借金の返済義務は?妻が住宅ローンの連帯保証人になるときの注意点
住宅ローンを組む際に、ペアローンや収入合算で、連帯保証人が必要となる場合があります。
例えば、収入合算では夫が契約者となり妻が連帯保証人になるケースがよくありますが、返済できなくなった際にトラブルになることも少なくありません。
そこで今回は、連帯保証人の仕組みや住宅ローンで連帯保証人を立てるメリット・デメリット、注意点などを解説します。
連帯保証人とは?
連帯保証人とは、主たる債務者がローンなどの借金を支払わないときに、主たる債務者に代わって返済する義務を負う者のことです。
例えば、賃貸借契約を締結する際に、連帯保証人を立てるケースが多いです。契約者が家賃を滞納した場合に、連帯保証人が支払わなければなりません。
「保証人」と「連帯保証人」の違い
「保証人」と「連帯保証人」は違うものです。両者には、以下のような大きな違いがあります。
「保証人」と「連帯保証人」の違い
保証人 | 連帯保証人 | |
---|---|---|
催告の抗弁権 | ある | ない |
検索の抗弁権 | ある | ない |
分別の利益 | ある | ない |
催告の抗弁権
まず、「催告の抗弁権」とは、債権者(お金を貸した側)が保証人に請求したときに、例外時を除き「まずは主たる債務者に請求してください」と主張することができる権利です。連帯保証人には、このような権利はありません。
検索の抗弁権
次に「検索の抗弁権」とは、債権者が保証人に請求したときに、保証人が主たる債務者に資力があって執行の容易な財産があることを証明することで「先に主たる債務者に請求してください」と主張することができる権利です。連帯保証人には、このような権利はありません。
分別の利益
最後に「分別の利益」です。「分別の利益」とは、保証人が複数人いる場合には、各保証人はそれぞれ等しい割合で返還義務を負うということです。つまり、保証人の数が多ければ多いほど、1人あたりの負担額は少なくなるということです。
一方、連帯保証人には分別の利益がなく、連帯保証人が何人いようと、それぞれが全額を負担する義務を負います。
例として、
100万円の債務に対して「保証人」と「連帯保証人」を設定した場合の、それぞれの返済義務について分かりやすく説明すると次の図の通りです。
保証人を2人設定した場合 | 連帯保証人を2人設定した場合 |
---|---|
主たる債務者の返済義務 100万円 | 主たる債務者の返済義務 100万円 |
保証人Aの返済義務 50万円 | 連帯保証人Aの返済義務 100万円 |
保証人Bの返済義務 50万円 | 連帯保証人Bの返済義務 100万円 |
「連帯債務者」と「連帯保証人」の違い
住宅ローンを借りることになったとき、夫(または妻)一人の収入では希望の額を借りられない場合もあります。そのようなケースでは、夫婦の収入を合算する方法を採ることがありますが、収入合算を行った場合、合算される側は「連帯債務者」または「連帯保証人」になります。
では、「連帯債務者」と「連帯保証人」では、一体何が違うのでしょうか。
連帯債務者
「連帯債務者」は、その言葉の通り、連帯して債務を負う者のことをいいます。つまり、主たる債務者と連帯債務者は、それぞれが同じように主債務に対して責任を負うことになります。
例えば、
夫婦が3,000万円の住宅ローンを連帯債務で借りた場合、夫と妻それぞれが借入先に対して3,000万円全額についての責任を負うことになります。連帯債務者である夫と妻の両者は、借りた3,000万円について、いつでも金融機関から返済請求を受ける可能性があります。そして、3,000万円全額を返済すれば債務はなくなります。
連帯保証人
「連帯保証人」は、主たる債務者と連帯して債務を保証する人のことをいいます。連帯保証人は、あくまで保証をする立場であるため、主たる債務者の返済が滞ってはじめて、借入先から返済請求を受けることになります。
例えば、
夫が3,000万円の住宅ローンを借りて、収入合算した妻が「連帯保証人」となったケースでは、借入先に対する債務者は夫のみとなります。夫の返済が滞って初めて、連帯保証人である妻に対して返済請求が来るようになります。したがって、妻は、連帯債務者のように最初から返済を請求される立場にあるわけではありません。
住宅ローンには、「連帯債務型」と「連帯保証型」がありますので、
それぞれの違いをしっかり理解しておきましょう!
「連帯保証人」が必要となるケース
住宅ローンや不動産投資ローンでは、連帯保証人が必要となるケースがあります。
どのような場面で連帯保証人が必要となるのか、詳しくみていきましょう。
- ペアローンを組む場合
-
夫婦や親族でペアローンを組む場合は、それぞれが住宅ローンを組んでお互いの連帯保証人となります。
- 収入合算をする場合
-
合算した金額をもとに、ひとつのローンを組む方法です。合算できる金額は、金融機関によって異なります。合算することで借入額を増やすことができます。夫婦や親族で収入を合算する場合は、借入れをする人が主たる債務者で、収入合算者が連帯保証人(または連帯債務者)になります。
- 親名義の土地に子が家を建てる場合
-
子が親名義の土地に家を建てる際に、建物だけでは担保が不十分と判断された場合は、土地の所有者である親が連帯保証人となるケースがあります。土地と建物では、土地のほうが担保価値が高いのが一般的だからです。
- 審査内容に問題がある場合(借入額に対して年収が見合わない、勤続年数が足りないなどの場合)
-
年収が少なかったり、勤続年数が足りないなど、融資の審査条件に引っかかるような場合には、連帯保証人をつけることで融資が受けられるケースもあります。
- 自営業者の場合
-
個人事業主や会社経営者などの場合は、収入が景気や世の中の情勢に左右されることも多く、返済が滞るリスクも高くなります。そのため、状況が悪化してくると、保証会社の保証のほかに連帯保証人も立てることが融資の条件になるケースがあります。
住宅ローンで連帯保証人を立てるメリット・デメリット
住宅ローンを組むときに、連帯保証人を立てることのメリットとデメリットには、どのようなことがあるのでしょうか。
メリット
- 借入金額を増やすことが可能
-
連帯保証人を立て、収入合算して住宅ローンを組むことで、借入金額を増やすことができます。金融機関によっては、正社員でなくてもパートの収入を合算できる場合があります。
- 諸費用の負担が少なくて済む
-
ペアローンとは異なり、住宅ローン契約自体はひとつのため、手数料などの諸費用を抑えることができます。
- 保証料がかからない
-
連帯保証人を立てる場合は保証料がかかりません。連帯保証人が立てられない場合には、保証会社を利用することになりますので、その場合には保証会社へ支払う保証料が発生します。
デメリット
- 連帯保証人には住宅ローン控除が適用されない
-
連帯保証人は、あくまでも「連帯保証人」という立場であるため、住宅ローン控除の適用を受けることができません。住宅ローン控除が適用されるのは、主たる債務者に限ります。
- 離婚や死亡に伴うリスクが大きい
-
収入合算をして連帯保証人になった配偶者が死亡した場合、主たる債務者の返済はそのまま続くことになります。しかし、世帯収入が減ってしまうことになるので、返済が厳しくなる可能性があります。また、離婚の場合には、離婚後の住宅ローンの支払いや財産分与について、夫婦間でトラブルになるケースも多くみられます。
収入合算の場合、団体信用生命保険への加入は、原則主たる債務者一人となりますが、夫婦で入れる団体信用生命保険があるようであれば、リスク回避のためにも加入しておくことをお勧めします。
妻が住宅ローンの連帯保証人になるときの注意点
夫婦だからといって、安易に連帯保証人になることは危険です。ここでは、妻が住宅ローンの連帯保証人になるときに注意すべき点をみていきましょう。
返済について事前に夫婦間で話し合いをしておく
先にも述べた通り、連帯保証人とは「連帯して債務を保証する人」のことをいいます。
住宅ローンの場合は金額も大きく、返済期間が何十年と長期に渡ります。今は大丈夫でも、将来、夫が住宅ローンを返済できなくなるような事態になってしまう場合もないとは限りません。
妻が連帯保証人になっていると、夫が住宅ローンの返済ができなくなった際には妻に返済義務が発生しますので、住宅ローン契約をする前に「万が一、返済ができなくなったときは誰がどうするのか?」ということについて、夫婦できちんと話し合っておくことはとても重要です。
連帯保証人を外れることは簡単にはできない
連帯保証人には、主たる債務者と同等の責任が課せられているため、一度、連帯保証人になってしまうと、その立場から逃れることは簡単ではありません。自分の意思で連帯保証人を外れるということはまずできませんので、そのことはしっかり理解しておいてください。
しかし、絶対に外れることができないというわけでもありませんので、ここでは、連帯保証人から外れるための方法についてもみていきましょう。
債権者に別の物的担保を提供する
債権者にとって、連帯保証人がいなくなることの何が問題になるかというと「債務に対する人的担保がなくなる」ということです。そのため、連帯保証人に代わる「別の物的担保」が用意できるようであれば、妻が連帯保証人を外れることができる場合もあります。
但し、新たに提供される担保が、連帯保証人に匹敵するかそれ以上の価値があるものでなければ、なかなか認められないでしょう。別の物的担保としてなり得るものとして「主債務者の親族(今までの連帯保証人以外)が所有する不動産」などが考えられます。
別の人に連帯保証人になってもらう
債権者にとって、今までの連帯保証人と同様の状態を維持するため「別の連帯保証人を立てる」という方法です。
しかし、これは誰でもよいというわけではありません。
新たな連帯保証人も、主たる債務者と変わらない信用力が必要となりますので「安定した収入がある人」や「まとまった資産がある人」といった連帯保証人になり得る条件を備えている必要があります。このような条件を持ち、連帯保証人になってくれるような人を用意できるのであれば、連帯保証人を交代してもらえる場合もあります。
債権者の同意がある場合
連帯保証契約は、主たる契約に影響されます。これを「付従性」といいます。住宅ローンの場合は、住宅を担保にした金銭消費貸借契約(住宅を担保にお金を借りる)が主たる契約となります。
したがって、非常に稀なケースと思われますが、住宅ローン債務の残額が「もう保証人なしでも問題ない」というレベルにまで少なくなっていれば、債権者の同意を取り付けて連帯保証人を外れることができる場合もあります。
どうしても妻の連帯保証を外したいときには
住宅ローンにおいて、妻が連帯保証人を外れることは、とてもハードルが高いと述べてきました。
しかし、それでもどうしても妻を連帯保証人から外したい場合には、他に何か方法があるのでしょうか。
住宅ローンの借り換えを検討する
借入先の金融機関に、住宅ローンの借り換えが可能であるか問い合わせてみましょう。
住宅ローンの借り換えとは、新たな住宅ローン契約によってお金を借り、既存の住宅ローンを一括返済することです。 現在の住宅ローンより低金利の住宅ローンに借り換えることで、月々の返済の負担を軽減でき、返済総額も減らせる可能性があります。
但し、住宅ローンの借り換えによって妻を連帯保証人から外すためには、夫が新たな住宅ローン審査に自身の収入だけで通過しなければなりません。これも、なかなかハードルが高い方法となるでしょう。
住宅を売却する
連帯保証人の交代や住宅ローンの借り換えができない場合は、最終的に住宅の売却を検討することになります。住宅の売却にあたっては、売却によって「アンダーローン」になるか「オーバーローン」になるかで方法が異なります。
アンダーローンの場合
アンダーローンとは、住宅ローンの残債が住宅の売却価格より少ない状態のことをいいます。アンダーローンの場合には、住宅の売却代金によって住宅ローンを完済することができますので、妻の連帯保証契約は解消されます。また、住宅ローンを完済した後、お金が余れば夫婦で協議の上、配分するのが一般的です。
オーバーローンの場合
問題はオーバーローンの場合です。
オーバーローンとは、住宅ローンの残債が住宅の売却価格より多い状態をいいます。オーバーローンの場合には、住宅を売却しても住宅ローンを完済することができないため、通常の不動産売買では住宅を売却することはできません。
そこで、「任意売却」という方法を検討する必要が出てきます。
「任意売却」とは、住宅を売却しても住宅ローンが残ってしまう場合に、債権者(借入れをした金融機関等)の合意を得ることで、売却を可能にさせることができる不動産取引です。住宅ローンの債務は残りますので、妻を連帯保証人から外すことは難しいですが、任意売却によって債務を圧縮することで、その後の返済を楽にすることが可能になります。
連帯保証契約をする前には十分な検討を
住宅ローンを組むときには、状況によって連帯保証人が必要になる場合もあります。
今回説明した連帯保証人の仕組みやメリット・デメリット、注意点などをしっかり理解して、連帯保証契約をする前には、十分な検討を行ってから行動するようにしてください。