住宅ローンの名義変更はできない?離婚など状況別の対応方法を説明

何らかの理由で、住宅ローンの名義を変更したいと思っている方は、たくさんいらっしゃると思います。
名義を変えた人がきちんと住宅ローンを支払えるならそれでいいのでは?と思われている方もいるでしょう。

【結論】住宅ローンの名義変更は原則できません

今回のコラムでは、なぜ住宅ローンの名義変更が原則できないのか、名義変更ができない場合の対応方法として挙げられる債務整理や任意売却などの手段についてお伝えします。

目次

住宅ローンの契約内容

住宅ローンの名義変更に関する説明の前提として、住宅ローンの契約内容について知っておきましょう。

まず、住宅ローンは、住宅を購入するお金を借りる金銭消費貸借契約です。

消費者金融からお金を借りることも同じく金銭消費貸借契約ですが、住宅ローンの場合には住宅を購入するためのお金を20年以上に渡って返済するものです。

従って、住宅ローンの申込者がどのような職業に就いていて、どのくらいの収入があり、頭金をどれくらい用意できているのかなど、返済に関する情報を細かく審査して貸付を行います。

住宅ローンの名義変更について

前述の通り、住宅ローンの名義変更は原則できません。
住宅ローンは名義が誰であっても良いわけではなく、きちんと支払うことができる人が名義人であることが必須です。一度契約をした後に簡単に別の人に変わられると、審査をする意味が無くなってしまうからです。

しかし、名義変更は絶対にできない訳ではありません。例外的に名義変更が認められるケースもあります。
次に、その例外となるケース、そして名義変更によって起こりうる問題についてもお伝えします。

例外的に住宅ローンの名義変更が認められるケース

住宅ローンはきちんと支払える人が支払う必要があります。
従って、きちんと支払える人が債務を引き受け、債権者が納得できるものであれば、名義変更も認められます。
一般的には、従来の債務者がそのまま債務者としての状態を継続しつつ、新たな債務者を追加してその人が返済をしていくような場合です。(このような契約変更方法を重畳的債務引受と呼んでいます)

住宅ローンの名義変更によって起こりうる問題

住宅ローンの名義を変えたいと考えるのは、「住宅に住み続けたい」という気持ちによるところも大きいです。
そのため、住宅の名義(=登記名義)を変更しておけばよいのではないか?と考えることもできます。

しかし、住宅ローンについては支払いがされなかった場合に対象となる住宅を競売し、その売却代金をもって支払われない債務に充当する担保権(抵当権)がつけられています。

そのため、仮に住宅を他人名義に変えたとしても、住宅ローンの返済が滞れば、抵当権によってその人は所有権を失うことになりますので注意が必要です。

住宅ローンの名義変更以外の対応方法

住宅ローンの名義変更以外に、どのような対応方法があるのかを見てみましょう。

親子で住宅ローンを継ぎたい場合

住宅ローンの名義変更をしたい理由が、親子で同居しており、子が住宅ローンを継ぎたいと考えている場合があります。
このような場合には、親よりも子の収入の方が多ければ名義変更が認められる可能性があります。しかし、そうでなければ住宅ローンの借り換えを検討してみたほうがよいでしょう。

本人が住宅ローンの支払いができなくなった場合

次に、住宅ローンの名義人である本人が、他にも借金を負うなどして住宅ローンの返済ができなくなる場合を見てみましょう。
本人にどのような希望があるかにもよりますが、住宅ローンの名義を変更しようとするくらいであれば、住宅にそのまま住み続けたいという希望があるはずです。そのため、「債務整理」や「任意売却」を検討することになると思いますが、いくつか注意が必要です。

「自己破産」をすると自宅を失う可能性がある

借金の返済ができなくなっているときに、真っ先に「自己破産」を思い浮かべる方も多いと思います。

しかし、自己破産では、住宅ローン債権者も自己破産手続きに加わってもらう必要があります。自己破産手続きを行う場合でも、住宅ローン債権者は抵当権を実行して住宅を競売することは可能ですので自宅を失う可能性もあります。

自宅をどうしても守りたい場合には、自己破産以外の方法を検討したほうがよいでしょう。

自宅を守りながら債務整理をしたい場合には「任意整理」

自宅を守りながら債務整理を行いたいのであれば、「任意整理」という方法があります。

任意整理は、債権者と直接話し合いを行って借金返済に関する諸条件を軽くしてもらう債務整理方法で、現在の金融実務によれば、残債務の元金を36回(3年程度)の分割返済にしてもらうことになります。

但し、住宅ローン債権者に住宅ローンの減免を申請すると抵当権が実行されてしまう可能性があるため、住宅ローン債権者以外の債権者と話し合いを行って返済を楽にしてもらいます。任意整理によって住宅ローンの返済に充てることができる金額が増えるので、住宅ローン債権者への毎月の返済もしやすくなることになります。

任意整理という債務整理の方法は、奨学金に代表されるような連帯保証人がいる債務も除外することができますので、一番自由に債務整理ができるものです。一方で、減額されるのが将来利息や遅延損害金のみに留まり、元金の減額を受けることができないので、元金の分割返済ができる状況であることが必要となります。

任意整理で返済ができない場合には「個人再生」

任意整理を利用して返済ができない場合には自己破産を利用するのが一般的ですが、それでは住宅に住み続けることができません。そこで、「個人再生」によって住宅を維持することを検討しましょう。

個人再生は、借金を減額してもらったものを分割して返済していく手続きです。
個人再生では、特別に住宅ローンは今まで通り返済することを認めて、住宅ローン債権者が抵当権を実行しなくて済むような手続きが用意されています。

個人再生を利用すれば、住宅ローンを今まで通り返済しながら、他の債務を大幅に減額した上で返済を続けることが可能となります。但し、住宅ローンの延滞が6ヶ月以上あると、個人再生手続きを利用することができません。(手続きの準備にかかる期間なども考慮すると少なくとも滞納3ヶ月くらいから難しくなります)
場合によっては、住宅に住み続けることができないこともあるので、専門家に早めに相談をしましょう。

住宅ローンの返済を今まで通りすることが前提の手続きになるので、収入が下がって住宅ローンの支払い自体が難しくなっている場合などは利用できないこともあります。

債務整理での解決が難しい場合には「任意売却」

債務整理をしても住宅に住み続けることが難しい場合には、任意売却を検討しましょう。

任意売却とは、競売で所有権を失ってしまう住宅について、自分で売却先を見つける不動産売却方法をいいます。
任意売却を利用すれば、競売で売却されるよりも高い価格で売却することが可能となるため、債権者から引っ越し代などを受け取ることもでき、自宅を退去しなければならない場合でも、スムーズに新生活を送ることができるようになります。

状況によっては、住宅を投資家や親族に買い取ってもらい、その人から賃貸物件として借りて住み続けるリースバックという方法によって住み続けることもできます。

任意売却は、通常の不動産売却とは違い、債権者の意向を確認しながら売却活動を行う必要があります。極めて専門的な分野になりますので、任意売却専門の会社に相談をしましょう。

離婚に伴う住宅ローンの名義変更

住宅ローンを組んで自宅を購入していた夫婦が離婚をした場合にも、住宅ローンの名義変更を検討する場合があります。

離婚によって実際に住む人に名義を移したい場合

例えば、住宅ローンを夫名義で組んだ場合において、離婚によって妻が子と一緒にそのまま自宅に残り、夫が自宅から退去するるようなケースです。養育費代わりに住宅ローンの支払いを夫に任せたままでいると、後に夫が住宅ローンの支払いをしなくなるといった場合があります。

住宅ローンの返済が滞ると、当然のことながら住宅ローン債権者は競売をします。そうなると妻と子は自宅を退去せざるを得なくなりますので、このような場合を考え、離婚時に実際に住む妻名義の住宅ローンに変更したいと考えます。

しかし、妻に十分な支払い能力がない場合には、名義変更が認められない可能性が高いです。今まで通りに夫が債務者のままで、新たに妻も債務者となる手続きを検討しましょう。妻が借入れできるような職業に就いているのであれば、名義変更をしてもよいですし、借り換えによって名義を変えることも可能です。

住宅ローンが払えず住宅を売却したい場合

住宅ローンは通常、世帯年収で検討して借入れをします。
離婚をして別々に住むとなると、住居にかかる費用など生活にかかるコストが増える可能性が高いです。その結果、住宅ローンの支払いをすることができなくなる可能性があります。

そこで、住宅を売却するのが手となるのですが、この場合にも、住宅ローンが払えない物件の売却となりますので、任意売却を検討する必要があるでしょう。

まとめ

今回のコラムでは、住宅ローンの名義変更が原則できないこと、住宅ローンの名義変更ができない場合に他にはどのような対応方法があるのかということについてお伝えしました。

本人の信用力が問われる住宅ローンの名義変更は安易にできません。できるだけ早く専門家に相談して、変わりになる対応策も含めて検討してみましょう。

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