離婚と不動産売却。住宅ローンなどのトラブルを抑える方法
住宅ローンで住宅を買った夫婦が離婚をする場合に気になるのは、離婚によって住宅ローンや住宅はどのように取り扱うのが良いのかということではないでしょうか。
今回のコラムでは、離婚をした場合の住宅ローン・不動産についての取り扱いについてお伝えします。
離婚をした場合の住宅ローンの取り扱い
離婚をした場合に、住宅ローンはどのような取り扱いになるのか、住宅ローンの契約形態ごとに見ていきましょう。
その前に、住宅ローンの契約内容についての確認です。住宅ローンは、どのような契約内容となっているのでしょうか。
住宅ローンの契約内容
住宅ローンは、住宅を購入するための資金を借入れる「金銭消費貸借契約」です。
金銭消費貸借契約という点で消費者金融からの借入れと同一ですが、住宅ローンは住宅を購入するための資金を20年以上かけて長期分割返済するという特徴があります。
そのため、返済できなくなることを想定して、貸付けを行う金融機関などは次のような対策を行います。
- 対象となる不動産に「抵当権」をつけて、返済できなくなったら競売をして回収する
- 連帯保証人をつける
では、離婚をした場合の住宅ローンの契約形態ごとに、住宅ローンはどのような取り扱いになるのか確認していきます。
夫または妻名義になっている場合
住宅ローンの名義が、夫婦どちらかの名義になっている場合です。(現実では、夫名義になっていることが多いです)
この場合、離婚をしても住宅ローンの名義は変わりません。また、夫婦の一方が連帯保証人となっていることがありますが、「離婚をした」「もう家には住まない」からといって、連帯保証人を抜けられるわけではありません。
夫名義の住宅ローンになっている場合には、住宅も夫の名義になっていることが多いので、離婚の際に慰謝料・養育費・財産分与などの話し合いによって、「どちらが住むか」「誰が今後の住宅ローンを払うのか」などを決めることになります。
共有名義・連帯債務になっている場合
夫婦がそれぞれ連帯債務者として住宅ローンを契約し、住宅は共有名義となっている場合です。
共有名義の場合も、離婚によって住宅をどのように扱うかの話し合いがなされます。住宅ローンの名義に変更はなく、夫婦の連帯債務とされたままです。
財産分与の結果、住宅の名義を妻にすると決めても、住宅ローンの債務者は変わらず夫婦の連帯債務扱いとされます。
この場合、近親者(例えば夫の父など)が連帯保証人となっていることがありますが、離婚によって連帯保証人名義に変更が生じる訳でもありません。
離婚後に発生する問題
離婚後には、住宅に誰が住むかを決めることになり、それによって様々な問題が発生します。
そのまま二人とも住む場合
法律上では離婚をしても、そのまま2人で住宅に住む場合があります。
内縁関係として夫婦関係を継続するパターンもあれば、単なる同居人として暮らすことも考えられます。
内縁関係として夫婦関係を継続する場合、内縁関係の間には相続権がないので、内縁となった妻に将来不動産を相続させたい場合には、遺言が必要であることに注意をしましょう。
同居人として暮らす場合には、住宅ローンの費用負担をきっちり考えるべきといえます。
特にどちらか一方のみが住宅ローンの名義人である場合には、相手が将来その家を出て、一人で住宅ローンの支払いをしなければならない状況になり得ることもきちんと想定しておく必要があります。
一方で、住宅ローンや住宅の名義人でない人は、住宅ローンを完済したとしても自分には自宅が資産として残らないことになります。同じ負担を強いられるのであれば、離婚の際に不動産を共有名義にしてもらうなどの注意が必要でしょう。
夫のみが住む場合
夫のみが住み、妻が退去する場合です。
妻が子供を連れて実家に帰るようなケースでは、夫が妻に養育費の支払いをすることがあります。その場合、養育費の支払いと自宅のローンと自分の生活で生活コストが上がり、家計が回らなくなる可能性があります。
住宅ローンがある状態で売却する場合には、任意売却という手段で売却を検討する必要も出てくる可能性があります。
妻が養育費代わりに住む場合
夫が退去して妻が住むケースです。
住宅ローンを組んで住宅を買うきっかけの多くは、結婚した後に子供が出来たことが多いです。離婚をする際に、子供のことを考えて従来の住居に妻と子供が住み続け、夫が自宅を出て行くパターンもよくあります。
離婚をする際には子供の養育費の支払いを夫に求めることになりますが、養育費を支払う代わりに住宅ローンを夫が支払い続けるという約束にすることもよくあります。多くのケースで、妻一人の収入で住宅ローンの支払いをすることは難しいため、住宅に住み続けるためにこのような結論にも合理性はあります。
しかし、夫が再婚するなどして、この約束を守らなくなる、つまり住宅ローンの支払いをしなくなるケースがあります。そうなると当然、競売申立てをされることになり、妻と子供は自宅を追われることになります。
夫が支払えなくなった時点で住宅の任意売却をすることと、養育費の支払いについて改めて協議する(協議が調わなければ訴訟をする)などの必要があることを知っておきましょう。
住宅ローンが残ったまま売却する場合
離婚をした場合には、住宅ローンを完済することが難しくなります。
そのため、早期に売却を検討される方も多いと思うのですが、住宅ローンが残ったまま売却する場合には注意が必要です。
残債務の額と住宅の価額によって対応策が異なる
住宅ローンが残っている状態で不動産を売却する場合には、住宅ローン債権者への返済を考える必要があります。
単純に売却して登記を移転しても、抵当権は残ったままです。
抵当権の残っている住宅は、残った住宅ローン債務の支払いをしなければ、債権者による抵当権の実行により競売が行われ、住宅を買受けた人は所有権を失うことになります。そうなると、住宅を買受けた人から損害賠償請求をされることもあります。
売買後のトラブル回避のため、売買の時点で抵当権を抹消してもらうのが一般的ですので、住宅の売却にあたっては抵当権を持っている住宅ローン債権者に返済することを考える必要があります。
そして、残債務がいくら残っているか、現在の住宅価値がいくらなのかによって、対応が異なります。
オーバーローンの場合には任意売却が必要
住宅ローン残債務の額の方が住宅の価額よりも多い、いわゆるオーバーローンの場合には、住宅を売却しても住宅ローン債権者は債権を全額回収をすることができません。
そして、住宅売却にあたって不当に安い金額で売却されると、債権者の回収に影響することがあります。そこで、債権者の意向を確認しながら売却を行う任意売却が必要になります。
アンダーローンの場合には通常通り売却可能
逆に、住宅ローンの残債務額が住宅の価額よりも少ないアンダーローンの場合には、自由に住宅を売却することができます。
離婚と住宅ローン問題の相談先
離婚をする際に、住宅ローン問題は誰に相談するのが良いのでしょうか。
弁護士
弁護士には、離婚に関する法律問題を相談することができます。
離婚問題に詳しい弁護士は、住宅の売却が必要な場合に備えて、任意売却専門の不動産会社とコネクションがあることが一般的です。相談の結果、住宅の売却が必要な場合には、任意売却専門の会社を紹介してもらうことができます。
行政書士
行政書士は、離婚協議書の作成を業としています。
そのため、離婚に関する合意ができたものについて、きちんとした書面を作成したい場合に相談をすることが可能です。
あくまで書面の作成が業であるため、慰謝料を相手に請求して欲しいなどの代理業務を依頼することはできませんので注意しましょう。
離婚アドバイザーなどの民間資格を保有している人
離婚については、離婚アドバイザーなどの民間資格を保有している人が相談に乗っています。
離婚アドバイザーは、離婚に向けた準備や、離婚後の経済的な自活など、法律問題ではない離婚の問題にも取り組んでいます。弁護士や行政書士が、離婚アドバイザーとして活動しているケースもあります。
任意売却を得意とする不動産会社
住宅の売却にあたって任意売却が必要な場合には、任意売却を得意とする不動産会社に相談してみましょう。
任意売却は、債権者との話し合いを必要とするので、任意売却を得意としていたり、専門としている会社が存在します。
住宅ローンが残っている物件の売却については、任意売却を得意とする会社に相談するのがお勧めです。
まとめ
今回のコラムでは、離婚した場合の住宅ローンや住宅を巡る問題についてお伝えしました。
離婚によって住宅の利用方法や、住宅ローンの支払いに関する環境は大きく変わります。専門家に相談をしながらトラブルにならないよう適切に対応するよう心掛けましょう。