残債とは?調べ方や返済できなくなった場合の対応方法について
借金や様々なローンに関する情報を調べていると、その過程でよく意味が分からない用語が出てくることもあるのではないでしょうか。
今回のコラムでは、お金にまつわる話の中で出てくるケースの多い、「残債(ざんさい)」という言葉について、その意味や調べ方、残債の返済ができなくなったときの対応方法などについてお伝えしたいと思います。
株式会社いちとり
代表取締役/代表相談員
林 達治
東証一部上場不動産会社、外資系金融機関、任意売却専門会社を経て、日本全国の不動産を対象とした任意売却を専門に扱う「株式会社いちとり」を設立。
勇気を出して相談してくださったご相談者様に最後まで寄り添ってサポートすることを信条に、現在も会社代表を務めながら代表相談員として、住宅ローンの悩みを抱える方々の問題解決のために精力的に活動している。
長年培ってきた任意売却に関する豊富な知識と経験を活かして、個人・法人問わず、年間500件以上の相談を受けており信頼も篤い。
残債(ざんさい)とは
残債(ざんさい)とは、「残債務(ざんさいむ)」を略した言葉で、今ある借入金(借金)について、まだ返済が残っている残金のことを指す用語です。
例えば、100万円のお金を銀行から借りて、月々5万円ずつ分割で返済していくケースでみてみましょう。
1回目の返済時には「返済5万円、残債95万円」、2回目の返済時には「返済5万円、残債90万円」となります。このように、残債は返済した金額に応じて減っていきます。そして、借りていた100万円を全額返済すると残債は0円となり、この状態のことを「完済(かんさい)」といいます。
残債の調べ方
借入れをしている人が、今現在どれくらいの残債が残っているのか調べたい場合、いくつか方法があります。
それでは、残債がいくら残っているのかを調べる方法について確認していきましょう。
貸金業者からの借入金の残債確認方法
貸金業者から借入れしている分の残債を調べる方法は、返済時に必ず渡される明細書に記載されています。その明細書で確認します。
しかし、明細書を紛失してしまったり、破棄してしまって手元にない場合には、電話や店頭で問い合わせを行えば残債額を教えてもらえます。但し、現在は個人情報の取扱いが非常に厳しくなってきていますので、電話や店頭での問い合わせには本人確認を求められる可能性があります。まずは一度、借入れをしている貸金業者に確認してみてください。
また、会社によっては、インターネットで確認できるシステムを導入しているところもあります。その場合は、パソコンやスマートフォンを利用して確認することも可能です。
クレジットカードの残債確認方法
次に、クレジットカードのように、毎月自身の指定した銀行口座より引き落としされるタイプの借入れの場合には、カード会社から郵送されてくる明細書によって確認できます。
しかし、最近ではペーパーレスの推奨により、パソコンやスマホアプリなどを利用して、カード会員ページから残債額を確認するのが一般的になってきています。
個人信用情報の開示請求による確認方法
他にも、個人信用情報の開示請求によって確認をとる方法があります。
貸金業者からの借入れやクレジットカードの利用、携帯電話の分割購入などは、「個人信用情報(※1)」という情報を利用して取引きが行われます。
(※1)個人信用情報とは
個人信用情報とは、個人の金銭にかかる信用状態を客観的にみる情報のことです。新規でクレジットカードを作るときや金銭消費貸借契約・ローン契約を締結する場合などに、私たちが申告する内容というと分かりやすいかもしれません。一般的に登録される項目を以下に示します。
【信用情報機関に登録されている信用情報の主な項目】
- 氏名、生年月日、住所、電話番号など本人を識別するための項目
- 契約年月日、契約商品、契約金額、支払回数、入金履歴、残債額、延滞情報などの取引の事実に関する項目
- 申込みの内容に関する事項
- 申込みの時に本人が申告した事項
など。
クレジットカードの新規発行時や各種ローンを契約する際などには、カード会社やローン会社が利用者本人に支払能力があるかどうか、ローン契約の利用過多がないかどうかなど、個人信用情報を調査した上で審査を行います。
この「個人信用情報」は、信用情報を取扱う情報機関に情報が登録され、情報は信用情報機関が所有しています。
そこで、情報が登録されている信用情報機関に本人であることを証明し、「個人信用情報」を開示してもらうことで、現時点の自身の残債額を確認することが可能になります。
また現在、信用情報機関は以下の3社が該当します。
上記3社の信用情報機関であれば、どこに開示請求をしても構いません。また、開示の方法は来社・郵送どちらでも可能になっています。(注1)
(注1)
新型コロナウイルス感染拡大防止対策により、開示方法に変更が生じている可能性があります。開示請求を行いたいと思われている方は、上記各社ホームページでご確認いただくか、信用情報機関へお問い合わせの上、ご対応ください。
亡くなった人の残債確認方法
続いて、亡くなった人の残債については、どのように確認したらよいのでしょうか。
亡くなった人の残債については、相続人が信用情報機関に開示請求することで調べることが可能です。
前述した信用情報機関3社は全て、本人が亡くなった場合に法定相続人に対する残債の開示に応じています。
貸金業者以外からの借入れの残債確認方法
最後に、貸金業者以外からの借入れについてはどうでしょうか。
その場合は、借入れの内容ごとに確認する必要があります。
例えば、会社からの借入れや、親族・知人などからの借入れに対する残債は、本人に直接確認するのが妥当です。また、買掛金などについては、帳簿を確認するなどして計算することができるでしょう。
残債を減らすメリットと方法
それでは、次に借入金の残債を減らすメリットと、残債を減らす方法について確認していきましょう。
残債を減らすメリット
借入金などの債務については、毎月決められた返済を続けていけば自然と残債は減ります。
しかし、金融機関や貸金業者などからの借入れには必ず利息がつきますし、クレジットカードにおいても分割払いやリボ払いを利用すると利息はつきます。利息は、元金(=残債)の額に応じて計算されることになりますので、元金(=残債)が早く減ればそれだけ利息の負担も軽くなります。
住宅ローンにおいて繰上げ返済をしていく方法を採るのは、このような理由があるからです。
残債を減らす方法
残債を減らす方法としては、当然のことながら「返済をする」しかありません。
そして、早く残債をなくしたいと思うのであれば、月々決められた返済額よりも多くの額を返済するということに尽き、その方法は、「収入を増やす」か「支出を減らす」の二択です。
収入を増やす
収入を増やす方法として考えられるものとして、
- 仕事を始める
- 勤務日数や勤務時間、残業を増やす
- (昇給などで)基本給や時給単価を上げる
- 会社から補助や手当の支給を受ける
- 資産を運用する
- 副業する
- 行政サービスなどを利用する(手当や給付金なども含む)
などが挙げられます。
専業主婦だった妻がパートに出るなどして、夫婦共働きになれば世帯収入が上がりますし、最近では副業や投資などによる資産運用もブームとなっています。また、会社からの補助や手当、行政サービスの利用や給付金の受給などを活用することで収入UPも見込めます。様々な方法で収入が上がるようになれば、プラスになった分を返済にまわすことによって、早めに債務を減らしていくことができるようになります。
支出を減らす
支出を減らす方法としては、負担が大きいと思われる固定費から減らしていくのが良いとされています。一般的に、どのような費用が挙げられるかというと、
- 家賃
- 保険料
- 水道光熱費
- 携帯電話料金
- 車やバイクなどの維持費
- クレジットや各種ローン
などです。
これらの支出は毎月必ずかかる固定費です。無駄に多く支払っているものはないか固定費の見直しをすることで、月々の支出を抑えることができます。支出を抑えて浮いたお金を返済にまわせば債務を減らすことが可能になります。
そして、現在、生活にかかる支払いを常にクレジットカードやICなどで行っているというような方は、支払い方法をクレジットカードから現金払いに変えてみると、実際の支出が現実的に捉えられるかもしれません。とにかく、自身に月々どのくらいの支出があるのかを把握するということはとても大切です。
また、家計の見直しについては、ファイナンシャルプランナー(FP)と呼ばれるお金に関する専門職の方が相談に乗ってくれますので、家計をきちんと見直したいと思われる場合には、お金の専門家に相談されてみることもお勧めします。
残債の返済が難しくなったら
色々頑張ってみたけれど、どうしても残債の返済が難しい状況になってしまったときには、借金自体をどうにかするための「債務整理」を検討することになります。
債務整理とは
借金の返済ができなくなり、残債をどうしたらよいのかと困ったときに考えるのが「債務整理」です。
債務整理には、主に次の3つの方法があります。
任意整理(支払いは残債の元金のみ)
貸金業者から借入れをしている場合、返済する際には利息も合わせて返済する必要があり、滞納するとさらに遅延損害金もプラスして返済しなければなりません。
「任意整理」は、残債の元金部分のみを分割返済することで借金を整理する手続きです。
任意整理によって、すでに支払期が来ている返済金の利息、将来発生する利息、遅延損害金の支払いはなくなりますので、月々の支払いが楽になります。
しかし、任意整理は、元金を返済することが前提となる手続きのため、元金の支払い自体ができない場合には利用することができません。
自己破産(借金の免責)
残債が全く返済できない、支払不能という状態になっている場合には、「自己破産」という債務整理手続きを利用することができます。
自己破産をすると、税金や養育費などといった一部の債務を除く全ての債務を免責してくれますので、自己破産が認められれば以後、返済をする必要がなくなります。
但し、強力な債務整理の手段ですので、不利益になることも多々あり、住宅を所有している場合には、自宅の所有権を失うことは避けられないという点に注意が必要です。
個人再生(借金の元金を減額)
任意整理では支払いをすることができなくても、元金自体を大幅に減らしてもらえれば返済できるという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
このようなケースでは「個人再生」を利用すれば、住宅ローンなどはそのまま支払いを継続して自宅を維持することが可能になります。但し、住宅ローンの返済自体が遅れているような場合には、その滞納分は支払う必要があり、滞納が6ヶ月を超えているような場合には個人再生を利用することはできません。
また、収入が下がって住宅ローンの支払い自体が難しくなっている場合には、収入の範囲で支払いができる家に引っ越しをすることが適切であるといえます。このような場合には、個人再生をするよりも、後述する「任意売却」による方法で対処するほうが良い結果に落ち着くでしょう。
任意売却とは
お悩みの債務が住宅ローンの場合には、「任意売却」という方法で債務を減らすことができます。
では、任意売却についても確認しておきましょう。
債務の返済ができなくなったときに、必ず考えなければならない大切な問題が住居です。
特に住宅ローンで自宅を購入している場合、その対応次第では強制的に競売が行われて自宅を失い、退去を余儀なくされてしまうことがあります。そのようなことにならないよう、より有利な状況で転居ができたり、場合によっては所有権を失っても住み続けることを可能にするのが任意売却です。
任意売却の基本的な仕組み
住宅ローンで住宅を購入すると、返済ができなくなったときにその住宅を売却して債権の回収ができるよう「抵当権」という権利が債権者(お金を貸した金融機関など)によって設定されます。そして、実際に住宅ローンの返済ができなくなったときには、債権者は抵当権の権利を実行して住宅を競売にかけ、売却代金をもって残債に充当します。
競売での売却は、「内覧ができない」「占有者がいる可能性がある」などの理由で、市場相場の6~7割程度の価格で売却されることが多く、残債に充当できる金額も少なくなります。その点、任意売却であれば市場相場に近い価格での売却が可能になりますので、競売で売却するよりも残債を圧縮させることができます。また、引越し費用なども工面できる可能性があり、債務者にとってはメリットが多い手続きとなります。
住宅ローンが残っている場合、自宅をご自身で売却しようと思っても、売却金額で残債を完済することができなければ、売却自体することができません。しかし、任意売却ではそれが可能です。売却価格が住宅ローンの残債に満たない場合には、一度、任意売却による問題解決を検討されることをお勧めします。
リースバックによって住み続けることも可能
任意売却による解決手段のひとつとして、「リースバック」という方法があります。
リースバックとは、自宅を信頼のおける第三者(子供や親族、不動産投資家など)に購入してもらい、購入者に毎月賃料を支払ってそのまま住み続けるという方法です。リースバックによって、引越しをすることなく、現在の自宅に住み続けることが可能となります。住宅ローンの滞納があり、任意整理や個人再生の利用ができない場合には、住み続けられる可能性があるリースバックを検討してもよいでしょう。
任意売却コラム
任意売却とは何か。任意売却の専門家が分かりやすく解説!
まとめ
今回は、残債の意味や調べ方、残債を減らす方法、支払いができなくなった場合の対応方法などについてお伝えしました。
住宅ローンやクレジットの支払いなど、毎月の返済が厳しい状況にある場合は、できるだけ早い段階で専門家に相談しましょう。相談が早ければ早いほど、解決に向けての選択肢が広がります。
株式会社いちとりは、任意売却を専門に扱う不動産会社です。
任意売却に関する知識や実績も豊富にありますので、ご相談者様の希望に沿った解決に向け、最善・最良の方法をご提案させていただきます。どのようなお悩みでも、まずは一度、いちとりにお問い合わせください。