リースバックとは何か?しくみとメリットをプロが解説

住宅ローンの支払いが何らかの原因で難しくなった場合などに、自宅を守るための方法について調べていると、リースバックという方法があることを目にした方も多いのではないのでしょうか。

今回のコラムでは、リースバックとはどのような仕組みなのか、メリットやデメリット、他の制度との比較などをプロが解説します。

目次

リースバックとは?

リースバックとは、元々は企業の金融に関する用語です。
保有している資産を売却する一方で、その資産を使い続ける契約を買い手と結ぶことで、利用をしながら現金を調達する手段のことをいいます。資産の売却をすることから「セルアンドリースバック(sell&leaseback)」とも呼ばれます。

リースバックは昨今、住宅ローンを利用して住宅を手に入れたけれども返済が難しくなった人のために利用されます。
つまり、住宅ローンで購入した物件を任意売却によって売却し、買主と新たに賃貸借契約を結ぶことで今まで通り住み続けることが可能になるというわけです。

任意売却について

住宅ローンの返済が困難になったときに利用される「任意売却」について解説します。

住宅ローンの契約内容

住宅ローンは、住宅を購入するためにお金を借りる契約で、正式には「金銭消費貸借契約」といいます。
金銭消費貸借契約であるという意味においては、消費者金融からお金を借りるのと実は同じです。

しかし、住宅を購入するためには一般的に数千万円という大金が必要で、20年を超える長い期間で返済をすることが予定されています。そのため、途中で返済をすることができなくなることもあります。

住宅ローン債権者は、債務者が返済できなかった場合に、住宅を競売で売却して売却金額を返済に充てることができる「抵当権」という権利を住宅につけます。

住宅ローンが払えなくなったら競売になる

住宅ローン契約の内容から、住宅ローンの支払いができなくなると住宅は競売されます。

そのまま住み続けていると、新たに所有権者となった買主からは「出て行ってください」と主張されることになり、これには逆らえませんので自宅を失うことになります。

任意売却とは競売ではなく自分で売却するもの

任意売却は、競売で自宅を売却するのではなく、自分で売却することをいいます。

住宅ローンの支払いができていない以上、自分で売却しようが競売で売却しようが、所有権はどのみち失われます。ですので、自分で売却しようという気になれない方もいるでしょう。

しかし、競売で売却されると市場価格の6割くらいで売却されることもあり、債権者としてはできる限り市場価格で売却して欲しいという希望があります。そこで、引っ越し費用など何らかの見返りを提供する代わりに、市場価格に近い価格で売却をしてもらうというのが任意売却です。

リースバックは任意売却における解決方法のひとつ

リースバックは、まず任意売却で売却した後に、親族や不動産投資家などに買い取ってもらった上で、その人から借りることになります。

不動産投資家の最大のリスクは借り手がつかないことで、賃料を得ることができない空室です。
リースバックは、借りて住み続けることが前提の契約なので、空室の恐れがないという点では不動産投資家にもメリットがあるものなのです。

リースバックを利用するケース

リースバックを利用するケースは、次の3つです。

住宅ローンが払えない

怪我や病気で収入が無くなってしまったり、借金が増えすぎて住宅ローンの支払いができなくなった場合にリースバックが利用されることがあります。

離婚をしてどちらか一方だけが住むことになった

離婚をしたために、夫または妻のどちらか一方だけが住むことになる場合があります。
そのような状況で、例えば、養育費代わりに住宅ローンを支払っていた夫が住宅ローンを支払わなくなり、返済が難しくなったような場合に、妻が自分で賃貸物件として契約するためにリースバックを利用することがあります。

老後資金の確保のために

最近では、老後資金確保のためにリースバックを利用するケースもあります。

自宅を保有していても、子供がそれぞれ独立している場合には、夫婦の死後に自宅を使う人がおらず、空き家になってしまうことが増えています。そこで、自宅を売却してそのままリースバックにより賃貸をするのです。

万が一、介護が必要になった場合には、自宅の賃貸を止めて介護施設に入居したり、子供の家で引き取るなどの選択をすることができることから、注目を集めています。

リバースモゲージとの違い

老後資金の調達には「リバースモゲージ」という方法もあります。
リバースモゲージは、住宅ローンを完済して資産となった自宅を担保にお金を借りて、老後資金を作る方法をいいます。この場合には、所有権を失わずに住み続けることができます。

リースバックのメリット・デメリット

リースバックには、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。

リースバックのメリット

リースバックのメリットには、次のようなものがあります。

住宅に住み続けることができる

リースバック最大のメリットは、住宅に住み続けることができることです。

競売にしても、任意売却をするにしても、自宅を明け渡すことになります。リースバックを利用すれば、形式的な所有権を失うことになっても、そのまま住宅に住み続けることができます。

自宅を退去して近所の人に知られてしまったり、転居引っ越しに伴って子供の学区が変わってしまい転校を余儀なくされるといった不利益を回避することが可能です。

自宅を所有することによるリスクを軽減することができる

自宅を所有していると、環境の変化による価格の下落や、地震・津波・火災などによる損壊・毀滅、不動産を管理する修繕費用などが発生するなど様々なリスクがあります。

リースバックは、賃貸をしているだけなので、これらのリスクは避けることができます。

リースバックのデメリット

一方でリースバックには、次のようなデメリットがあります。

所有権を失う

不動産を売却することになるので、所有権を失うことになります。

住宅ローンも賃貸も、毎月お金が必要となる点では変わらないのですが、住宅ローンは返済が終われば住宅が資産として残るのに対して、賃貸は所有権を失うので、対象不動産を所有することはできません。

ずっと住み続けられる保証はない

リースバックでは、不動産を売却した上で購入した人から賃貸をすることになります。

この賃貸ですが、場合によっては定期借家契約という契約で結ばれることがあり、通常は期間が満了しても再契約をするのですが、所有者が更新しなければ再契約ができなくなってしまいます。定期借家契約ではなく、通常の賃貸借契約であれば、このような心配はありません。

住宅ローンが払えなくなったときにリースバック以外に自宅を維持する方法

さて、住宅ローンが払えなくなったときに、リースバック以外に自宅を維持する方法はないのでしょうか。
借金の支払いができなくなった人が良く耳にする「債務整理」の主な3つの方法について検討してみましょう。

自己破産・通常の任意売却では住み続けられない

住宅ローンなどの借金が全般的に払えなくなっているときには、自己破産という選択肢が採られます。
しかし、自己破産をする場合には、住宅ローンの返済もできなくなるので、債権者は競売を行うことになります。そのため、自己破産をすると自宅に住み続けられません。

任意整理

債務整理の方法として、借入れをしている会社と個別に話し合いをして借金返済を楽にしてもらう、任意整理という方法があります。
任意整理という方法であれば、住宅ローン債権者に対しては話し合いをせずに今まで通り支払いを続け、他の債務の支払いを軽くすることで、住宅に住み続けることが可能です。

しかし、任意整理は住宅ローンを今まで通り支払い続け、且つ、任意整理した他の借金も返済し続けることができることが大前提になります。

個人再生

債務整理の方法として、裁判所に申立てをして借金を減らしてもらった上で分割の返済をしていく、個人再生という方法があります。
この手続きでは、住宅ローンをそのまま払い続けながら、他の借金を減らしてもらうことが可能になっています。そのため、住み続けることが可能です。

ただし、アンダーローンになっている場合や、住宅ローンの延滞が始まってしまっている場合には利用ができなくなるので注意が必要です。

リースバックの相談先は任意売却を専門とする不動産会社

リースバックは、任意売却を専門とする不動産会社に相談するのがお勧めです。

不動産の売却なのですが、住宅ローン債権者が住宅に抵当権を持っていることもあり、住宅ローン債権者が競売するか任意売却をするかの判断をすることができる状況です。そのため、通常の売却とは違い、債権者と話し合いをしながらの売却活動が必要となります。任意売却を専門とする会社に相談をしてください。

任意売却を専門とする会社は、債務整理を得意としている弁護士と協力をしているのが一般的なので、債務整理の必要がある場合には相談の上で債務整理が得意な弁護士を紹介してもらえます。

まとめ

今回のコラムでは、リースバックについてお伝えしました。

自宅にそのまま住み続けることができる可能性があるリースバックの利用は、任意売却の専門家への相談が不可欠です。
不明な点がある場合には、任意売却の専門家に早めに相談をするようにしましょう。

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