競売後の建物明渡しに関する強制執行とは
今回は、「競売後の建物明け渡しに関する強制執行」について話をいたします。
競売において不動産を落札しても旧所有者が居住を続けていると、落札者はその不動産を使用することも、収益を得ることもできずに困ります。このような状況になったとき、落札者は建物を明け渡してもらうために法的手続きを取ることができます。
では、落札者はどのような手続きをとることができるのでしょうか。
不法占拠者への対抗手段
住宅ローンや税金等の滞納を続けていると、いずれ債権者(金融機関や保証会社、役所や税務署等)から競売の申立が行われ手続きがスタートします。
そして競売が行われ、落札者が代金を納めた時点で不動産の所有権は落札者に移り、旧所有者が居住を続けていた場合には、この時点で、「不法占拠」となります。強制的に住居から追い出されても、本来なら文句をいえません。
ただ、実際のところ、明け渡しに関しては落札者から期日の指定があり、その期日までに退去すればよいというのが一般的です。
しかし、旧所有者が落札者の依頼に応じない場合も多々あります。このような場合に、落札者は「建物明け渡しの強制執行」という法的手続きをもって不法占拠者に対抗します。
建物明け渡しの強制執行までの流れ
競売における建物明け渡しの強制執行とは、落札した競売物件において不法に占拠を続ける者を国家権力によって強制的に退去させることをいいます。
この建物明け渡しの強制執行は、所有権を取得したらすぐに実行できるというものではなく、次の手順を踏む必要があります。
① 落札者による「引渡命令」の申立
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② 裁判所による「引渡命令」の決定
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③ 「引渡命令」に対する不服申立の受付
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④ 不服申立の受付期間中に不服申立が無ければ、「引渡命令」の確定
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⑤ 落札者(申立人)が予納金を納付
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⑥ 「建物明け渡しの強制執行」の申立
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⑦ 「建物明け渡しの強制執行」の実行
④から⑥までの期間は、概ね10日~2週間前後です。
建物明け渡しの強制執行を申立したら、断行日といって強制執行を実行する日に向けて執行官と打合せを行い、明け渡しの催告を通じて強制執行断行日における作業内容を見積もることとなります。
このとき、居住者に対して明け渡しの要請とともに断行日の告知を行います。断行日になっても居住者が住み続けている場合には、執行官が強制的に退去させることになり、家の中の荷物も強制的に運び出されることになります。
建物明け渡しの強制執行の申立から断交日まで概ね1ヶ月半を要します。
強制執行におけるトラブル
強制執行が行われると大勢の人員で荷物が運び出されるなどして、近所でも大変目立つことになります。
また、強制執行に対して妨害行為を働くと公務執行妨害などで逮捕される可能性もあります。できることなら強制執行は回避したいと思われることでしょうが、行く当ての無い方はやむにやまれず居住を続けているケースもあります。
もし、任意売却という方法を知っていたら、選んでいたら、このような事態は避けられたかもしれません。任意売却であれば、引越し費用も捻出できる可能性があります。
住宅ローン滞納などにより家を手放すという選択をされる場合には、是非、任意売却をご検討ください。