オーバーローンとは?住宅ローンが払えない場合に何を知っておくべき?

借金の返済が難しくなっている時に様々なことをインターネットで調べることがありますが、その際に難しい用語がたくさんあって理解が追い付かないことも多いのではないのでしょうか?

その中の一つとして、住宅ローンがある場合に「オーバーローン」という用語があるのですが、どのような意味なのでしょうか。また、アンダーローンとの違いは何か。

今回のコラムでは、オーバーローンとは何かということを中心にお伝えします。

目次

オーバーローンとは

オーバーローンとはどのようなものか確認しましょう。
オーバーローンは法律用語ではなく、ローンに関する一般用語です。使い方としては次の2種類があります。

オーバーローン①:残債務の額が担保物件の価値(売却額)よりも多い状態

オーバーローンという用語の使い方の一つ目は、残債務の額が担保物件の価値(売却額)よりも多い状態です。

住宅ローンは、購入対象となる住宅に担保である抵当権を付けてお金を借入れるものです。もし返済がされない場合には、住宅ローン債権者は住宅を競売して債権に充当します。

債務の額=担保の額ではないので、基本的には債務額の方が多いか、住宅の売却価値の方が高いかどちらかになります。オーバーローンは、債務額のほうが多い場合です。

つまり、住宅ローンの残債務が1,000万円で、住宅の価値(売却額)が500万円であるような場合がオーバーローンです。

オーバーローンの反対「アンダーローン」

オーバーローンの対義語になるのが「アンダーローン」です。住宅ローンの残債務額よりも住宅の売却価値の方が高い状態をいいます。
つまり、残債務が500万円で、住宅の売却価値が1,000万円となる場合がアンダーローンです。

アンダーローンとオーバーローンでは何が違う?

アンダーローンとオーバーローンでは、何が違うのでしょうか。

アンダーローンは、担保となる住宅価値の方が高い状態なので、売却すると現金が残ることになります。
一方、オーバーローンは、債務の方が多い状態なので、売却や競売をしてもまだ債務が残ることになります。そのため、売却するのであれば、過度に安い金額で売却しないように債権者の意思を確認しながら行う必要があります。(このような売却のことを任意売却と呼んでいます)

また、債務整理の方法のひとつである個人再生をするときに、アンダーローンの場合には差額が資産と認定され、返済する金額が増える可能性があります。

オーバーローン②:目的物の価格以上の借入れをする方法

オーバーローンという言葉のもう一つの使い方は、住宅ローンなどの特定の目的物を購入する場合に、どの程度の金額の借入れをするかということです。

目的物の金額をそのまま借入れることを「フルローン」と呼ぶのに対して、目的物を購入する際にかかる諸費用などの金額も併せて借入れをする結果、目的物の金額を超える(オーバーする)額の借入れをすることをオーバーローンと呼んでいます。
この呼び方は、住宅ローンや自動車ローンなどのお金を借りる際に問題となる用語なので、お金の返済に困ったときの問題とは異なります。

本コラムでは、オーバーローン①について説明していきます

オーバーローンが発生するパターン

では、オーバーローンはどのような場合に発生するのでしょうか。

ローンの金額が住宅価値を上回る場合

まず、ローンの金額が住宅価値を上回る場合です。

例えば、

住宅の価額が1,900万円+購入にかかる諸費用が100万円=合計2,000万円

の借入れをした場合に、借入れ直後に住宅の価格がそのまま1,900万円である場合には、債務は2,000万円となります。
それに対し、担保になる住宅の価値は1,900万円なので、オーバーローンということになります。

目的物の価値が下がった場合

次に、目的物の価値が下がった場合です。住宅ローンで借入れをして住宅を購入した場合はこのパターンです。

例えば、

住宅を新築するのに2,000万円かかると計算され、2,000万円の借入れをした

としましょう。しかし、建てた直後であってもそのままの2,000万円で売れるわけではありません。相当流通性の高い中古のマンションを購入したような場合でなければ、通常は購入した段階から借入れした金額を下回る価値しかつかず、オーバーローンとなります。

長期に渡って返済して、債務が減った結果アンダーローンに転じるまでは、基本的にはオーバーローンであるといえます。

オーバーローンになっている住宅ローンの返済ができない場合にはどうなるか

では、オーバーローン状態の住宅ローンの返済ができない場合には、どうなるのでしょうか。

延滞すると督促が始まる

まず、延滞すると督促が始まります。
最初の1ヶ月くらいは電話での督促が殆どですが、2ヶ月くらい経つと自宅に書面が送られてくるようになります。

住宅ローンは、目的物を購入するための金額を最初に全額借入れます。
そして、2,000万円の借入れをしても約束通りに返済している間は、支払い期限が来た分のみを支払えば良いことになっています。
また万が一、残りの債務を全額返せと住宅ローン債権者が主張してきたとしても、借入れをしている側としては「まだ期限が来ていないので返しません」と主張することが可能です。このように、債務者側に有利な利益のことを「期限の利益」と呼んでいます。

この「期限の利益」ですが、契約上は、延滞などの債務不履行があって信用不安になっている場合に、債権者が通知すれば期限の利益を喪失させることができるようになっています。債権者側としては、期限の利益を喪失させると、残債務の一括請求をすることができるようになります。

「ただでさえ毎月の支払いが滞っている状態なのに、全額の支払いを請求されても支払えるわけがない」と思われる方も多いと思いますが、この期限の利益の喪失は、後述の保証会社による「代位弁済」「抵当権の実行」に不可欠な手続きとなります。

期限の利益の喪失に関する通知は書面で送られてきます。この通知が届くようになる頃には、通常の督促も頻繁に行われているでしょうから、人によっては全く中身を見ない方もいるでしょう。同じような見た目の通知で送られてきますので、知らない間に期限の利益を喪失しているという状態になっているかもしれません。

保証会社の代位弁済

住宅ローン債権者は、住宅ローン債権について、通常はグループ会社の保証会社に保証をさせています。
そして、債務者が支払いをしない場合には、保証会社が住宅ローン債権者に残債務の全額の支払いを行います。保証会社は、債務者の代わりに返済を行うことで、住宅ローン債権について債務者に請求できる地位を受け継ぐことができます。(代位弁済)

代位弁済は、民法に規定されているものですが、保証会社に債権を移すことで、保証会社が回収業務を行うことができるようにするのが目的です。

不動産を競売にかけて回収する

代位弁済によって債権者となった保証会社は、回収のために住宅についている抵当権を実施して住宅を競売にかけます。
競売代金は債権に充てられ、それでもまだ回収しきれない場合には、一般債権者として回収をすることになります。

例えば、
債務が1,000万円、競売で500万円で競落された場合には、債権者はまず500万円全額を債権の返済に充当します。すると、債務は500万円に減るので、残りの500万円は抵当権のついていない一般債権者として回収を行います。

オーバーローンとなっている住宅ローンの返済が難しいときの対応

オーバーローンとなっている住宅ローンの返済が難しいときには、どのような対応方法があるのでしょうか。

早期であれば任意整理を

債務整理の一つの方法である、任意整理を検討しましょう。

任意整理は、借金について債権者と話し合いをして、返済の負担を軽くしてもらうものです。
住宅ローン債権者と話し合いをすると、住宅ローン債権者は競売の手続きに移行することが考えられますので、ここでは住宅ローン債権者以外の債権者と話し合いをして支払いを軽くしてもらいます。

任意整理によって、住宅ローンの支払いを楽にすることで、債務の完済を目指すことになります。
話し合いをする債権者には、少なくとも元金を36回(3年)以上の分割で支払う必要があります。この支払いができる内であれば任意整理が可能である場合もあります。

個人再生の検討

任意整理をして支払いができない場合には、法的整理を検討することになります。
基本的には自己破産を検討するわけですが、住宅ローン債権者も自己破産手続きでは平等に扱われるので、住宅が競売にかかることになります。そこで、個人再生の利用を検討しましょう。

個人再生では、住宅ローン以外の債務を減らして分割弁済とし、住宅ローンは今まで通り支払うことが可能です。そのため、住宅を維持することができます。
但し、6ヶ月以上住宅ローンを滞納していると、住宅ローンを支払い続ける形での個人再生ができなくなります。(個人再生の申立てには時間がかかるので、事実上4ヶ月くらいで利用は難しくなるといえるでしょう)

また、借金などの債務を減額してもらえるとはいえ、返済をすることが前提の手続きですので、返済ができない場合には利用できません。

住宅を売却する場合には任意売却が必要になる

住宅の維持を諦める場合には、売却をすることになります。
そのまま競売に任せてしまってもよいのですが、任意売却という方法もありますので検討してみてください。

競売で売却をすると、市場価格の7割以下の値段に下がってしまうことから、オーバーローンの場合には競売にすると借金の減る額が少なくなってしまいます。
債権者としては、市場価格に近い価格で売って欲しいのですが、どのみち所有権を失って自宅を出ていかなければならない債務者としては、正直どっちでもいいという状態になります。そのため、場合によっては債務者に引っ越し代などの新しい生活を始めるための資金を工面することで、市場価格に近い金額で売ってもらおうというのが任意売却です。

また、任意売却では、投資家や親族に住宅を買い取ってもらい、その人から住宅を賃貸することで住み続けることができるリースバックも状況によっては可能です。

まとめ

今回のコラムでは、オーバーローンとはどのようなものか、オーバーローンとなっている住宅ローンが支払えない場合にどうなるか、その対応方法についてお伝えしました。

住宅ローンが支払えなくなった場合でも、状況次第では自宅を維持できることもあるので、弁護士・司法書士などの専門家や、任意売却の専門家に相談をしてみてください。

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