離婚したら住宅ローンの支払い義務は?トラブルにならないための解決策を紹介

離婚後の住宅ローンの支払い義務は、原則、住宅ローンの契約者(名義人)に生じます。
そのときの不動産市場価格によっては、売却することで住宅ローンを完済できる場合もあれば、売却しても住宅ローンが残る場合もあります。

住宅ローンが残ってしまった場合、離婚後の住宅ローンの支払いをどうするか、夫婦間でトラブルになるケースも多く見受けられます。

今回は、離婚後の住宅ローンの支払いに関してトラブルが起きないよう、解決策を紹介していきます。

目次

住宅ローンの支払い義務は誰にあるのか

本来、住宅ローンの支払い義務は、住宅ローンの契約者(名義人)にあります。
当然、離婚したからといって住宅ローン契約者の支払い義務がなくなるはずもなく、原則としては、そのまま住宅ローン契約者が離婚後も返済を続けていくことになります。

しかし、離婚においては、夫婦で暮らしていた住宅を離婚後に誰が使うのか、どのように財産分与を行うのかによって、離婚後の住宅ローンの支払いについても、誰がどのように支払っていくのか検討する必要性が出てきます。

【財産分与とは】
財産分与とは、「結婚生活の中で形成した財産の公平な分配」「離婚後の生活保障」「離婚原因に対する損害賠償」の性質があると解釈されていますが、一般的には「夫婦で築いた財産を夫婦で公平に分配する」という意味で使われる場合が多いです。財産分与には、離婚から2年という期間制限があります。

離婚に際して事前に確認しておくべき事項

離婚後の住宅ローンの支払いについては、夫婦間で大きな問題になると思います。
離婚の場合、離婚後の住宅ローン問題は複雑になってきますので、以下の内容を事前に確認しておきましょう。

  • 土地・建物の名義
  • 住宅ローンの契約内容(債務者が誰なのか)
  • 所有不動産の相場価格

住宅ローンの契約内容については、概ね以下の3パターンのどれかであることが多いです。

世帯主世帯主の配偶者
パターン1主債務者連帯保証人
パターン2連帯債務者連帯債務者
パターン3主債務者債務負担なし(保証会社の利用など)

離婚後の住宅ローンの支払いはどうなるのか

離婚後の住宅ローンの支払いは、「離婚後に住宅をどうするか」「住宅ローンの契約内容がどうなっているか」などによって対応も異なってきます。どのような対応策があるのか、ケース別にみていきましょう。

離婚後、住宅には夫婦のどちらも住まない

離婚後、住宅には夫婦のどちらも住まないという場合です。
この場合は、住宅を売却し、夫婦間で財産分与を行うことが一般的です。

アンダーローン(住宅ローン<売却金額)の場合

アンダーローン(売却によって住宅ローンが完済できる場合)であれば、不動産を売却して売却益を住宅ローン残債務の支払いに充てる方法がとれます。また、住宅ローンを全額返済した上で、さらにお金が余った場合には、夫婦間の話し合いによって財産分与をすることになります。

オーバーローン(住宅ローン>売却金額)の場合

オーバーローン(売却しても住宅ローンが残る場合)となる場合には、一般的な不動産売買での売却はできませんので、基本的には夫婦の両方、若しくはどちらかが離婚後も住宅ローンを完済するまで支払い続ける必要があります。
しかし、住宅にどちらも住まないのであれば、売却して少しでも債務を減らす対策をとることが望ましいです。
その場合は「任意売却」を検討します。

離婚後、住宅には夫または妻が住み続ける

離婚後に、夫婦のどちらか一方が住宅に住み続ける場合です。
この場合は、住宅ローンの契約内容(債務者が誰なのか)によって対応も変わってきます。

世帯主が主債務者で配偶者が連帯保証人になっている場合

例えば、世帯主が夫、世帯主の配偶者が妻で連帯保証人となっている場合は、双方の話し合いにより、離婚後は夫が住宅ローンの残額を支払う形で合意したとしても、金融機関に対しては妻の連帯保証人としての責任は継続されます。これは逆の場合でも同様です。連帯保証人とは、主債務者と同じ責任を負うため、返済の義務を免れるのは難しいのが現状です。

【連帯保証人を外れるのは難しい】
連帯保証契約とは、借入れ先の金融機関(債権者)との契約になります。したがって、債権者の同意が得られなければ連帯保証人から外れることは難しく、離婚や主債務者が死亡した場合でも、連帯保証人が返済の義務を免れることはできません。
自身の代わりとなる連帯保証人や追加の担保を提供したとしても、債権者次第となるので、必ず連帯保証人を外れることができるとは限りません。

世帯主と配偶者が共に連帯債務者になっている場合

夫婦が共に連帯債務者となるケースは、夫婦の収入を合算して住宅ローンを組み、住宅ローンの名義が夫婦共有名義となっているような場合です。連帯して債務を負っていることになるので、住宅ローンの支払い義務は住宅ローンが完済されるまでの間は夫婦双方にあります。どちらかが支払いを滞納させてしまうと、債権者が両者に一括返済を請求してくる場合があります。

世帯主が主債務者で配偶者に債務の負担がない場合(保証会社等を利用している場合)

例えば、保証会社などを利用して住宅ローンを世帯主の夫名義で契約し、不動産が夫名義になっている場合は、夫が家に住み続けるのであれば、夫がそのまま住宅ローンの返済を行えば問題はありません。
しかし、離婚により、住宅ローンの主債務者と実際に住宅に住む人が異なることになった場合には「住宅ローンの名義変更」や「住宅ローンの借り換え」を検討する必要が出てきます。

【住宅ローンの名義変更について】
住宅ローンの名義変更は、簡単にできるものではありません。
夫または妻の代わりとなる連帯債務者を提供し、その者が問題なく返済できると金融機関側が判断すれば、名義変更を認めてくれる場合があります。名義変更は、結局のところ金融機関次第ということになります。

【住宅ローンの借り換えについて】
離婚の際に、住宅ローンの借り換えを検討する方は多いです。
離婚後、夫婦のどちらかが単独で住宅ローンの支払いを行いたい場合には、住宅ローンの借り換えという方法もあります。
今まで共有名義で支払っていた住宅ローンの残額分を、単独名義の別ローンとして新たに結び直します。新規の住宅ローン契約となりますので、再度審査が行われ、審査が無事に通れば従前のローン契約からは解放されます。
しかし、住宅ローンの借り換えは、所定の費用と手続きに時間も手間もかかり、再度審査を受け直す必要があるため、ある程度の自己資金の準備も必要になります。

離婚による住宅ローントラブルの対処法

離婚後に、住宅ローンの支払いに関してトラブルとなるケースがあります。ここでは、離婚後のトラブルを避けるための対処法も確認しておきましょう。

正式な記録を残しておく

離婚協議において、夫婦間で取り決めした事項に関しては、正式な記録としてきちんと残しておくことをお勧めします。
その際に活用したいのが「公正証書」です。

「公正証書」とは、全国に約300ヶ所ある公証役場において、公証人が法律に従って作成する公文書のことをいいます。
公正証書は、きちんとした法的知識に基づき、法律上問題のない内容で作成されますので、強い証明力があるとされています。したがって、後々当事者間でトラブルが生じて裁判になった場合でも、公正証書で交わされた契約の有効性が否定されることは極めて少ないとされています。

任意売却を検討する

離婚後に、住宅ローンの支払い義務を夫婦のどちらが負うかに関わらず、離婚後の支払いが困難になりそうと感じている場合や、できるだけ身辺をスッキリさせた状態で離婚したいと考えている場合などは、「任意売却」によって住宅ローンの残債務を減らす方法を検討してみるとよいでしょう。

「任意売却」は、オーバーローン状態にある不動産を、債権者の合意を得て売却する不動産取引です。市場相場に近い価格で物件を売却することができ、住宅ローンの残債務を圧縮することが可能になります。

また、任意売却後に残ってしまった住宅ローンの債務についても、債権者と話し合い、債務者の収入に応じて月々返済可能な金額(例えば、5千円や1万円など)で支払っていくことができるようになります。さらに、任意売却では、リースバックを利用することで、そのまま住宅に住み続けるという方法を選択できる可能性があります。

住宅ローンも財産分与の対象になる

住宅ローンは、金融機関からの借金です。

借りる側からすると、それはマイナスの資産であり、離婚をする際にはマイナスの資産も夫婦で分担するという考えになります。離婚にあたっては、「住宅ローンも財産分与の対象になる」ということを理解(イメージ)しておく必要があります。

その上で、離婚後は不動産の名義を誰にするのか、あるいは不動産を売却するのか、住宅ローンの対処方法について夫婦間でしっかり協議して決めるようにしてください。

目次
閉じる