「破産をする」とはどのような意味なのか
借金返済が厳しくなってくると「破産をすべきか」という思いが頭をよぎる人もいるのではないでしょうか。
では実際、「破産をする」ということについて、その意味をどのくらいご存知ですか?
今回のコラムでは、破産をすることの意味について、破産に関連のある用語なども併せて確認したいと思います。
破産について
それではまず、破産について確認していきましょう。
破産とは何か
破産とは、破産法に基づく手続きのことであり、債務の支払いができなくなった(支払不能となった)ときに、今ある資産を債権者に平等に弁済をしようという手続きです。
債務の支払いができなくなると、債権者は他の債権者に遅れをとらないよう我先にと回収を図る行動に出ます。中には債務者に暴力的に迫る人もいます。
そのような事態になったときに、所有資産を債権者に分配して終わりにしようというのが破産の手続きです。
法人の場合は、法人が消滅して回収できない債権については貸し倒れという処理をします。これが自然人(個人)の場合には、その後も生活をしていかなければならないので、債務を免責するという手続きが後に続きます。
これが破産の基本的な構造です。
倒産と破産の違いとは?
破産に類似した用語として「倒産」という言葉が用いられることもあります。
倒産に正確な定義はありませんが、企業の倒産情報を扱う東京商工リサーチによると「企業が債務の支払不能に陥ったり、経済活動を続けることが困難になった状態」とされています。
(参考)東京商工リサーチHPより
知ってて得するリスクマネジメントの基本|用語辞典|倒産とは
つまり、企業がそのままでは経営が続かなくなったことを指し、破産の申立てをしたような場合や、その他の企業再生方法である民事再生・会社更生をするような場合などを指します。個人が借金を払えなくなった状態とは関係ないと考えていただいて大丈夫です。
自己破産とはどのような意味か
一般的に「破産」という用語よりも「自己破産」という用語のほうが広く世間に知れ渡っています。
破産は、債務者本人が「もう支払えません」と申立てることもできれば、「債務者が支払えない状態になっています」と債権者が申立てることもできます。
自己破産は、債務者本人が破産の申立てをすることを、債権者が申立てる「債権者申立て」と区別する意味で利用される法律用語でした。
しかし、個人の場合には大体が自己破産を利用することから、個人が申立てをする破産のことを自己破産と広く呼ぶようになっています。
破産は人生の終わりを意味しない!よくある俗説を検証
さて、破産が何を意味するか詳しく分かっていなくても、何となく「怖い」というイメージを持っている方は多いのではないでしょうか。
破産 = 人生の終わり
を意味するようなイメージがあるからだと思います。
確かに、破産手続き中には住所の移転や一部の職業への就業が制限される、官報に掲載されるなどのデメリットはあります。しかし、人生が終わるというようなことはありません。
では、よく耳にする俗説についても、併せて検証してみましょう。
選挙権・公民権を停止される
破産をすると、選挙権・公民権も停止されると考えている人は結構います。
選挙権は選挙で投票をする権利で、公民権は選挙で投票をする権利と立候補をする権利を合わせた権利のことを言うとされています。
破産をしても、選挙権や公民権を停止されることはありません。
債務者本人や子供が就職できなくなる
債務者本人や子供が就職できなくなるといった噂を信じている人もいます。
確かに、自己破産手続き中に一部の職業、例えば弁護士や税理士、警備員、保険募集人など資産を預かる可能性のある仕事をしている人には、資格や登録ができなくなる欠格事由というものがあります。
欠格事由を大きく解釈しすぎて、債務者本人や子供など、家族の就職に影響を与えてしまうという誤解をしている方がいます。
まず欠格事由は本人には発生しますが、子供など家族には一切発生しません。また、本人に発生する欠格事由も、破産手続きが終わって復権が得られると消滅します。
また、欠格事由に該当してしまう職業に就業されていても、自己破産をせずに「任意整理」「個人再生」など、別の手続きを使うことで欠格事由になることを回避することも可能です。
年金や生活保護などの公的給付を受けられなくなる
破産をすることで、年金や生活保護などの公的給付を受けられなくなると誤解をされている方もいます。
しかし、このような心配は不要です。むしろ、借金を抱えているほうが給付を受けたものを返済に回してしまう可能性があるという懸念で、生活保護を受けられなくなるような場合があります。
自己破産によって受ける影響は実は少ない
自己破産をする場合には、官報に載ったり、住所の制限(引っ越しや海外旅行などしたい場合は裁判所への申立てが必要)、郵送物の転送など、様々な制限は確かにあります。また、自己破産に限らず債務整理をすると個人信用情報機関(通称ブラックリスト)への登録がなされ、借入れやクレジットカードの利用ができなくなるなどの影響も生じます。
しかし、官報に載るといっても事実上誰も見ていない、ブラックリストでクレジットカードが使えなくてもデビットカードを利用できるなど、不便にはなるものの生活ができなくなるということはありません。
破産は債務整理・任意整理・個人再生・任意売却と何が違うのか
さて、ここまで破産について説明してきました。
次は、債務整理・任意整理・個人再生・任意売却それぞれの意味と、破産との違いを確認しておきましょう。
債務整理の意味と破産との違い
債務整理とは、借金返済に困ったときに、その人に合った手段を使って借金問題を解決しようとするものを意味します。
「自己破産」「任意整理」「個人再生」は、債務整理の中での個別の手段となります。
借金が払えなくなると、債務整理が必要となるのですが、債務整理には自己破産の他に「任意整理」「個人再生」という手段もありますので、債務整理=自己破産ではないということになります。
任意整理の意味と破産との違い
任意整理とは、借金をしている貸金業者と話し合いを行い、借金の内容を軽くしてもらって借金返済をしていく債務整理手段を意味します。
自己破産とは同じ債務整理手段であるという共通した側面があります。
破産は「借金を免責してもらうもの・裁判所に申立てをするもの」であるのに対して、任意整理は「返済をしていくもの・裁判所を利用せずに債権者と個別に話し合うもの」という違いがあります。
個人再生の意味と破産との違い
個人再生とは、裁判所に申立てをして借金を減らしてもらい、分割で支払えるようにしてもらう債務整理手段を意味します。
自己破産とは同じ債務整理手段であり、裁判所に申立てをして行う手続きであるという共通した側面を持っています。
一方で、借金を免責してもらう破産に対して、個人再生も任意整理と同様に返済をする手続きであるという違いがあります。
また、個人再生を利用すると住宅ローンは手続きとは別に返済を続けることができるので、住宅ローンがあっても自宅を失わないで債務整理をすることができるという特徴があります。
任意売却の意味と破産との違い
任意売却とは、住宅ローンの借入れをしている場合に、競売に任せるのではなく、住宅ローン債権者と適切に話し合いをしながらする売却活動を意味します。
住宅ローンで住宅を購入した場合には、返済ができなくなったときに住宅を競売できる抵当権という権利がついています。よって、返済ができなくなった際には競売による売却が行われ、住宅を強制退去させられることになります。
競売は、内覧ができない・維持を諦めた人が雑に扱うなどにより、住宅の状態が良くないことも多く、それらが原因で市場価格の6割~7割程度で落札されることが殆どです。債権者側としてもより多くの金額を回収したいので、市場相場での売却をお願いしたいでしょう。しかし、債務者にとっては、どちらにしても退去しなければならないのであれば、わざわざ売却活動をしなくてもと思うかもしれません。
そこで、債権者が引っ越し費用などの負担をする代わりに、住宅を市場価格で売却してもらうというのが任意売却です。破産は債務の処理についての手続きですが、任意売却は住宅の売却方法という違いがあります。
しかし、任意売却後にまだ債務がある場合には破産を検討することも必要ですので、両者は密接な関連もあります。
任意売却に強い会社は、債務整理に強い会社と協力関係にあるのが一般的なので、任意売却をしてもなお債務の処理が必要な場合には、良い弁護士を紹介してくれます。
まとめ
今回のコラムでは、破産をすることの意味についてお伝えしました。
何かと悪いイメージが先行しやすい「破産」ですが、破産はあくまで債務を整理するための手続きに過ぎず、今までも破産手続きを利用することで多くの人が人生をやり直しています。
借金の問題は弁護士に、住宅ローンがある物件に住んでいる場合には任意売却が得意な不動産会社に、早めに相談をするようにしましょう。