような場合でもない限り、現役時代よりも生活水準を落とさざるを得ない場合があります。

また、退職金を手にしたことで気持ちが大きくなって、ついつい生活水準を上げてしまい、その後に落とすことができなくなってしまうような方もいます。

老後にはどうしても「頑張って働いて返す」という方法が難しくなるため、そのまま自己破産をすることになるケースがあります。

住宅ローンが残っている

60代によくある老後破産の原因として、住宅ローンを返済できないまま、定年退職・早期退職となってしまったような場合があります。

住宅ローンは「フラット35」という住宅ローンにあるように、長期間かけて返済することが前提です。
昨今の晩婚化の影響で、30代後半で結婚した人が、子どもができた40代になってから住宅ローンを組むような場合、65歳の定年でもまだ返済が終わっていないという場合があります。

もちろん、このような場合には期間が短く設定されることもありますが、住宅ローンを借入れた当初の会社の定年が65歳であったのに、転職で定年が60歳になってしまったような場合には、当初の想定より5年も早く定年となることになります。
その結果、住宅ローンの返済ができないようなケースがあるのです。

子供が離婚して戻ってきた

子供が女性の場合に多く考えられるケースとなりますが、離婚をして実家に戻ってくる場合があります。

特に、退職して出産をした女性の場合、それまでと同じような収入の確保が難しいことが多いです。離婚した元夫が養育費を払わないようなケースは非常に多いので、孫を養育する資金の捻出が必要となります。

戻ってきた子供が相手からDVなどを受けており、精神的なショックから働けなくなるようなケースですと、世帯収入が増えません。その結果、老齢の両親の年金と子供のパート収入だけでは足りず、自己破産が必要となるケースも出てきます。

教育資金が必要

こちらも晩婚化の影響なのですが、子供の教育資金として多額のお金が老後にかかるケースがあります。

42歳のときに生まれた子供が22歳で大学卒業するときには、親は64歳になっている計算となります。前述のように、子供が家に戻ってきている場合には、孫にも教育資金が必要です。費用がかさむ結果、自己破産をする必要がある場合もあります。

医療や介護などの費用が必要

医療や介護などで費用がかかった結果、自己破産することは非常に多いです。

例えば、かつて癌といえばそのまま死を連想させるようなものでしたが、最近では早期発見・早期治療によって治せる病気となってきました。医療が高度化するに従って、治療のための選択肢も大変多くなっており、中には高額なものもあります。

また、体がある程度不自由になっても暮らしていけることから、介護などに必要な費用に対する負担も高くなっています。その結果、借金を背負うようなこともあり、このような状態で収入を増やすわけにもいかず、自己破産をすることにもなりかねません。

老後に使える貯蓄を考えていなかった

例えば、親族に糖尿病や癌などで早くに亡くなっている人が多い場合に、自分もそう長くは生きていけるとは思わず、老後に対する蓄えをしないようなケースがあります。このような場合に長生きしてしまうと、生活費の捻出すらままならないようなケースが発生します。

熟年離婚

昨今、よく聞く言葉として「熟年離婚」という言葉があります。

子供が独立した後に、定年して一緒にいる時間が長くなってといった様々なことがきっかけで、高齢になってから離婚をすることがあります。

二人で暮らしていくことを前提に老後設計を立てていると、離婚によって慰謝料を払うことになることで貯蓄が一気に減ってしまうことも考えられます。また、各々が一人暮らしをするということは、それだけ生活にかかるコストも高くなります。

必ず想定以上の出費が必要となるので、その支払いに耐え切れず自己破産へと繋がることが発生しえます。

老後破産を防ぐために考えておくべきこと

では、老後破産を防ぐためには、どのような方策があるのでしょうか。

老後に向けてライフプランはこまめに見直す

現在、老後に向けてプランを立てている場合でも、その見直しは頻繁に行いましょう。

30代の頃に立てていた計画が、20年後の50代になっても同様に通用するかというと、通用しない可能性は高いです。常に変化していく今と将来を見通した最新のライフプランを立てるために、こまめに見直しを行う必要があります。

税金や公的保険、住宅ローンなどをしっかり払う

税金・公的保険・住宅ローンなどの支払いはきちんと行うようにしましょう。

特に、家計に余裕があるのであれば、住宅ローンの繰り上げ返済を頑張るのは、老後破産で住居を失うという一番避けたい事態を避けるのに有効です。

健康を保つように意識する

健康を保つ意識は重要です。健康を保つのは一朝一夕にできません。
特に、長い期間の介護が必要になるような事態は避けるべきです。

老後破産になりそうになったら

現在、老後破産をするような事情があるのであれば、どのような解決方法があるのでしょうか。

住宅ローンの支払いが残っている場合は任意売却

住宅ローンの支払いが残ってしまった場合には、任意売却という方法を検討しましょう。

老後破産が必要な状況ですと、債務整理の中でも任意整理や個人再生のような返済を長期間継続する手続きの利用は難しいといえます。そのため、自己破産手続きになることが多いのですが、住宅ローンで住宅を購入した場合、そのまま住み続けることができません。

このような場合には、任意売却を利用して、引っ越し資金を確保するなどして、新しい生活にスムーズに移れるよう心がけましょう。

住宅に資産性があるならリバースモゲージ

例えば、都市部の駅から徒歩で行けるような距離のマンションであれば、築年数が古くなっても価値が衰えず資産性があるような場合があります。このような場合には、その住宅を担保にお金を借りて老後資金にする、リバースモゲージというものがあります。

一時的に老後資金を捻出することは可能になるのですが、借入れした額を使い果たして返済ができないような場合には、やはり自己破産が必要になるので、利用にあたっては慎重に行いましょう。

病気になった場合は地域包括支援センター

病気になってしまい、それが原因で生活ができなくなってしまった場合には地域包括支援センターに相談をしてみましょう。

地域包括支援センターとは、地域で高齢者を支えるための中核機関となるところで、介護サービスに関する最初の窓口にもなっています。その人が置かれている状況の最初の相談窓口になっており、必要に応じて社会福祉協議会や市区町村の窓口などを紹介してもらえます。

高額なローンを契約させられてしまったら消費者生活センター

高齢者はよく高額なローンなどを無理やり契約させられるなど、トラブルに見舞われるケースは後を絶ちません。
このようなことで貴重な老後資産を失い、果ては自己破産になる必要はありません。

このような消費者問題については消費者生活センターに相談を行い、クーリングオフを始めとした手続きによって、不必要な出費を抑えましょう。

生活保護の検討

全く生活できる見通しが立たない場合には、生活保護を検討してください。

現役時代にきちんと納税していたのであれば、住居の確保や医療を受けるなどの最低限の生活を守るセーフティネットを利用することをためらう必要はありません。

老後破産にならないために

このページでは老後破産にならないように、ライフイベントからその原因や対策・老後破産が必要な状況になった場合の対応方法についてお伝えしました。

現在、現役世代の方は、まずはライフプランを専門家と見直してみるなどして、老後破産を防ぐように心がけてください。
老後破産が心配な方は、なるべく早く専門家と相談するようにしましょう。

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