国民年金を滞納するとどうなる?差押えまでの流れと対処法を解説

経済的な事情や借金などといった理由で、国民年金保険料を納付できないという方もいらっしゃると思います。

しかし、国民年金に加入している対象者は、保険料を納付すべき義務を負っているため、保険料を滞納してしまうと、最悪の場合、財産を差押えられてしまう可能性があるのです。
このような事態を招かないためには、差押えまでの流れを押さえておくことも必要です。

今回のコラムでは、国民年金保険料の滞納によって財産が差押えられるまでの流れを中心に分かりやすく解説します。

目次

国民年金を滞納するとどうなる?

国民年金に加入している対象者は、保険料を納付すべき義務を負っています。

そのため、国民年金保険料を滞納した場合、本人は一定の不利益を受ける可能性があります。
では、どのような不利益が考えられるのでしょうか。

年金の受給額に影響する

将来、国民年金を受給するためには、保険料納付済期間と保険料免除期間等を足した期間が10年以上であることが必要です。
もっとも、この間に年金の未納期間があると、その分だけ年金の受給額は減ってしまいます。未納額が高額になればなるほど、年金の受給額に大きく影響するため、注意が必要です。

障害年金の受給に影響する

「障害年金」とは、一定の障害を負った場合に受け取ることのできる年金のことをいいます。
国民年金の納付を滞納していると、障害年金を受給できない可能性があるのです。具体的には、以下のいずれかに当てはまる場合、障害年金を受け取ることはできません。

  • 初診日の前々月までの年金加入期間のうち、3分の1を超える未納期間がある場合
  • 初診日の前々月までの直近1年間に未納期間がある場合

財産を差押えられる可能性がある

国民年金への加入は、国民の義務です。
そのため、長期にわたり国民年金の納付を滞納すると、国から財産を差押えられる可能性があります。
一度財産を差押えられてしまうと、基本的には未納分を一括で支払わない限り、差押えが解除されることはありません。

国民年金の納付が困難な場合の対処法

何らかの事情で、国民年金の納付が困難になった場合、取り返しがつかなくなる前に免除や納付猶予といった制度の利用を検討することが大切です。

保険料免除制度

収入が極端に少なかったり、失業して収入が無くなってしまったような場合は、国民年金を納付することは困難です。
このような場合、本人と世帯主、配偶者の前年の所得が一定額以下であれば、保険料免除制度を利用することができます。

免除される具体的な額は、前年所得に応じて、「全額」「4分の3」「半額」「4分の1」の4種類に分かれています。

免除制度を利用すると、その期間が受給資格期間に算入され、将来受け取ることのできる年金額に反映されるため、本人にとっては、大きなメリットであるといえます。

保険料納付猶予制度

保険料納付猶予制度は、20歳から50歳未満の人が利用できる制度です。

本人と配偶者の前年所得が一定額以下であれば、一定期間保険料の納付が猶予されることになります。
猶予制度についても免除制度と同様、その期間が受給資格期間に算入されるというメリットがありますが、免除制度のように、その期間が年金額に反映されることはありません。

国民年金の滞納により財産を差押えられるまでの流れ

長期に渡り国民年金を納付しないでいると、財産を差押えられる可能性は高くなります。
財産を差押えられる場合、一般的には、以下のような流れで手続きが進められます。

催告状

国民年金を納期限までに納付しないと、年金事務所から電話や書面により支払いの催促がなされます。(これを「納付督励」といいます)
この段階で、滞納している国民年金を納付することができれば、特に問題は発生しません。
しかし、納付督励を無視するなどして、国民年金を納付しないでいると、特別催告状が送られてきます。

特別催告状についても、書かれている内容は納付督励と同じですが、特別催告状の場合、送られてくるのは一度ではありません。青色黄色、そして赤色という順で、封筒の色を変えて送られてくることになっています。

特別催告状が届いているにもかかわらず、国民年金を納付しないでいると、最終催告状が送られてきます。

督促状

最終催告状が送られてきてもなお、国民年金を納付しないでいると、督促状が送られてきます。
督促状には、指定する期限内に納付しなければ延滞金が課せられる旨も記載されています。

この段階に至ると、財産を差押えられるのも時間の問題です。
年金事務所は、滞納者の財産を調査するなどして、差押えの準備に着手します。

差押予告通知

督促状をも放置してしまうと、差押えを予告する旨の通知(「差押予告通知書」といいます)が送られてきます。

差押予告通知書には、最終通告の意味合いがあるため、最後の納期限が記載されており、また併せて期限内に納付されない場合は財産を差押える旨の予告も記載されています。

差押え

差押予告通知書に記載されている納期限までに滞納している国民年金を納付しないと、実際に財産を差押えられることになります。
差押えの対象となる財産は複数ありますが、その中でも特に差押えられるケースが多いのが、給料と預貯金です。
一度財産を差押えられてしまうと、基本的には、滞納している国民年金を全額納付しない限り、差押えは解除されません。

また、国民年金の滞納による差押えの場合、注意しなければならないことがあります。
通常、差押えの対象となるのは、支払いを滞納している本人の財産に限られていますが、国民年金の場合は、本人だけでなく、世帯主や配偶者も連帯して国民年金を納付すべき義務を負っています。
そのため、場合によっては、世帯主や配偶者名義の財産が差押えられてしまうことがあるのです。

国民年金を滞納する前に早めの対策を

これまで見てきたように、国民年金の納付を一定期間滞納すると、財産を差押えられる可能性があります。

この場合、給料や預貯金、そして、自宅などの不動産はすべて差押えの対象となります。
このような事態にならないよう、国民年金の納付が困難な場合は、早期に対策を講じる必要があります。

具体的には、免除制度や納付猶予制度を利用することが考えられますが、長い目で見たときに、それ以降も国民年金を支払っていくことができるかという観点から検討することも大切です。

自宅などの不動産を所有している場合には、任意売却をすることも選択肢のひとつとなります。ここでいう「任意売却」とは、競売ではなく自身で売却することをいいます。

自宅の所有権を失うという意味では競売と変わりませんが、任意売却は競売よりも高額で売却できる可能性が高いです。
そのため、売却代金から退去時の引越し費用を確保したり、滞納している国民年金を納付したりすることができます。

また、任意売却後、住宅ローンが残る場合には、金融機関との協議により残りの住宅ローンについて返済計画を見直すこともできます。さらに、何としても自宅に住み続けたいという意向がある場合には、リースバックのように、自宅に住み続けることを可能にする方法もあります。

国民年金の支払いでお困りの方は、不利益を最小限に抑えるためにも、早期に対策を講じることが大切です。

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