競売申立てには費用がかかる。競売申立費用は誰が払うの?

住宅ローンの返済ができなくなると、いずれ債権者(借入をしている金融機関など)から競売を申立てられてしまいます。
ご存じない方も多いかと思いますが、競売を申立てるのにも実は意外とお金がかかります。
では、この競売申立費用は一体誰が支払うのでしょうか。

目次

競売申立費用とは

まず、競売申立費用とは、どのような費用なのかということを確認しましょう。
競売申立費用とは、その名の通り、競売を申立てるのに必要なお金のことです。その内容は次のとおりです。

予納金

予納金とは、裁判所へ法的な申立手続きを行う際に、実際にかかると想定される手続き費用を前もって納付するよう裁判所が申立者に対して支払いを求めるお金です。
不足が出ないように、実際にかかる費用よりも少し多めの金額設定がされています。

予納金の額

予納金の額は、請求債権の金額によって異なります。

請求債権額 予納金
2,000万円未満 80万円(但し、令和2331日以前に受理された申立てについては60万円)
2,000万円以上-5,000万円未満 100万円
5,000万円以上-1億円未満 150万円
1億円以上 200万円
請求債権のない申立て 申立ての対象物件の評価額を請求債権額として計算する
二重開始事件(※1 原則として30万円(但し、先行事件に含まれない物件があるときは上記の例による)

(※1)二重開始事件

二重開始事件とは、競売の開始決定が既にされている不動産について、さらに競売の申立てがあったときに裁判所が競売開始を決定したものです。

申立手数料

申立手数料とは、競売を申立てるにあたり、手数料として申立書に添付する収入印紙代です。担保権の個数分の収入印紙が必要になります。

競売の種類 申立手数料
担保権実行による競売「(ケ)事件」の場合 担保権1個につき4,000円
強制競売「(ヌ)事件」の場合 請求債権1個につき4,000円
形式的競売「(ケ)事件」の場合(※2 4,000円

(※2)形式的競売

形式的競売とは、一般的に、債権の満足を目的としたものではなく、換価そのものを目的としてされる競売のことをいいます。
例えば、「共有物分割のための競売」・「弁済のためにする相続財産の換価」などの場合には、形式的競売の手続きを利用することが多いです。

【共有物分割のための競売とは】

共有物の分割について共有者同士で協議が調わないときには、その分割を裁判所に請求します。特に家屋などの建築物の場合は、現物を分割するのは非常に困難なため、家屋を競売にかけて売却し、その売却代金をもって分割することで、共有物の分割を行うケースがあります。

【弁済のためにする相続財産の換価とは】

一般的に相続では、被相続人のすべての財産を引き継ぐことになります。そこに、借金などの負の債務があったとしても、それも含めて引き継がなくてはいけません。この負の債務を引き継がないようにするためには、相続自体を放棄するか、限定承認という手続きを行う必要があります。

限定承認というのは、相続したプラスになる財産の範囲内で、被相続人の負の債務を相続することをいいます。

裁判所によって限定承認が受理されると、限定承認の手続きを行った人は、相続財産の精算手続きを行うことになります。その手続きの中で相続財産を競売にかけて換価(現金化)して、債権者にそれぞれの債権額の割合に応じて弁済をします。

限定承認による弁済は、必ず現金で行う必要がありますので、不動産や貴金属など現金以外の財産については競売にかけることになります。

郵便切手代

裁判所が必要書類を送付するための切手代です。実費がかかります。

差押登記のための登録免許税

差押登記を行うための登記費用です。
納付額は確定請求債権額の1000分の4で、1,000円未満のときは1,000円となります。また、請求債権のない申立ての場合は、物件の評価額から算出されます。

競売申立費用は誰が払うのか

競売の申立てには申立費用がかかることが分かりました。では、この申立費用は一体誰が支払うのでしょうか。

競売申立費用は、まず一旦、申立てを行う債権者が支払います。

ここで、「まず一旦」という言葉を使いました。
なぜなら、債権者が支払う競売申立費用は立替えだからです。最終的に申立て債権者は債務者に立替金の請求をしますので、結局のところ競売申立費用を支払うのは債務者本人となります。

競売申立費用のイメージ

実際に、競売申立費用をシミュレーションしてみます。

<例>
◆担保権:1個
◆請求債権額:3,000万円

上記債務に対して、担保権の実行による不動産競売を申立てる場合にかかる競売申立費用は次のとおりです。

◇予納金:100万円
◇申立手数料:4,000円
◇郵便切手代:実費
◇差押登記のための登録免許税:12万円【合計】112万5,000円程度

左記、1125,000円ほどの競売申立費用が、競売後に残る債務にさらに上乗せされることになります。
債務者にとっては、なかなか厳しい金額になるのではないでしょうか。

そして当然ですが、請求債権額や担保権の数が多くなればなるほど、競売申立費用も高額になりますので、競売は避けられるなら避けたほうが良いのです。

競売を取下げる方法

たとえ競売を申立てられても、それを取下げる方法が2つあります。

ひとつは「一括返済」です。
残っている債務について現金で一括返済する方法です。不動産を所有している場合には、不動産の売却価格が残っている債務額を上回るのであれば、不動産を売却して一括返済することで債務は完済となり、競売を取下げることができます。

もうひとつが「任意売却」です。
任意売却は、所有不動産を売却しても残っている債務を完済できない場合に選択する方法です。債権者の合意を得た上で、市場相場に近い価格で不動産を売却することで残債務の圧縮が可能です。
そして、任意売却を行うことで競売の取下げについても早めに対処することができますので、申立てにかかる費用も抑えることができます。

早めに競売を取下げることができますので、競売申立てにかかる費用も少なく抑えることができます。
債務者にとっても、残った債務に上乗せされる競売申立費用が少なくなりますので、任意売却によって、今よりも生活を楽にすることが可能になります。

任意売却の相談は任意売却専門の不動産会社へ

任意売却を行うためには、債権者の合意を得なければなりません。任意売却では、通常の不動産売却とは異なる手続きも多いため、債権者とのやり取りに精通し、実際に任意売却の実績がある専門の会社に相談するのが解決に向けて一番の近道です。

但し、すでに競売申立てをされている状況にある場合には、任意売却の手続きが行える時間に限りがありますので、できるだけ早急に相談されるようにしてください。

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