任意売却とは何か。任意売却の専門家が分かりやすく解説!

住宅ローンや税金などの滞納が続くと、いずれ所有不動産は差押えられ、競売(公売)にかけられます。
競売(公売)で対処することは、債務者にとってデメリットも多く、あまりお勧めはできません。

今回は、競売(公売)を回避して問題を解決する手段のひとつに「任意売却」という方法があること。そして、任意売却について理解を深めていただくために「任意売却」とは何かということについて、任意売却の専門家が詳しく解説いたします。

目次

任意売却とは何か

住宅ローンや税金などが支払えず滞納してしまうと、債権者によって所有不動産は差押えられ、競売を申立てられます。

しかし、競売(公売)を申立てられてしまっても、競売(公売)の入札が開始される前であれば、不動産価格が借入金の残高を下回っても債権者の合意を得た上で売却を可能にさせることができます。
このような不動産取引のことを「任意売却」といいます。

ところで、債権者って何ですか?

代表相談員 林

「債権者」というのは、
住宅ローンの場合は、お金を貸した金融機関のことで、税金や健康保険料などの場合は、税務署や役所などの行政機関のことになります。

逆に、お金を返す・支払う義務がある者を「債務者」というんですよ!

任意売却と競売(公売)の違い

任意売却は、競売(公売)よりも有利な条件で不動産を売却することが可能です。実際にどのような違いがあるのか、詳しく見ていきましょう。

売却価格と残債務について

競売(公売)の場合

市場相場の5割~7割程度値下げされた安価な価格で落札されるのが一般的です。落札価格が安いということは、それだけ住宅ローンの債務が多く残るということです。

任意売却の場合

債権者から合意を得ることが条件となりますが、合意が得られれば通常の売却同様、市場相場に近い価格で売却することが可能となります。競売(公売)よりも高い金額で売却できるため、住宅ローンの残債務についても、競売(公売)に比べ少なく圧縮できます。

退去について

競売(公売)の場合

落札者(買受人)によって代金の全額納付がされると、所有権は新所有者(買受人)に移ります。旧所有者(債務者)は、退去時期などの希望を聞いてもらうこともできずに、強制的に退去を余儀なくされます。

任意売却の場合

退去時期について不動産の購入者(新所有者)と話し合いをすることが可能で、引渡しについて債務者の希望を聞いてもらえる場合も多いです。

引越し費用について

競売(公売)の場合

引越し費用をもらうことはできず、自分で工面しなければなりません。

任意売却の場合

債権者との話し合い次第では、債権者に引越し費用を捻出してもらうことも可能です。

個人情報について

競売(公売)の場合

競売の開始決定がなされると、裁判所によって公告され、新聞やインターネットなどで債務者の情報は広く世間に公開されます。

任意売却の場合

通常の不動産売却と同じ方法で売却活動を行っていきますので、世間に個人情報が知られる心配はありません。

精神的負担について

競売(公売)の場合

債務が多く残る、引越し費用がないのに強制退去を迫られる、個人情報も知られてしまうといったことで、精神的負担が大きくなります。

任意売却の場合

債務の圧縮ができ、退去時期の相談や引越し費用を確保できる可能性もあり、周囲に知られることもありません。何より任意売却の手続きは依頼先の会社が全て代行して行ってくれますので、精神的にも楽になれます。

任意売却は債権者にとってもメリットが多い

話し合いの結果次第になるとは思いますが、
債権者は、なぜ任意売却に応じてくれるんですか?

代表相談員 林

それは、債権者にとってもメリットがあるからなんですよ。
任意売却は、債権者からも勧められる「競売をさけるための有効な手段」といえます。

競売より多くお金の回収ができる

前述した通り、競売では市場相場の5~7割程度といった安価な価格で落札されることが多く、貸したお金を全額回収することが困難になります。また、競売では落札されるまで、いくらお金が回収できるか分かりません。

任意売却では、市場相場に近い価格で売却されるため、競売より多くお金を回収することができ、事前にいくらお金が回収できるか分かるため、債権者にとってもメリットの多い売却方法となります。

申立て費用が掛からなくて済む

金融機関などの債権者が競売を申立てるためには、当然費用が掛かります。一般的な住宅に掛かる競売申立費用は「100~120万円程度」といわれています。

債権者は、競売申立費用を債務者の代わりに立替えて競売の申立てを行います。
最終的に競売に掛かった費用は、債務者が負担することになりますが、いつ回収できるのか、そもそも回収自体できるのか分かりません。債権者としては、競売より任意売却の方がローリスクでお金を回収することができるというメリットがあるのです。

残った債務について支払い方法を話し合える

競売や任意売却後に残った債務について、回収計画が立てられることは債権者にとって大きなメリットといえます。
競売の申立ては、所有者である債務者と連絡が取れずに、やむなく行うというケースも多いのです。

競売の場合は、落札されたとしても、残った債務について返済方法などが不透明になりやすく不安が残ります。その点、任意売却では、残った債務について債務者と返済方法を話し合うことができるため、回収計画も立てやすく、安心した取引ができます。

任意売却での解決方法

任意売却には、債務者の状況や希望に沿った解決への選択肢が色々とあります。どのような方法があるのか確認しましょう。

高く売却する(完済または残債務を減らす)

任意売却は、市場相場に近い価格での売却が可能です。競売(公売)より高く売却できるため、住宅ローンの完済、もしくは残債務を減らすことができます。

引越し費用を確保する

競売(公売)では、引越し費用を請求することはできませんが、任意売却の場合は、債権者との話し合い次第で、売却代金の中から引越し費用を確保することも可能です。

そのまま住み続ける(リースバック)

信頼できる第三者へ所有不動産を売却し、賃料を支払っていくことで自宅に住み続けるという方法です。
このような方法を「リースバック」といい、その方の状況に応じて検討していきます。将来的に、状況が改善した場合には、買戻すことも可能です。

リースバックの方法としては、次の3パターンがあります。

  1. お子様に買ってもらう
  2. 親戚・知人に買ってもらう
  3. 投資家・投資会社に買ってもらう

任意売却のメリット・デメリット

任意売却には、メリットだけでなくデメリットもあります。
任意売却を検討する際には、メリットとデメリットの両方を理解した上で判断しましょう。

任意売却のメリット

任意売却の主なメリットには、以下のようなことが挙げられます。

近隣に事情を知られることなく売却できる

競売(公売)になると、所有者の氏名や住所などの情報が新聞やインターネットなどに公開され、広く世間に知られるようになります。
任意売却の場合は、通常の不動産売却と同じ方法で売却活動を行っていきますので、周囲や近所の人に事情を知られることなく売却することができます。

依頼から問題解決まで費用負担がない

任意売却は、依頼から問題解決に至るまで一切の費用負担がありません。なぜなら、任意売却の手続きに必要な費用は、全て売却代金より清算されるからです。
不動産会社に支払われる手数料やその他の様々な手数料、司法書士に支払う抵当権抹消費用、引越し費用などの諸費用は、全て売却代金から支払われます。

依頼先の会社が任意売却の手続きを全て代行してくれる

任意売却は、債権者の合意がなければ行うことはできません。
時間のかかる債権者との話し合いや様々な事務作業・任意売却に係る手続きなども依頼先の会社が全て代行してくれます。

任意売却のデメリット

任意売却の主なデメリットには、以下のようなことが挙げられます。

依頼先を自分で探さなければいけない

競売(公売)は、何もしなくても裁判所によって自動的に手続きが進んでいきます。
任意売却の場合は、依頼先を自分で探して依頼しなければ手続きを進めることはできません。

連帯保証人・連帯債務者がいる場合には全員の同意が必要

住宅ローンに連帯保証人や連帯債務者がついている場合には、その全員の同意がなければ任意売却をすることはできません。

任意売却をしても債務が残ってしまうような場合には、債務者が残った債務の返済ができなくなったり、自己破産したりすれば、今度は連帯保証人や連帯債務者に請求がいくことになるからです。

当然、一括請求となりますので、一括で支払うことができなければ、連帯保証人や連帯債務者も自宅が差押えられたり、自己破産するような事態に陥る可能性が高くなります。
そのようなリスクを抱えている連帯保証人・連帯債務者の同意なく、勝手に任意売却を進めてしまうことはできません。

必ず任意売却できるとは限らない

先にも述べましたが、任意売却は、債権者や連帯保証人・連帯債務者など関係者全員の合意が得られなければ行うことはできません。また、既に競売(公売)が申立てられ、開始決定もされているような場合では、時間に制限も出てきます。

任意売却を成功させるためには、実務上、競売(公売)の入札が開始される前までに決済(売買代金の支払いと物件の引渡し)が完了していなければなりません。対応が遅くなればなるほど、タイムオーバーになる確率は高くなります。

任意売却はどこに依頼すればよいのか

任意売却は、任意売却を専門に扱う不動産会社以外にも、一般的な不動産会社や弁護士、司法書士にも依頼することができます。そうなると、一体どこに依頼するのが良いのか非常に悩まれる方も多いと思います。
任意売却は、どこに依頼するのが良いのでしょうか。

任意売却を依頼するなら任意売却専門の不動産会社が◎

任意売却を依頼するにあたり、お勧めする依頼先はやはり「任意売却を専門に扱う不動産会社」です。
理由は何といっても、債権者との話し合いや手続きに関する知識・経験の豊富さ、任意売却物件に関する買主探しの情報量やネットワークが他に比べて秀でているからです。

弁護士に依頼した場合でも、任意売却を行うのは弁護士ではありません。弁護士が懇意にしている不動産会社です。紹介された不動産会社の知識や経験値などの能力により、任意売却の成功率は大きく左右されてしまいます。

ここでのポイントは、法律関係の事案に関しては対応が困難なこともあるため、すぐに弁護士と連携がとれる環境にある不動産会社を選ぶことです!

不動産会社を紹介するだけの組織や貸金業者に依頼するのは×

紹介組織は、問い合わせのあった相談者の情報を不動産会社や任意売却専門会社に売るビジネスを行っている会社です。紹介組織が直接任意売却業務を行うことはありません。そのため、任意売却が成功するかどうかは運任せになってしまいます。

貸金業者は、不動産の評価額が債務額を上回る場合において「不動産担保ローン」を勧めます。
自社で不動産担保ローンを組ませ、再び債務者が支払い不能になると自社の関連会社(不動産会社)で任意売却が行われます。
融資手数料や金利の他、最終的には担保不動産の売却益を得るという破産前提で物事が進んでいきます。不動産担保ローンを提案してくる会社には注意してください。

任意売却しても債務(借金)が残ってしまった場合はどうなるのか

任意売却を検討する際、最も気になる点のひとつに、任意売却しても債務(借金)が残ってしまった場合はどうなるのか?ということが挙げられると思います。

自宅を売却しても債務(借金)が残ってしまったとき、任意売却では次のような方法で解決していきます。

返済方法について債権者と話し合いをする

最初に理解していただきたいことがあります。それは、残ったローンや借金は帳消しにはならない!ということです。
残った債務については、任意売却後も返済をしていく必要があります。

しかし、残った債務の返済については、今までの住宅ローンと同じ支払い方ではなく、月々5千円や1万円など、日常生活をしながら無理のない範囲で返済していけるよう、債権者と話し合いをすることができます。
状況次第では、残った債務の1割程度の返済でローン問題を解決した事例もありますので、ご安心ください。。

代表相談員 林

お金の問題は必ず解決できます!!

それでも返済が難しい場合は「債務整理」を検討する

任意売却後に残った債務について、やはり返済していくのが難しいという場合もあるかと思います。
そのときは、「債務整理」を検討します。

債務整理には、「任意整理」「自己破産」「個人再生」など、いくつか種類がありますので、ご自身の状況に合った方法で対処しましょう。

任意売却を専門に扱う不動産会社では、債務整理に精通した弁護士を紹介してもらうこともできます。
弁護士事務所へ直接相談に行くのが不安に思われる場合などは、任意売却を依頼した会社の担当者に相談してみるのもよいでしょう。

住宅ローンや税金の支払いにお悩みの方は任意売却の専門家に早めに相談を!

任意売却は、早めに相談することで解決に向けての選択肢が広がります。
任意売却の専門家に相談し、話を聞くだけでもきっと気持ちは楽になるはずです。

住宅ローンや税金の支払いにお悩みの方は、まずは勇気をもって、任意売却の専門家に相談してみてください。

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