任意売却しても住宅ローン債務は残ってしまう。それでも任意売却はするべき?
現在、生活に直接影響するような様々な問題が起きています。経済的にも不安定な状況が続いていることに悩まれている方も多いのではないでしょうか。
当社でも、任意売却に関するご相談が増えております。そのご相談の中で「任意売却後も住宅ローンが残ってしまった場合はどうなるのか?」というご質問を多くいただきます。
そこで今回は、任意売却をした後に残ってしまった住宅ローン債務について説明いたします。
株式会社いちとり
代表取締役/代表相談員
林 達治
東証一部上場不動産会社、外資系金融機関、任意売却専門会社を経て、日本全国の不動産を対象とした任意売却を専門に扱う「株式会社いちとり」を設立。
勇気を出して相談してくださったご相談者様に最後まで寄り添ってサポートすることを信条に、現在も会社代表を務めながら代表相談員として、住宅ローンの悩みを抱える方々の問題解決のために精力的に活動している。
長年培ってきた任意売却に関する豊富な知識と経験を活かして、個人・法人問わず、年間500件以上の相談を受けており信頼も篤い。
任意売却後の住宅ローン債務について
まず、任意売却を行った後の住宅ローン債務について、知っておいていただきたいことがあります。
それは、
① 任意売却後に残った住宅ローンの債務は帳消しにならない
② 債権者(金融機関など)によって債務処理の仕方が異なる
ということです。
しかし、だからといって過剰に不安になることはありません。
それでは、任意売却をすることによって、住宅ローン債務がどのようになっていくのか順を追って確認していきましょう。
住宅ローンを滞納すると債権者から通知が届く
住宅ローンを滞納すると、債権者(お金を貸した金融機関など)から支払いを催促する連絡がきます。最初は電話やメール、手紙などによるものですが、支払いの確認が取れない状況が続くと、徐々に督促状や催告書といった強めの勧告になってきます。
それでも支払いがなされず滞納が続いていくと、次に「期限の利益喪失(※1)」に関する通知が債権者から届きます。この通知が届き、実際に期限の利益が喪失すると、債務者は住宅ローンを月々の分割払いで返済することができなくなります。つまり、届いた通知に記載されている期限までに、残っている住宅ローン残金を現金で一括返済しなければなりません。
さて、債権者より請求された住宅ローン残金の一括返済ができなかった場合、次に債権者から送られてくるのが「代位弁済」に関する通知です。
代位弁済に関する通知には、債務者に代わって保証会社(※2)が債権者(金融機関など)へ一括弁済を行う、または行った旨の内容が記載されており、保証会社によって代位弁済が行われると、それ以後は保証会社が債権者となります。
代位弁済によって債権者が変わる
代位弁済が実行されると、以降は代位弁済を行った保証会社や債権回収の委託を受けた債権回収会社(サービサー)に毎月返済をしていくことになります。
つまり、返済窓口が今までの「(住宅ローンを借りた)金融機関」から「(代位弁済をした)保証会社」もしくは「(債権回収の委託を受けた)サービサー」に切り替わります。
といっても、返済を滞納したことが原因で代位弁済に至るわけですので、債務者としては引き続き住宅ローンの支払いを続けていくのは難しいのが現実でしょう。そこで、債権者(保証会社やサービサーなど)は、抵当権を実行することで債務者が住宅ローンを借りる際に担保とした住宅を競売にかけて債権を回収する手続きに進みます。
しかし競売では、売却(落札)価格より残っている債務総額の方が多い(売却価格<残債務総額)ケースが一般的です。その場合は担保不動産を競売にかけても債務を全額回収することができません。そこで、競売よりも高く売却できる「任意売却」という特別な売却方法を用いて担保不動産を売却することで、少しでも多く債権の回収を行うべく任意売却を勧める債権者もいます。
任意売却での売却方法
任意売却による不動産の売却は、通常の不動産売却とは少し異なる手順で行われます。
任意売却では、不動産売却に関する決定権は売主(住宅所有者)ではなく、全て債権者にあります。したがって、任意売却手続きは、まず債権者に任意売却の応諾をもらうための話し合いから始まります。また、状況によっては債権者が一人ではないというケースもありますので、債権者が複数いる場合には、その全ての債権者の応諾が必要になります。
さらに、売却価格についても債権者が決定権を持ちます。
全ての債権者から任意売却の応諾をもらい、売却価格が決定すれば、その後の販売活動については、通常の不動産売却とさほど違いはありません。買主を見つけて売買契約を締結し、決済(売買代金の清算、登記関係の手続き)をもって任意売却は終了します。
任意売却した後に債務が残ってしまったら
住宅を売却しても尚、残ってしまった債務(借金)を債務者がすぐに返済できるはずはありません。それは債権者もよく理解しています。
しかし、最初にお伝えした通り、任意売却後に残った住宅ローンの債務は帳消しになることはありませんので、任意売却後も返済は続けていかなければなりません。
ですが、任意売却後に残った債務については、その返済方法について債権者と話し合いを行い、債務者は支払える金額を毎月少しずつ返済していくことで落ち着くケースが一般的です。
今までのように高額な返済を続けていくことはなくなり、生活状況や収入状況に応じて返済額を決めていくことができます。当社での過去の事例を見る限り、返済額は毎月1万円ずつ、2万円ずつといった金額が多いですが、状況によってはさらに少ない金額の相談ができる場合もあります。
残った債務の返済義務は無くならないので、月々1~2万円からでも、無理のない範囲で返済していくようになります。
それでも支払っていくことができない場合は
生活状況によっては、月々1~2万円の支払いも難しい、続けていけないといった場合もあるでしょう。
そのような場合は、思い切って支払いをストップします。もちろん、支払いができるのにも関わらず、払いたくないから払わないというのはいけません。
ただ、お金を返すことに囚われすぎて、ご自身の体調や生活を犠牲にしてでも払い続けなければならないという考えは無くしてください。なぜなら債権者としても、返済のために自宅を手放した債務者に対して、そこまで追い詰めるような対応をしようとは考えていないからです。また、追い詰めてよいものでもありません。
支払いのストップは、あくまでも最終手段としての方法ですが、どうしても返済を続けていくことができない場合には、勇気をもって支払いをストップする決断も重要です。
但し、いきなり返済をストップしたり、債権者との連絡を絶つようなことをしてはいけません。
支払えないのであれば、まずはその旨を債権者にきちんと伝えて、誠意をもって対応していくことが最終的な和解へと繋がります。
最終的に残ってしまった債務は
任意売却後に残った債務(借金)は、担保となる不動産が無くなるため、「無担保債権」という扱いになります。
また、返済についても月々1万円や2万円では、完済するまでに相当な年数がかかります。とても現実的な数字ではありません。
このような無担保債権で、且つ、回収が見込めない債権のことを「不良債権」といいます。
一般的に債権者(金融機関や保証会社など)はタイミングをみて、このような不良債権を債権回収会社(サービサー)に売却(債権譲渡)します。その売却価格は、債権額の2~5%前後と言われています。1,000万円の不良債権であれば、サービサーへの売却価格は30~40万円前後となる計算です。
全てのケースに当てはまる訳ではありませんが、回収見込みのない不良債権はとても安価でサービサーへ譲渡されていくようです。
不良債権の終着点
さて、不良債権を買受けたサービサーとしても、少しでも多く回収したいと考えているはずです。
しかし一方では、いつ完済となるか分からない不良債権の回収に、多くの時間と労力をかけてはいられないという事情も出てきます。
そのため、債務者が支払いをストップすると、その人の生活状況や収入状況などを考慮した上で、改めて話し合いがもたれるようになります。その話し合いによって、現実的に返済可能な金額で和解(債務者が一括返済できる金額で折り合いをつけるなど)するほうが良いと判断する場合もあります。
その際の和解金額は、債務者それぞれの状況により異なりますが、いずれにしても少額で最終的な和解・解決に落ち着くことになるケースが多いです。
まとめ
ここまで、任意売却後に残った住宅ローン債務の流れについて説明してまいりました。
では最後に、実際に住宅ローンが払えなくなったとき、私たちは何をするべきかということについてお伝えしたいと思います。
それは、
支払いの負担を軽減するための方法と、生活を安定させるための対策を検討すること
です。
負担となっている債務を減らすために、任意売却は有効な手段となります。
任意売却しても住宅ローン債務が残ってしまうという状況の方も、まずは一度、任意売却を検討してみてください。任意売却には、様々な解決方法があります。ご自身の希望に沿って問題を解決することができるかもしれません。その際は、任意売却を専門に扱う不動産会社に相談されることをお勧めします。
株式会社いちとりは、任意売却を専門に扱う不動産会社です。
任意売却に関する知識や経験も豊富で、実績も多数ございます。住宅ローンに関するご不安、お悩み、ご質問などがある場合には、どのようなことでもご相談ください。