共同担保のメリット・デメリットを理解して賢く利用しよう!

「共同担保」と聞いても、どういう内容かピンとこない人もいるかもしれません。まとまった資金が必要だったり、住宅ローンを組んだりする場合に共同担保という方法は役に立ちます。一方、リスクもあるので注意しましょう。

ひとつの不動産を担保にするだけでは、求めている借入額に足りないこともあります。このとき、複数の土地や建物を担保に入れて共同担保にすることで、借入額を増やすことができます。実際に、土地と建物の両方を共同担保として活用されるケースもあります。

共同担保を利用した住宅ローンが支払えずに困っている人は、任意売却で解決できるかもしれません。
本記事では、共同担保について分かりやすく解説します。

【執筆】

株式会社いちとり
代表取締役/代表相談員

林 達治

東証一部上場不動産会社、外資系金融機関、任意売却専門会社を経て、日本全国の不動産を対象とした任意売却を専門に扱う株式会社いちとりを設立。

勇気を出して相談してくださったご相談者様に最後まで寄り添ってサポートすることを信条に、現在も会社代表を務めながら代表相談員として、住宅ローンの悩みを抱える方々の問題解決のために精力的に活動している。

長年培ってきた任意売却に関する豊富な知識と経験を活かして、個人・法人問わず、年間500件以上の相談を受けており信頼も篤い。

目次

共同担保とは

共同担保とは、ひとつの債権に対する担保として、複数の土地や建物に担保権を設定することをいいます。
ここでは、共同担保のメリット・デメリットについてみていきましょう。

共同担保のメリット

共同担保は、ひとつの不動産だけでは借入れができなかったり、融資額が希望していた金額より少なかったりする場合に活用できます。

共同担保を入れることで、より有利な条件で融資が受けられるようになります。隣の物件が売りに出されており、ぜひ購入して不動産全体の価値を高めたいというときなどには役に立つ手段といえます。

また、共同担保には債権者側にもメリットがあります。それは、どのようなメリットなのでしょうか。

共同担保は債権者にもメリットがある!

土地と建物の両方を共同担保にした場合、土地だけを競売にするよりも、土地と建物をセットにして競売にした方が価値は上がります。その分、債権者も回収できる金額が増えますので、共同担保は債権者側にもメリットがあります。

共同担保のデメリット

反対に、共同担保には次のようなデメリットがあります。

金融機関の対応エリア外では共同担保にできない

共同担保に入れたい物件が、それぞれ離れた場所に位置していると借入れは難しくなります。なぜなら、金融機関によって対応できるエリアが決められており、エリア外になると共同担保として扱ってくれないからです。そのため、共同担保としたい各々の物件が、金融機関の対応エリア内にあるかどうか事前に確認しておくことをお勧めします。

共同担保は片方だけを抹消することはできない

共同担保を抹消したいときに、片方だけを抹消することはできません。共同担保は、それぞれが一心同体の存在といえるからです。しかし、一部を抹消できるケースもなくはありません。こちらは、後ほど詳しく説明します。

共同担保でよくあるケース

では実際に、共同担保はどのようなケースで使われているのでしょうか。

「土地」+「建物」をセットにして共同担保とするケース

共同担保は、土地と建物をセットにして担保権を設定するケースがよくあります。

例えば、マイホームを購入するにあたり、金融機関が住宅ローンの共同担保として、戸建ての土地と家屋を設定するケースが考えられます。

「現在保有している不動産」+「購入予定の不動産」を共同担保にするケース

自宅とは別に、投資物件を購入する場合にも共同担保は役に立ちます。

購入予定の不動産だけでは担保が十分ではなく、自宅の住宅ローンがすでに完済していたり、残債が少なかったりするときには、この両者を共同担保として設定してもらえることがあります。

また、マイホームを購入する際に、実家も一緒に担保として共同担保にするというやり方もあります。

共同担保目録とは

共同担保目録とは、共同担保の対象を一覧にしたもののことで、登記事項証明書(「登記簿謄本」ともいう)に記載されています。

共同担保目録には、共同担保の対象となる物件の住所と共に「土地」や「家屋」といった種別も記載されます。
さらに、債務者が返済できなくなった場合に、優先して債権を回収できる権利をもつ抵当権者の順番が「順位番号」として1番から順に振られています。

登記事項証明書には、共同担保目録以外に「表題部」・「権利部(甲区)」・「権利部(乙区)」といった記載欄もあります。
抵当権がいつ設定されたのか、債権額はいくらか、利息はいくらかといった借入れに関する情報や、債務者と債権者の氏名、住所などの重要な情報は「権利部(乙区)」に記載されていますので確認することができます。

共同担保目録はどこで取得できる?

共同担保目録は、最寄りの法務局で取得できます。また、オンライン上でも請求可能です。

いずれの場合も「登記事項証明書」を選択し、共同担保目録が必要である旨を伝えたり、項目にチェックを入れたりする必要がありますので、取得される際には窓口やオンライン画面上で確認しましょう。

共同担保と抵当権の関係

抵当権とは、主に住宅ローンを組む際に設定されますが、住宅ローンが返せなくなった場合に、金融機関が競売によって優先して債権を回収できる権利のことをいいます。

「担保=抵当権」と考えてよいでしょう。共同担保の場合は「共同抵当」といいます。

共同担保目録の抹消

家を売却するときには、事前に共同担保目録から抵当権を抹消する必要があります。理論上では、抹消せずに売却することも可能ですが、共同担保の入った物件の買い手を見つけるのは極めて難しいと思ってください。

共同担保目録は、債務が完済したからといって自動的に抹消されるものではありません。また、債権者が抹消してくれるものでもないので注意しましょう!

抹消手続きは個人で行うことも可能ですが、司法書士に依頼するとよりスムーズに手続きを行うことができます。

共同担保目録から抵当権を抹消する方法

では、共同担保目録から抵当権を抹消できるのは、どのようなときでしょうか。

債務をすべて返済したとき

先ほども述べましたが、共同担保目録は債務をすべて返済すれば抹消ができます。

また、共同担保に設定された不動産のうちの一方が完済され、もう一方の不動産だけでも十分に価値があると金融機関側が判断すれば、共同担保目録の抵当権を一部抹消してもらえるケースもあります。

しかし、返済期間中に価格が上昇することはそう多くはないため、あまり期待しないほうがよいでしょう。どうしても一部抹消したいときは、専門家に相談してみることをお勧めします。

任意売却したとき

住宅ローンだけでなく、他の債務も返せなくなってしまった場合でも、任意売却によって共同担保目録から抵当権を抹消することができます。

任意売却とは、債務の返済が厳しい状況を受けて、相場に近い価格で物件を売却して債権者に返済し、残った債務を分割で負担のない金額で支払っていけるよう債権者と話し合い、返済を続けていくようにする不動産売却の手続きです。

任意売却を行う手続きの中で、債権者と話し合いの上で抹消手続きを行うことができます。債権者を相手とした話し合いのプロセスが必要となるので、任意売却を専門に扱う不動産会社に相談するのがよいでしょう。

住宅ローンに困ったら任意売却を!

手持ちの資金が少なかったり、建物だけを担保に入れても求める金額の借入れが難しかったりすることもあります。このような場合には、土地と建物を共同担保にして住宅ローンを組むと解決できることもあります。

しかし逆をいうと、債務者にとっては土地と建物の両方を失ってしまう可能性があり、リスクもあるということを念頭に入れておきましょう。

共同担保においては過度に心配する必要はなく、債務を完済すれば何の問題もありません。その際は、必ず抹消手続きを済ませておくことが大切です。また、共同担保に入れている住宅ローンの支払いに困った場合には、任意売却を検討してみましょう。

任意売却は、債権者との話し合いが必要かつ重要になるため、任意売却の専門家への依頼をお勧めします!

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