自己破産の影響は?ローン別での影響やデメリット、対応策を解説

借金返済が難しくなった場合に利用する自己破産
自己破産を行うと、生活にも様々な影響が及ぶことになります。

✔ ローン別でどのような影響があるのか
✔ 自己破産にどのようなデメリットがあるのか
✔ どのような対応策があるのか

今回のコラムでは、上記のポイントを踏まえて自己破産について説明していきます。

目次

自己破産とは?

自己破産とは、裁判所に申立て手続きを行って、借金を免責(免除)してもらう手続きのことです。
借金の返済が難しくなったときに利用する債務整理の手続きの一種で、返済の必要がないという特色をもっている手続きです。

自己破産の条件

自己破産には次のような条件があります。

支払不能であること

本来、借金をした場合には返済をしなければならないのは当然です。
自己破産は、これを免除する極めて例外的な手続きなので、本当に支払えなくなった例外的なケースに限るべきです。
そこで、支払不能になった場合に利用できる旨が規定されています。(破産法15条)

そのため、「住宅ローンがアンダーローンとなっている」「住宅ローンを完済している」ようなケースで、売却して資産にできるような場合には、支払不能とはいえず、自己破産ができない場合があります。

免責不許可事由がないこと

自己破産の目的である債務の免責に必要な条件として、免責不許可事由(252条1項各号)がないことも必要です。
借金を免責する例外的なものである以上、免責するに相応しくない場合には免責しないとしています。

免責不許可事由には、ギャンブルや浪費(4号)で借入れをした、特定の債権者にのみ返済をした(3号)、裁判所に虚偽の説明をした(8号)などが挙げられます。

ただ、仮に免責不許可事由があったとしても、借金をした状況やその後の反省などを鑑みて裁判所の裁量によって免責を認める場合もあります。(破産法252条2項:裁量免責)

裁判所は、破産者について、次の各号に掲げる事由(免責不許可事由)のいずれにも該当しない場合には、免責許可の決定をする。

(1号)債務者の財産を不当に減少させる行為
債権者を害する目的で、破産財団に属し、又は属すべき財産の隠匿、損壊、債権者に不利益な処分その他の破産財団の価値を不当に減少させる行為をしたこと。
(2号)不利益な条件による債務負担行為
破産手続の開始を遅延させる目的で、著しく不利益な条件で債務を負担し、又は信用取引により商品を買い入れてこれを著しく不利益な条件で処分したこと。
(3号)特定の債権者に利益を与えるような行為
特定の債権者に対する債務について、当該債権者に特別の利益を与える目的又は他の債権者を害する目的で、担保の供与又は債務の消滅に関する行為であって、債務者の義務に属せず、又はその方法若しくは時期が債務者の義務に属しないものをしたこと。
(4号)浪費やギャンブルなどが原因で借金を作った場合
浪費又は賭博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと。
(5号)詐術による信用取引で財産を取得する行為
破産手続開始の申立てがあった日の1年前の日から破産手続開始の決定があった日までの間に、破産手続開始の原因となる事実があることを知りながら、当該事実がないと信じさせるため、詐術を用いて信用取引により財産を取得したこと。
(6号)帳簿等を隠したり偽造する行為
業務及び財産の状況に関する帳簿、書類その他の物件を隠滅し、偽造し、又は変造したこと。
(7号)虚偽の債権者名簿を提出する行為
虚偽の債権者名簿(第248条第5項の規定により債権者名簿とみなされる債権者一覧表を含む。次条第1項第6号において同じ。)を提出したこと。
(8号)裁判所への説明を拒絶したり、虚偽の説明をしたりする行為
破産手続において裁判所が行う調査において、説明を拒み、又は虚偽の説明をしたこと。
(9号)管財業務を妨害する行為
不正の手段により、破産管財人、保全管理人、破産管財人代理又は保全管理人代理の職務を妨害したこと。
(10号)過去7年以内に免責を受けたことがある場合
次のイからハまでに掲げる事由のいずれかがある場合において、それぞれイからハまでに定める日から7年以内に免責許可の申立てがあったこと。
イ.免責許可の決定が確定したこと 当該免責許可の決定の確定の日
ロ.民事再生法(平成11年法律第225号)第239条第1項に規定する給与所得者等再生における再生計画が遂行されたこと 当該再生計画認可の決定の確定の日
ハ.民事再生法第235条第1項(同法第244条において準用する場合を含む。)に規定する免責の決定が確定したこと 当該免責の決定に係る再生計画認可の決定の確定の日
(11号)破産法上の義務違反行為
第40条第1項第1号、第41条又は第250条第2項に規定する義務その他この法律に定める義務に違反したこと。

破産法第252条1項(免責許可の決定の要件等)

自己破産の費用

自己破産は、裁判所に申立てをして行う手続きなので、どうしても費用がかかります。

弁護士や司法書士への相談については、無料で相談を行っているところがほとんどです。
依頼については20万円以上しますが、通常は分割での支払いに応じてもらえます。

裁判所に対する費用は、手続きが「同時廃止」という簡単な手続きで終わるか、「少額管財」という手続きで終わるかで、3万円~50万円と大幅に変わります。

自宅を持っているような場合には、少額管財手続きとなることが多く、少なくとも20万円程度かかりますので、弁護士に依頼してからコツコツ貯める形になります。

自己破産になってしまうパターン

自己破産になってしまうパターンには、どのようなケースがあるでしょうか。
ローンのタイプ別に検討しましょう。

消費者金融・銀行・信販会社のローン

消費者金融や銀行のローンは、借入れの目的を問いません。信販会社でクレジットカードを作った場合の「キャッシング」もまた同様です。

このような借入れをしやすいローンは、ついつい使ってしまい、返済後の残額を見ないで返済をしているケースが多いです。
特に返済をリボルビング払いにしているような場合には、返済を軽くすることができるのですが、一方で利息ばかりの返済になり、元本が全く減っていないということはよくあります。

ついつい浪費をし過ぎてしまい、いつの間にか負担が多くなり、冠婚葬祭・賃貸物件の家賃の更新・車検などの負担がある際に、支払いきれなくて自己破産となるケースが多いです。

住宅ローン

住宅ローンは、通常数十年に渡って返済をするもので、借入れ時には大きな額の借入れをしています。そのため、借入れ時に想定していなかった状況に陥ると返済が難しくなります。

当初は転職などせず、順調に出世をして給料を増やす予定だったにも関わらず、会社が倒産して再就職せざるを得なくなるケースがあります。ボーナスがある会社に勤めていたのに、年俸制の会社に勤めることになったり、そもそも再就職で給与が大幅に下がるようなこともあります。

賃貸であれば、もっと家賃の安いところに引っ越しをするということが可能なのですが、住宅ローンを組んでしまうとそういう訳にはいきません。その結果、じわじわと家計を圧迫し、返済しきれなくなって自己破産となるようなケースがあります。

自己破産をした際のデメリットとは?

自己破産は、基本的には債務を免除してくれるというメリットのある手続きなのですが、反対にデメリットもあります。

一定以上の資産や現金を没収される

自己破産手続きでは、一定以上の資産や現金を債権者に対して債権額に応じて支払う「配当」という手続きが行われます。

とはいえ、申立てした人を一文無しにして放り出す手続きではないので、例えば、現金であれば99万円を上限に持っておくことが認められています。

借金返済ができなくなった人が一定以上の資産を持っていることは珍しいので、デメリットではあるのですが、あまり気にしなくてよいです。

保証人や連帯保証人が債権者から返済を迫られる

保証人・連帯保証人がついている債務については、自己破産手続きを利用すると、保証人・連帯保証人が債務の返済を迫られます。奨学金や商工ローン、小規模の消費者金融からの借入れがあるような場合には注意が必要です。

信用情報機関に情報が登録される

自己破産に限ったことではないのですが、債務整理のどの手続きを利用しても信用情報機関に情報が登録されます。
これによって、新たな借入れやクレジットカードなどの与信を必要とする取引ができなくなります。よく「ブラックリストに載る」と呼ばれるのがこの状態です。

ただ、返済できなくなって延滞すれば、同様に信用情報機関に情報が登録されるので、どのみち通る道と考えることもできます。

最も多くの人に影響するのが、スマートフォンを新機種に変える際に分割払いで購入することができなくなること、クレジットカードが使えなくなることでしょう。

クレジットカードについては、デビットカードの利用で代替できますので、不便ではありますが生活できなくなるほどのものではありません。スマートフォンも契約自体はできますので、新しいスマートフォンにする際には、お金を貯めて一括で購入することになります。

官報に掲載される

自己破産をすると氏名・住所が「官報」という国の広報誌に掲載されます。

官報とは、法律の公布や会社の決算公告など、公にすることが法律などで定められているものについて利用されます。
氏名や住所が載るので、自己破産をしたことが周囲に知られてしまうのではないかと思われる方も多いのですが、官報を見ている人はほぼいませんので、影響はまずありません。

職業に制限がかかる

一部の職業では公益の観点から、職業に就くのに資格を必要としたり、登録を必要としています。

その中でも、他人の資産に関わる職業については、自己破産手続き開始決定をすると職に就けないことがあります。
例えば、他人の不動産を預かる宅建士、金融資産に関与する保険募集人、建物の警備をする可能性がある警備員などです。

このような人が自己破産をする際には、一定期間職に就けなくなります。
尚、衛生管理の観点から資格制度としている、医師・薬剤師・看護師などの資格についてはこのような制限はありません。

自己破産の費用が発生

「お金がないから自己破産するのに」と思われる方も多いと思うのですが、自己破産には費用がかかります。

手続き自体にかかる費用は、印紙代・切手代・官報公告費用で、裁判所によって3万円程度が上限です。
しかし、厳格な手続きであり、金融実務上においても本人への督促を止めてくれる効果などあることから、通常は弁護士・司法書士に依頼して行われます。そのため、弁護士・司法書士に対する費用が発生し、その相場も20万円~となっています。

しかし、依頼をしてしまえば貸金業者への返済が不要になり、弁護士費用も分割にしてもらえるため、無理なく自己破産手続きに移行することができます。

自己破産になるとローンが組みにくくなる

自己破産手続きをすると、ローンが組みにくくなることを知っておきましょう。
原因は、上述した信用情報機関への情報登録(ブラックリスト)です。

消費者金融・銀行・信販会社はもちろん、住宅ローン・車検ローンなど、貸金業者が行う審査では、必ず信用情報の確認を行います。
債務整理の事実が登録されている場合はもちろん、この情報が消えた後も、普通ならクレジットカードを使った履歴くらいは残るのにも関わらず、信用情報・クレジットヒストリーが全くない、通称「スーパーホワイト」という状態になるので、ローンが組みにくくなります。

信用情報機関に5~10年登録される

信用情報機関に自己破産をした旨の登録がされる期間は、最長で10年は続くことになります。
任意整理をした場合や、延滞した場合には5年~7年程度です。

登録状況を確認できる

登録状況については、信用情報機関に問い合わせをすれば確認が可能です。

余談ですが、本人が亡くなった後であれば、相続人が借金の有無を確認するために、信用情報機関に問い合わせをすると状況が確認できます。

自己破産以外でローンを整理するには

職業制限があったり、自宅を維持したいことから自己破産は利用できない場合には、他の方法も検討しましょう。

オートローンやキャッシングの場合は、個人再生や任意整理を行う

オートローンを利用している場合には、自己破産・個人再生を利用すると、債務整理の対象になるので引き上げられてしまいます。このような場合には、任意整理でオートローン・住宅ローン以外の債務のみを債務整理の対象にして返済ができないかを検討しましょう。

また、借金の原因がほとんどキャッシングである場合には「個人再生」を行って、キャッシングのみを債務整理の対象とすれば住宅は維持することが可能です。

住宅ローンの場合は、任意売却を行う

住宅ローンの返済が厳しい場合には、「任意売却」も検討しましょう。

任意売却とは、住宅ローンの対象となっている不動産の売却を行うことで、競売に比べて債務を圧縮する・引っ越し費用を確保できるなどのメリットがあります。リースバックができる場合には、以後は賃貸物件として自宅に住み続けることも可能です。

自己破産を行う前に

借金返済ができなくなって自己破産を考えている場合、失敗をしたくないからと色々な情報を探して回ることが考えられます。

しかし、その人がどのような職業か、どれくらいの収入があるのか、どのような家族構成をしているのか、いくらの借金があるのかなどの事情によって解決策は様々です。

できるだけ早く専門家に相談をして、判断を仰ぐようにしましょう。

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