連帯保証人を解除するには?可能なケースを詳しく解説

連帯保証契約

離婚や経済的な理由で、連帯保証人を解除したい人もいらっしゃるかもしれません。
連帯保証人はこちらの都合で勝手に解除できるのか、それ以前に解除自体可能なのか、気になることは多いです。

現実問題として、連帯保証人を解除することはそう簡単なことではありません。
しかし、いくつかのケースに該当すると解除できることもあります。また、連帯保証契約が、無効や取消しになるケースもありますので、ご自身のケースが該当するかどうか確認してみましょう。

【執筆】

株式会社いちとり
代表取締役/代表相談員

林 達治

東証一部上場不動産会社、外資系金融機関、任意売却専門会社を経て、日本全国の不動産を対象とした任意売却を専門に扱う「株式会社いちとり」を設立。

勇気を出して相談してくださったご相談者様に最後まで寄り添ってサポートすることを信条に、現在も会社代表を務めながら代表相談員として、住宅ローンの悩みを抱える方々の問題解決のために精力的に活動している。

長年培ってきた任意売却に関する豊富な知識と経験を活かして、個人・法人問わず、年間500件以上の相談を受けており信頼も篤い。

目次

連帯保証契約とは

連帯保証契約とは、主債務者が債務の返済ができない状況になったときに、連帯して債務を返済する義務を保証する契約となります。

したがって、この連帯保証契約を結んだ「連帯保証人」は、主債務者が債務の返済ができなくなったときには、主債務者に代わって債務の返済をしなければなりません。つまり、主債務者とほぼ同じ立場に位置付けられ、非常に重い責任を負うことになります。

また、「連帯保証人」と類似した言葉で「保証人」という言葉があります。どちらも、保証をする人という意味においては同じですが、「連帯保証人」と「保証人」ではその役割において、立場が異なります。

それでは、「連帯保証人」と「保証人」の違いについて確認していきましょう。

保証人が有する権利

まず、「連帯」という言葉がつかない保証人は、「催告の抗弁権」「検索の抗弁権」「求償権」という権利を有します。それぞれ、どのような権利なのでしょうか。

催告の抗弁権

「催告の抗弁権」とは、
債権者が保証人に対して主債務者の代わりに返済するよう請求してきた場合、”まずは債務者に請求するように”と主張できる権利をいいます。

検索の抗弁権

「検索の抗弁権」とは、
主債務者に返済できる資力があるにも関わらず、返済せずに保証人に請求がきた場合、主債務者に財産があることを証明して請求を拒んだり、主債務者の財産を差押えるよう主張できる権利をいいます。

求償権

「求償権」とは、
保証人が代わりに弁済した債務を主債務者に返還するよう求めることができる権利をいいます。

上記3つの権利以外に、保証人には「分別の利益」が認められています。分別の利益とは、保証人の人数に応じて負担する債務額を減少させる(人数割りにできる)ことをいいます。

連帯保証人が有する権利と責任

次に、「連帯保証人」についてです。この「連帯」が付く保証人が有する権利は、主債務者が有する権利とほぼ同一です。

連帯保証人には、保証人が有する「催告の抗弁権」「検索の抗弁権」がなく、また「分別の利益」も認められていません。但し、「求償権」はあります。つまり、連帯保証人は保証人よりも、責任がさらに重くなるといえます。

連帯保証人は解除できるのか

主債務者が返済できなくなると、連帯保証人に請求がきます。
連帯保証人になるときは、まさか本当に自分が返済することになるとは思わなかったという人もいるかもしれません。

それでは、連帯保証人はどのような場合に解除できるのでしょうか。

基本的には、連帯保証人から外れることは難しいのが実情です。しかし、次に挙げる条件を満たせば解除が可能になる場合もあります。

物的担保を提供したとき

新しく物的担保(不動産)を提供すると、連帯保証人を解除できる可能性があります。

債権者からみると、いざという時に換金して貸したお金を回収できるだけの担保があれば問題ないため、提供する物的担保の価値が債務の額に見合うものであれば、解除に応じてくれるケースもあります。

しかし、主債務者が返済できなくなれば、連帯保証人が担保に入れた不動産は差押えられてしまうため、注意しなければなりません。

代わりの連帯保証人を見つけたとき

自分以外の誰かを代わりの連帯保証人として立てることで、自身の連帯保証契約を解除できる可能性があります。

しかし、代わりとなる連帯保証人に十分な返済能力がある場合に限られるため、誰でもいいというわけではありません。

債権者から同意が得られたとき

債権者が同意すれば、連帯保証人の解除は可能です。

主債務者の債務残高が少なく、債権者にとって大きな影響がないと判断されれば解除してもらえる場合もあります。しかし、現実的にはかなり難しい選択肢といえるでしょう。

ローンを借り換えるとき

当初の借入金利よりも低金利になっている場合は、別の金融機関に借り換えることで連帯保証人を解除することが可能となる場合があります。

離婚の際、配偶者を連帯保証人から外したいときなどに使われることがあります。

不動産を売却したとき

ローンの残債が不動産価格よりも下回っている(アンダーローン)場合には、不動産を売却して債務を完済できるため、連帯保証人は解除されます。

一方、不動産を売却しても売却額がローンの残債に満たない(オーバーローン)場合には、任意売却を検討してみる必要もあるでしょう。

相続放棄をしたとき

連帯保証人が亡くなり、連帯保証人の地位を相続しなければならないといった状況になるケースもあるでしょう。

このような場合には、相続放棄をすると連帯保証人にならずに済みます。その際には、相続の発生を知った日から3ヶ月以内に、相続放棄をする旨を家庭裁判所に申述しなければなりません。

連帯保証人が無効、取消しになるケース

連帯保証契約を結んだ後でも、無効や取り消しにできる場合があります。それは、どのようなときでしょうか。

勝手に連帯保証人にされてしまった場合

本人の同意なしに、勝手に連帯保証人欄に署名されていたり、実印を押されてしまったりした場合は無効となります。

但し、自動的に無効になるわけではなく、債権者に対して内容証明を送り返済する意思はないことと、この契約は無効であることを主張しなければなりません。

その後、訴訟になることもあるため、弁護士など法律の専門家に相談した上で行動することをお勧めします。

勘違いして連帯保証人になった場合

連帯保証契約を結ぶ際と結んだ後で、理解していた内容が違っていた、勘違いしていた(錯誤)という場合は解除できる可能性があります。

但し、錯誤したことに過失があると、解除は認められないため注意しましょう。

根保証契約を結んだ場合

根保証契約とは、将来発生する債務まで保証する契約のことをいいます。根保証契約の期間は原則として最長5年で、連帯保証人が通知しなければ自動的に更新されてしまいます。

したがって、根保証契約の連帯保証人を解除したい場合には、更新する意思がないことを必ず通知するようにしましょう。

未成年者が連帯保証人になった場合

未成年者が連帯保証契約を結んだ場合は、あとから取り消せます。

未成年者による契約であったことを、親権者か成年後の本人が内容証明によって通知しなければなりません。尚、次の場合は取り消すことができないため、注意しましょう。

結婚している未成年者
未成年者ではないと嘘をついていた
後から親権者が契約を承認した
成人してから5年が経過している

詐欺や脅迫を受けて契約を結んだ場合

本人が騙されたり脅されたりして、連帯保証契約に判を押したり署名した場合には、契約を解除できる可能性があります。

このようなケースでは、詐欺罪、脅迫罪、強要罪といった刑事事件に発展する可能性もあるため、弁護士に相談しながら解除に向けての準備を進めたほうがよいでしょう。

連帯保証人を解除できないケース

次に挙げるケースでは、連帯保証人を解除することができません。

連帯保証人として一度でも返済をした

主債務者が返済できなければ、連帯保証人に請求がいきます。このとき、たとえ少額だったとしても、一度でも返済してしまうと連帯保証契約は解除できなくなります。

なぜなら、返済することで自身が連帯保証人であることを認めたことになるからです。請求がきたからといって、すぐに支払うことはせず、まずは一度、内容や状況をしっかり確認したほうがよいでしょう。

離婚が理由

例えば、住宅ローンを組む際に配偶者を連帯保証人とするケースがよくあります。しかし、のちに離婚をすることになり、連帯保証人を解除したいと思われる場合もあるでしょう。

しかし、離婚するからという理由で、連帯保証人を解除することはできません。連帯保証人を解除したければ、上記で説明した方法の中から解決する必要があるでしょう。

連帯保証人本人の経済的な理由

連帯保証人になった当初は経済的な問題はなかったものの、後から厳しくなることもあるでしょう。

しかし、連帯保証人本人の経済状況が後々悪化したからといって、解除することはできません。

連帯保証人を解除したい場合には専門家に相談しましょう

一度連帯保証人になると、解除することはなかなか難しいのが現状です。しかし、解除が認められるケースもありますので、もしお悩みであれば、その時の状況に合った専門家に相談しましょう。

また、経済的な理由で連帯保証人の解除が必要な場合には、自宅の任意売却を検討してみるといった方法もあります。

任意売却では、債権者の合意を得て自宅を売却し、残った債務についても日常生活に支障のない範囲で返済していくことができるよう債権者と話し合うことが可能です。
もし、任意売却を検討されるのであれば、任意売却に特化した不動産会社に相談することをお勧めします。任意売却を専門に扱う不動産会社であれば、売却後のフォローもしっかり対応してもらえるので安心して任せられます。

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