税金滞納で差し押さえ!? 公売の仕組みと競売との違いを解説

 

突然、自宅が差し押さえられ、公売にかけられる――
税金を滞納すると、そのような事態が現実に起こり得ることをご存じですか?

固定資産税や住民税などの税金滞納が続くと、「公売(こうばい)」という手続きによって、自宅などの財産が強制的に処分されてしまうことがあります。
一見「競売」と似ていますが、公売には独自の仕組みと流れがあり、対応を誤ると取り返しがつかないケースもあります。

この記事では、公売の基本的な仕組み、競売との違い、そして差し押さえを回避するために知っておきたい対策について、わかりやすく解説していきます。

【執筆】

株式会社いちとり
代表取締役/代表相談員

林 達治

東証一部上場不動産会社、外資系金融機関、任意売却専門会社を経て、日本全国の不動産を対象とした任意売却を専門に扱う株式会社いちとりを東京都新宿区に設立。

勇気を出して相談してくださったご相談者様に最後まで寄り添ってサポートすることを信条に、現在も会社代表を務めながら代表相談員として、住宅ローンの悩みを抱える方々の問題解決のために精力的に活動している。

長年培ってきた任意売却に関する豊富な知識と経験を活かして、個人・法人問わず、年間500件以上の相談を受けており信頼も篤い。

目次

公売ってなに?

公売とは、税金を滞納したまま督促や催促に応じず放置している場合に、税務署や自治体などの行政機関が滞納者の財産を差し押さえ、オークション形式で売却する制度です。その売却代金は、滞納している税金の支払いに充てられます。
この行政機関によるオークション形式の売却手続きを「公売(こうばい)」といいます。

売却の対象となるのは不動産だけではありません。車、時計、貴金属、電化製品、絵画などの美術品も差し押さえや公売の対象になることがあります。
また、滞納している税金の種類によって、公売の実行者が異なる点にも注意が必要です。

【公売の実行者】

  • 国税(固定資産税など)→ 税務署や国税局
  • 地方税(住民税・健康保険料など)→ 市区町村などの自治体

つまり、税金の滞納が続くと、所有している財産が強制的に差し押さえられ、公売にかけられてしまう可能性があるということです。

公売の基本的な流れ

公売は、税金を滞納している人の財産を差し押さえたうえで売却し、その売却代金から滞納金を回収するための手続きです。
不動産などの財産を強制的に売却するという点では「競売」と似ていますが、公売は行政機関が実施するのに対し、競売は裁判所を通じて行われるなど、実行機関や手続きの流れには違いがあります。

ここでは、公売がどのように進められるのか、その基本的な流れをわかりやすくご紹介します。

滞納通知の送付

債権者である税務署や自治体などの行政機関は、まず滞納者に対して督促状や催告書を送付し、税金の納付を促します。
それでも納付が行われない場合には、財産の差し押さえ手続きへと移行します。

差し押さえの実施と評価額の算出

債権者は、公売に向けて不動産などの財産を差し押さえ、「見積価額」と呼ばれる評価額(=公売開始価格の目安)を算出します。

評価額の算出方法

評価は原則として、税務署や自治体の担当職員によって行われます。
ただし、物件の特性や規模によっては、不動産鑑定士などの専門家が関与する場合もあります。

評価の主な基準

  • 固定資産評価額
  • 路線価や公示地価
  • 周辺の取引事例
  • 物件の現況(老朽化の程度、立地条件など)

※なお、公売では「市場で実際に売れるであろう価格(時価)」が重視されるため、固定資産税評価額と一致しないこともあります。

不動産鑑定士が関与する主なケース

  • 高額な不動産の場合
  • 評価が難しい特殊物件
  • 第三者への説明責任や信頼性が特に求められる場合

※この場合、鑑定評価書の内容を参考にしつつ、最終的な見積価額は公売担当部門が決定します。
※「見積価額」が高すぎると入札が集まらず、公売が不成立となる可能性もあるため、現実的な売却可能価格の設定が重要です。

補足|公売価格は自由に変えられる?

一度決まった見積価額(公売開始価格)も、状況に応じて税務署や自治体の判断で再評価・変更されることがあります。たとえば、入札が集まらなかった場合や、公売が中止された場合には、後日価格が見直されることがあります。

公売公告の実施

評価額(見積価額)が決定されると、税務署や自治体は「公売公告」を行います。
これは、差し押さえた財産を「いつ・どこで・どのような条件で売却するのか」を公に知らせるもので、以下のような情報が掲載されます。

公売公告に含まれる情報

  • 公売対象の不動産や動産の詳細
  • 見積価額(最低売却価格)
  • 入札・開札の日時、場所、方法
  • 購入資格や参加に関する注意事項

※公告は自治体の掲示板、公式ウェブサイト、官報などで公開されます。誰でも閲覧でき、一般の購入希望者も参加が可能です。

入札・開札

公売は、原則として入札方式(せり売り、書面入札、インターネット入札など)で実施されます。

  • 入札者は、所定の方法に従って入札金額を提示します。
  • 入札期限後に開札され、最高額を提示した人が落札者となります。
  • 落札者がいない場合は「不落(ふらく)」として、再度公売が行われることもあります。

※近年では、インターネット入札を利用して公売に参加する人も増えてきています。

売却決定と代金納付

落札者が決定すると、売却決定通知書が交付されます。その後、指定の期日までに落札金額の全額を納付する必要があります。

納付が完了すると、財産の所有権が正式に移転されます。不動産の場合は、登記名義の変更を行うことで、法的にも落札者の所有となります。

Point!

この一連の流れを知っておくことで、

  • 滞納者として自分の財産が公売対象となる場合
  • 購入希望者として公売に参加する場合

いずれの立場でも、冷静で適切な判断ができるようになります。

競売とは何が違うの?

「公売」と「競売」は、どちらも滞納されたお金を回収するための手続きという点では共通しています。
しかし、実際にはいくつかの違いがあります。

規定されている法律

公売の手続きは「国税徴収法」に基づいて行われており、国税収入の確保を目的としています。
国税徴収法は、国税の滞納処分やその他の徴収手続きの執行などについて定められた法律で、地方税(住民税など)の徴収にも準用されています。

一方、競売の手続きは「民事執行法」に基づいて実施されます。
民事執行法では、次の4つの執行手続きを規定しています。

  1. 強制執行
  2. 担保権の実行としての競売
  3. 民法、商法その他の法律の規定による換価のための競売(形式的競売)
  4. 債務者の財産の開示

民事執行法の目的は、こうした手続を迅速に進めることで、債権者の権利を確実に実現し、買受人の法的地位を安定させることにあります。
このように、公売と競売では、それぞれ適用される法律が異なります。

申立債権者

申立債権者とは、公売や競売の手続きを申し立てる債権者のことです。

公売において申立債権者となるのは、国や地方自治体です。
具体的には、国税局・税務署・都道府県・市町村などが該当します。これは、税金の滞納に対して行政が強制的に財産を処分する手続きであるためです。

一方、競売における申立債権者は、主に民間の金融機関や個人です。
銀行・保証会社・クレジットカード会社、さらには貸付金の返済を求める個人や法人も対象になります。

手続き実行者

公売と競売では、実際に手続きを進める主体も異なります。

公売の場合は、税務署や市区町村などの行政機関が、滞納者の財産を直接差し押さえ、そのまま自分たちの手で公売手続きを進めます。
一方、競売では、債権者(銀行や保証会社など)が裁判所に申し立てを行い、以降の手続きは裁判所の主導で進められます。

このように、公売は「行政が直接行う手続き」、競売は「裁判所が介入して行う手続き」という点が大きな違いとなります。

情報の公開方法

【公売の場合】

【競売の場合】

※「公売」「競売」ともに、申立てられた物件情報は、インターネットの公式サイトなどを通じて広く一般に公開されます。

公売や競売を回避するためには

「公売」や「競売」は、債権者が債権を回収するための最終的な手段です。
滞納が続いた結果、不動産が差し押さえられてしまった場合でも、「任意売却」という方法によって、公売や競売を回避できる可能性があります。

任意売却とは、公売に至る前に本人の意思で不動産を売却し、滞納した税金や借金を整理する手続きです。最大の特徴は、強制的に執行される手続きではなく、自らの意志で進められるという点にあります。

この章では、任意売却の主なメリットや、手続きをスムーズに進めるために必要な専門家のサポートについて説明します。

任意売却のメリット

任意売却は、公売と比べて滞納者にとって多くのメリットがある手続きです。
特に、経済的・精神的な負担を軽減しながら滞納している税金を整理できる点が大きな特徴です。
以下に、主なメリットを挙げてみます。

  • 市場価格に近い金額で売却できる可能性が高い
    任意売却では、通常の不動産市場で買主を探すため、公売よりも高値で売却できる傾向があります。その結果、より多くの滞納税金を納付でき、完納や残債の圧縮に繋がる可能性があります。
  • 売却後の生活に配慮した対応が可能
    債権者との交渉によっては、引っ越し時期に猶予をもたせるなど、生活に配慮した柔軟な対応が期待できます。
    公売では、強制的な立ち退きが求められることもありますが、任意売却では計画的に次の生活に向けての準備を行うことができます。
  • 周囲に知られにくい
    任意売却は、原則として通常の不動産売買と同じ方法で進められるため、近隣住民や知人に滞納の事実が知られるリスクが低く、精神的な負担も軽減されます。ご家族の生活への影響も最小限に抑えられ、プライバシーが守られやすい手続きです。

このように、任意売却は単なる売却手段ではなく、生活の再建や再スタートを図るうえで、現実的かつ有効な選択肢として多くの方に利用されています。

任意売却に必要な専門家のサポート

任意売却を円滑に進めるには、専門的な知識と実務経験が不可欠です。
特に税金の滞納が関わるケースでは、一般的な不動産取引とは異なる手続きや債権者との調整が必要になるため、信頼できる専門家のサポートが成功の鍵を握ります。
以下のような専門家の関与が推奨されます。

  • 任意売却に特化した不動産会社
    税金滞納に関する債権者との交渉や、差し押さえの解除手続きなど、通常の不動産会社では対応が難しい業務が含まれます。任意売却に精通した実績のある業者を選ぶことで、スムーズに売却まで進めることができます。
  • 税理士や司法書士などの士業
    税務署との交渉や登記関連の手続き、売却後の残債処理などについて、それぞれの専門分野から適切なアドバイスを受けられます。これにより、法的トラブルや手続きミスを回避しやすくなります。
  • 弁護士(必要に応じて)
    滞納額が大きい場合や、法的な紛争に発展する可能性がある場合には、弁護士の関与が安心につながります。債権者との交渉や法的整理の方針についても、専門的な判断を仰ぐことができます。
Point!

任意売却は、多くの関係者との調整が必要となる複雑な手続きです。早い段階で専門家に相談することで、不安を減らしながら、より有利な条件で問題解決を図ることが可能になります。

まとめ|税金は完納するまで督促が続きます。早めに対策を!

固定資産税など税金の滞納を放置すると、財産の差し押さえや公売といった深刻な事態に発展する恐れがあります。こうしたリスクを避けるためにも、できるだけ早い段階で適切な対策を講じることが重要です。

このような状況では、「任意売却」を活用することで自己破産を回避しつつ、不動産を市場価格に近い条件で売却できる可能性があります。それにより、生活の立て直しや新たなスタートを切るための道筋が見えてきます。

まずは、信頼できる専門家に相談し、ご自身の状況に合った最善の解決策を一緒に探してみましょう。ご自身とご家族の生活を守るためにも、早めの行動が何よりの対策となります。

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