裁判所による競売とは?不動産競売の手続きや任意売却との違いを解説!

新型コロナウイルスの影響もあり、住宅ローンの支払いで悩んでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

住宅ローンを支払えなくなると、自宅が「競売」にかけられる可能性があります。
競売は裁判所を通す手続きですが、どのような流れで進められるのでしょうか。

今回は、不動産競売の手続きを中心に、任意売却との違いにも触れながら解説していきます。

目次

競売とは

「競売」とは、債権者の申立てにより不動産を差押えた上で、その不動産を売却し、売却代金から配当を受けることにより債権を回収する手続きのことです。

住宅ローンを組んでマイホームを購入する場合、通常は債権者(金融機関)が住宅に担保権(抵当権など)を設定します。
約定通り住宅ローンを支払っていれば問題ありませんが、支払いが滞るようになると、債権者は担保権を実行して(競売にかけて)住宅ローンを回収しようとします。

競売は、債権者がその旨を裁判所に申立てることにより手続きが開始されます。最終的に、住宅は他人の手に渡ることになるため、所有者はマイホームを手放さなければなりません。

競売の対象となる競売物件

「競売物件」とは、競売にかけられた不動産(物件)のことをいいます。

住宅ローンの滞納により競売を申立てられた場合は、マイホームが競売物件ということになりますが、競売の対象となる不動産は、マイホームだけに限りません。仕事で使用する事務所や店舗、企業が所有する持ちビル、土地なども競売の対象となります。

競売物件のメリット

買主側(落札者)から見れば、競売物件には「安価で不動産を購入できる」という大きなメリットがあります。

地域によって違いはありますが、競売物件は相場より安く見積もられることが一般的です。具体的には、相場の6~7割程度の価格で不動産を購入することができます。

このように、買主側にとってはメリットのある競売物件ですが、売主側にとっては何らメリットがありません。

競売物件のデメリット

売主側にとっては、何といっても相場より低い価格でしか売れないという大きなデメリットがあります。

売主からすれば、競売になってマイホームを手放す以上、せめて残りの住宅ローンぐらいは減らしたいと考えるのが自然でしょう。ですが、相場よりも低い価格でしか売れないため、多額の住宅ローンが残ってしまう可能性もあります。

不動産競売手続きの流れ

不動産競売は、債権者の申立てにより手続きが開始されます。
競売が申立てられてから、買主(落札者)に不動産が引き渡されるまでの流れは、以下のようになっています。

競売の申立て~競売手続開始決定

STEP
競売の申立て

債権者が裁判所(目的不動産の所在地を管轄する裁判所)に競売を申立てます。

STEP
不動産の差押え

申立てを受理した裁判所は、申立書や添付書類などを確認して問題がなければ、競売手続きを開始する旨および目的不動産を差押える旨を宣言します。

この宣言を「競売開始決定」といいます。

STEP
競売手続きの開始決定

競売開始決定が出ることにより、競売に向けての手続きが開始されます。

売却の準備

裁判所は、買受けを希望する人が適切に判断できるように、いわゆる「三点セット」を作成すると共に、目的不動産の売却基準価額(不動産の売却の基準となるべき価額)を決定します。

ここでいう「三点セット」とは、以下の3つの書類のことを指します。

現況調査報告書

不動産の現状を示す土地の現況地目や建物の種類・構造、不動産の占有者などが記載され、不動産の写真が添付されます。

評価書

目的不動産の評価額や周辺の環境などが記載され、不動産の図面が添付されます。

物件明細書

引き継がなければならない権利の有無などが記載されます。

売却の実施~不動産の引渡し

売却の準備が終わると、裁判所は、目的不動産を売却する日時と場所、その方法を決定します。
実務では、第1回目の売却方法は「期間入札」により実施されています。

「期間入札」とは、決められた期間内に入札する方法のことをいい、入札者は売却基準価額の2割に相当する額以上の金額を保証金として納付しなければなりません。

落札者が入札額から保証金額を控除した代金を納付すると、目的不動産が落札者に引き渡されます。

不動産競売と任意売却の違い

売主側にとって「不動産競売」は、あまりメリットのない手続きといえます。

不動産を売却するという点では「任意売却」も同じです。では、任意売却には何かメリットがあるのでしょうか。
「不動産競売」と「任意売却」を比較しながら見てみましょう。

売却価格

不動産競売では、落札者のリスクが考慮されるため、相場より低い価格(相場の6~7割程度)で不動産が売却されます。
売却価格が低くなる分、住宅ローンの残額も多く残ってしまいます。

これに対し、任意売却では相場に近い価格で不動産を売却することが可能です。
競売に比べ、住宅ローンの残額を減らすことができるため、その後の返済計画を立てやすくなります。

住宅ローンの返済と諸費用の捻出

不動産競売では、売却価格が相場を下回るため、住宅ローンがさほど減らない可能性があります。
予想以上に住宅ローンが残ってしまい、返済することが難しい場合には、債務整理を検討することも必要になってきます。

また、競売による売却代金はその全額が債務の返済に充当され、債務者は一切お金を受け取ることはできません。そのため、引っ越し等の費用は、別途自分で捻出する必要があります。

これに対し、任意売却では、売却価格が相場に近い価格となるため、住宅ローンを効果的に減らすことが可能です。
その結果、任意売却後に残った債務の返済計画も立てやすくなります。

また、任意売却では、売却代金から諸費用として引っ越し費用を受け取れるケースもあります。

不動産に住み続けることができる可能性

競売で不動産が落札された場合、それまで不動産を所有していた者は必ず立ち退かなければなりません。
不動産に居座るようなことをしてしまうと、強制執行により強制的に退去させられることになります。

これに対し、任意売却では所有権は失うことになるものの、リースバックにより売却後も同じ不動産に住み続けられる可能性があります。リースバックのほかにも不動産を親族に買い取ってもらうことで同じ不動産に住み続けられる可能性があります。

住宅ローンでお悩みの方は任意売却のご検討を

住宅ローンの滞納が続き、競売を申立てられてしまうと、原則として手続きを止めることはできません。
売主(元所有者)にとっては、競売になっても何のメリットもありません。それどころか、多額の住宅ローンが残ってしまい、意図せぬ事態を招く可能性があります。

住宅を売却する以上、債務者にとって重要となるのは、いかにして住宅ローンを減らすかということにあります。多額の住宅ローンが残ってしまうと、返済が難しい場合が多く、自己破産を含めた債務整理を検討せざるを得なくなる場合もあります。

その点、任意売却は競売に比べ住宅ローンを減らすことができるため、その後の返済や生活の見通しが立てやすくなります。また、競売に比べ売主にとって多くのメリットがあります。

住宅ローンの返済でお悩みの方は、手遅れになる前に「任意売却」を検討することが大切です

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