住宅ローンが払えないとどうなる?滞納からの流れを知って正しい対策をとろう!

住宅ローンが払えなくて悩む人

 

住宅ローンが払えないという問題を抱える方からのご相談は、年々増加傾向にあるように感じます。
それは、新型コロナウイルスの感染拡大に伴ってさらに顕著に現れてきており、体調不良や収入減などによる生活状況の変化が影響しているケースが多いです。

しかし、住宅ローンの支払いは、たとえ収入が減ったとしても待ってはもらえません。支払いができず滞納が続いてしまうと、いずれ住宅は強制的に競売にかけられ、それこそ生活環境がガラッと変わってしまうことにもなり兼ねません。

そこで今回は、住宅ローンが払えない状況で困っている方に向けて、住宅ローンが返済できないとどうなるのか、また、そうなってしまったときの対処法などについてお伝えしていきたいと思います。

【執筆】

株式会社いちとり
代表取締役/代表相談員

林 達治

東証一部上場不動産会社、外資系金融機関、任意売却専門会社を経て、日本全国の不動産を対象とした任意売却を専門に扱う「株式会社いちとり」を設立。

勇気を出して相談してくださったご相談者様に最後まで寄り添ってサポートすることを信条に、現在も会社代表を務めながら代表相談員として、住宅ローンの悩みを抱える方々の問題解決のために精力的に活動している。

長年培ってきた任意売却に関する豊富な知識と経験を活かして、個人・法人問わず、年間500件以上の相談を受けており信頼も篤い。

 

 

目次

住宅ローンが払えなくなったらどうなるのか

住宅ローンが払えなくなったらどうなるのか

 

住宅ローンが払えなくなり滞納が続くと、最終的に住宅は競売にかけられてしまいます。
そこでまず、住宅ローン滞納から競売に至るまでの流れを確認していきましょう。

債権者からの連絡・通知(滞納12ヶ月目)

住宅ローンの支払いができず滞納してしまった場合、まず、債権者より電話やメール、手紙などで確認の連絡が入ります。ここでいう債権者とは、住宅ローンの契約をした金融機関です。
また、確認内容は、口座から引き落としができなかった旨、いつまでにどのように返済して欲しいといったものになります。

滞納が2ヶ月続くと「督促状」や「催告書」といった通知書が債権者から郵送されてくるようになります。督促状や催告書には、支払いを催促する内容と共に契約日や滞納金額の他、延滞利息なども記載されています。返済ができない状況にある場合には、まず債権者に連絡をして状況を説明し、今後の返済についてすぐに相談されるのが良いでしょう。

期限の利益喪失(滞納36ヶ月目)

滞納が36ヶ月ほど続くと、今度は住宅ローンを分割返済できる権利(期限の利益)が失われます。これを、期限の利益喪失といいます。

期限の利益喪失となると、住宅ローンは分割で返済できなくなるため、債権者から住宅ローンの残金を一括で返済するよう請求されます。その後、債権者は、いかなる理由があっても一括返済以外認めなくなります。

代位弁済

期限の利益喪失となり、住宅ローン残金の一括返済ができなかった場合、次に行われるのが代位弁済です。

代位弁済とは、一括返済できなかった債務者に代わって、保証会社が金融機関に住宅ローン残金を一括で弁済することをいいます。
但し、ここで注意が必要なのが、代位弁済とは保証会社が債務の返済を「肩代わり」するのではなく、一時的に「立て替える」に過ぎないということです。

代位弁済は、期限の利益喪失後に実行される手続きになりますが、この代位弁済が行われると、住宅ローンを組んだ金融機関から弁済を代位した保証会社に債権が移行します。つまり、代位弁済後は債権者が保証会社になるということです。

競売開始決定

代位弁済が完了すると、保証会社は裁判所へ競売を申立てるための手続きに入ります。

保証会社の競売申立てが裁判所によって受理され、競売手続きの開始が決定(競売開始決定)すると、その旨が債務者へ通知されます。この通知を「競売開始決定通知」といいます。競売開始決定がなされると、本格的に競売に向けて物事が動き始めます。

裁判所執行官による現況調査

競売開始決定通知が債務者の元に届き、暫くすると概ね、競売開始決定から1ヶ月前後裁判所の執行官による対象不動産の現況調査が行われます。

現況調査では、裁判所の命を受けた執行官が競売申立てをされた住宅にやってきて、室内状況を調べたり、写真を撮ったり、関係者に聞き取りを行ったりします。その際、不動産鑑定士を同行させて対象不動産の査定も同時に行います。この不動産査定は、競売での売却基準価額(最低落札価格)を算出するために実施されます。

また、調査日に関しては、事前に裁判所から債務者本人宛に通知が送られてきます。通知に記載されている方法以外では、原則的に本人の希望や日程変更などは受け付けてもらえませんので、通知書は必ず確認するようにしましょう。

現況調査は裁判所命令のため、当日不在や居留守を使っても鍵を開錠して室内に立ち入ります。そのため、鍵屋さんを同行させるケースもあります。現況調査では、不在や居留守を使うことに意味はなく、逆にきちんと対応しておいたほうが良いでしょう。

配当要求終期等の公告

競売開始の決定がなされると、裁判所は「配当要求終期等の公告」を行います。
配当要求終期等の公告とは、競売を申立てた申立債権者以外に債権を持つ者(貸したお金を回収する権利を有する者)に対して、その債権や配当(売却代金から配分を受ける)の要求を申し出る期限を通達するものです。

「配当要求終期等の公告」は、裁判所内に掲示され、いつでも、誰でも、閲覧(コピーも可)することが可能です。そのため、配当要求終期等の公告が掲示されると、それを見て自宅に直接訪問してくるような悪質な業者などが出てきますので注意が必要です。

期間入札の通知

競売の準備が整った段階で(執行官による現況調査から約2~3ヶ月後)裁判所から「期間入札の通知」が債務者宛に届きます。通知には、入札期間や開札日、売却基準価額(最低落札価格)など、入札に関する情報が記載されています。

競売の公示

入札開始の1ヶ月ほど前(各地方裁判所によって異なる)になると、新聞やインターネットなどにも競売情報が公開されます。裁判所がまとめたご自宅の情報(写真・間取り・物件の状況など)を誰もが閲覧できるようになりますので、競売になることが広く世間に知られることとなります。

期間入札、開札

1週間ほどの期間を設けて入札が行われます。
期間入札の終了後、開札が行われて買受人(落札者)が決まり、裁判所によって買受人に対する審査が行われます。

売却許可決定

買受人に対する審査でOKが出ると、裁判所から買受人に売却許可が出されます。それを受けて買受人が残代金の全額を納付した時点で、所有権が買受人に移転します。そうなると、元の所有者は早々に立ち退きをしなければならなくなります。

 

住宅ローンが払えず滞納が続くと、このような流れでご自宅は競売に向けて手続きが進んでいきます。それでは次に、住宅ローンが払えない状況になってしまったときの対処法を確認していきましょう。

住宅ローンが払えなくなったときの対処法

住宅ローンが払えなくなったときの対処法

 

住宅ローンが払えなくなったときに一番避けなければならないことは、滞納したまま何もせずに住宅を「競売」にさせてしまうことです。競売になると、債務者(所有者)には債務しか残らなくなってしまうからです。

競売での落札価格は、住宅を売却する際の市場相場より6~7割程度ダウンした金額が一般的です。それはつまり、「売却価格が安い(安く落札される)=住宅ローン債務が多く残る」ということです。
また、競売で落札されると、当然ですが住宅は失います。そして、住宅ローンの債務はどうなるのかというと、残ってしまった分は引き続き返済が必要になります。債務者には、借金しか残らないという状況です。そこで、住宅ローンが払えなくなったときには、できるだけ早い段階で損失や負担を軽減するための対策を検討する必要が出てきます。

それでは続いて、住宅ローンが払えなくなったときの対処法についてお伝えしていきます。

任意売却をする

通常、住宅の売却価格が住宅ローンの残金に満たない場合には、一般の不動産市場で売却をすることができません。なぜなら、売却代金で残っている住宅ローンを全額返済することができないからです。その場合に検討していただきたい方法が任意売却です。

任意売却は、住宅の売却代金でローンを完済できない場合でも、債権者の合意が得られれば住宅を売却することができるという不動産取引の手段です。そして、任意売却では通常の不動産売買と同じく一般市場で取引することができますので、市場相場に沿った価格で住宅を売却することが可能になります。

そのような任意売却では、次の3つの解決方法があります。

高く売却して債務を減らす(または完済する)

競売での落札価格より高い金額で売却ができれば、住宅ローンの債務を圧縮することができます。さらに任意売却では、残った債務の返済方法についても、債権者との話し合いによって決めることが可能になります。今まで通りの返済では厳しい場合には、「月々1万円」や「月々5千円」といった日常生活に支障の出ない範囲で返済していくこともできるようになりますので、今までよりも生活が楽になるケースが多いです。

引越し費用を確保する

任意売却では、債権者との話し合い次第によって、売却代金の中から引越しをするための費用を確保することも可能です。また、確保できた金額が実際にかかる引越し費用に対して不足するような場合には、買主様との話し合いによりご厚意として準備していただけるケースもあります。
しかし、競売になってしまうと、引越し費用を裁判所や落札者に請求することはできず、その費用は全て自分で準備しなければなりません。精神的負担も多くなります。

そのまま住み続ける(リースバック)

さらに任意売却では、リースバックを利用して自宅にそのまま住み続けるという解決方法もあります。

リースバックとは、信頼できる第三者へ自宅を売却した後、購入者と賃貸借契約を締結し、家賃を支払って住み続けるという方法です。
リースバックには「子供に購入してもらう」「知人・親戚に購入してもらう」「投資家・投資会社に購入してもらう」といった3パターンの方法があり、債務者のその時の状況に応じて最善の方法を選択していきます。

但し、リースバックを行うには条件などがあります。
条件が状況に合わない場合にはリースバックの利用はできませんし、任意売却を行えば必ず住み続けることができるというわけでもありませんので、任意売却の相談を行うときに確認してみてください。

債務整理をする

住宅ローンが払えず返済が滞ってしまったときの対処法には、任意売却の他に「債務整理」という方法もあります。債務整理とは、その名の通り「債務(借金)を整理する」ということです。
債務整理には、「自己破産」「任意整理」「個人再生」といった、いくつかの手続きがありますので、債務者の置かれている状況に合わせて、どの手続きで進めていくか選択します。

それでは、「自己破産」「任意整理」「個人再生」それぞれの内容をみていきましょう。

自己破産

自己破産とは、裁判所に申立てを行い所定の手続きを経て、全ての債務(借金)を免責(免除)してもらう手続きです。
本来支払うべき債務を全て免除してもらうのですから、本当に支払うことができないとなった場合に限られます。

また、借金をゼロにしてもらうという性質上、免除されるに相応しくない行為(免責不許可事由)をした者に対しては、自己破産は認められません。例えば、借金の原因がギャンブルでの浪費であったり、一定の人にだけ返済をしていたり、裁判所に虚偽の説明をすることなども、この免責不許可事由に該当します。

任意整理

任意整理とは、債権者と話し合いを行って債務を無理なく返済していくことができるようにする手続きです。
任意整理は、裁判所を介さず債権者と直接話し合いをしていきますので、生活へのリスクが少ない手続きといえます。

任意整理では、将来にわたる利息が免除され、原則的に元金のみの返済となります。したがって、残っている債務の総額が減り、月々の返済額も軽減させられるのがメリットですが、自己破産のように借金の全額免除とはなりませんので、今後も元本の分割弁済ができるかどうかが選択の鍵となるでしょう。

また任意整理は、特定の債権者に対して行うことができます。自分一人の債務について任意整理の対象として、連帯保証人がついている債務については任意整理を行わないといった方法を取ることも可能です。

個人再生

個人再生とは、裁判所に申立てを行って債務(借金)を5分の1〜10分の1程度に減額してもらい、原則3年(最長5年)で分割返済していく手続きです。
個人再生では、借金の総額に対しての最低弁済額が決まっています。その算出された最低弁済額を、3年~5年かけて返済していくことになります。

 

任意売却と債務整理はどちらが先か

任意売却と債務整理はどちらが先か

 

住宅ローンが払えなくなったときの対処法として、「任意売却」と「債務整理」があることをお伝えしました。それでは、実際に住宅ローンの支払いが厳しくなった場合、どちらの対処法から検討すべきでしょうか。

まず、相談する相手によっても変わります。
お金に関する問題だからと弁護士に相談すると、「債務整理」を勧められることが多いです。それは、弁護士にとって仕事になるからです。

しかし、住宅ローンの問題は「不動産を購入するために借りるお金」の問題であるため、任意売却を専門に扱う当社の見解としては、先に「任意売却を行い、その後、残った債務についてスッキリ解決したいと思った場合に、改めて「債務整理」の手続きを行うほうが良いと考えます。

債務整理は任意売却の後に行うほうが良い

任意売却を検討される際には、債務整理についても考える方は多いと思います。
任意売却と債務整理を行うタイミングを考えた場合、基本的には先に任意売却を行ってから債務整理の手続きに進むほうがメリットは大きいです。

費用負担が減る

まず、任意売却によって住宅を売却して住宅ローンの返済に充てることで住宅ローンの残金が減ります。債務整理は弁護士に依頼して手続きを進めることになりますので、整理対象の債務が少なければ、その分弁護士に支払う費用も少なくて済み、手続き自体もスムーズに行うことができるようになります。

財産を守ることができる

債務整理の中でも自己破産などの場合は、任意売却の前に手続きをしてしまうと、住宅だけではなく車や貴金属、保険など、あらゆる財産を差押えられ、お金に換価して債権者へ配分されてしまいます。借金が全額免除になることはメリットではありますが、住宅だけでなく全ての財産を失ってしまうとなると、そうとも限りません。

逆に、自己破産の前に任意売却を実行しておけば、住宅こそ失ってしまいますが、その他の財産は守ることができます。残った財産を自分で売却して返済に充てるなど、新生活に向けての選択肢を広げることが可能になります。

 

上記のように、債務整理の手続きは、任意売却を行った後でも遅くはありません。
まずは、任意売却が行える状況のうちに一度、任意売却を専門に扱う不動産会社に相談されることをお勧めいたします。

 

任意売却が行える期間

任意売却が行える期間

 

住宅ローンが払えなくなったときには、「任意売却」が有効な解決方法であることはお分かりいただけたかと思います。しかし、任意売却は、いつでもできるというものではありません。
任意売却ができる期間は限られていますので、すでに競売を申立てられている方、任意売却を検討されている方は、タイムリミットを迎えてしまう前に手続きしてください。

任意売却手続きにおいて、任意売却のタイムリミットは「債権者による」ところが大きいですが、ギリギリのラインとしては『入札日の前日までに決済が完了していること』です。

「決済が完了していること」とは?

つまり、債権者に任意売却を認めてもらい、買主を探し、売買契約を締結し、売主と買主の間で代金の支払いと不動産の引渡しが完了している状態のことです。債務者の状況をみて、スケジュールが間に合わない場合には、任意売却をすることはできないのです。

まとめ

 

住宅ローン滞納からの流れを把握することで、自分が今、どの段階にあるのかが分かると思います。そして、住宅ローンの滞納を続けていると、遅かれ早かれ住宅は差押えられ、債権者によって競売を申立てられてしまいます。

ご自身が望まない方向に状況が進んでしまうことのないように、住宅ローンの支払いにお悩みの場合は、早めに専門家に相談して正しい対策をとりましょう。相談のタイミングが早ければ早いほど、解決に向けての選択肢が広がります。

 

 

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