税金は免除されない!?税金未納が続いたらどうなるの?

各種さまざまなローンの返済や、国税・地方税といった税金の支払いが出来なくなってしまった場合、最終的には債務整理などによって身辺を一度整理することを検討される方は多いと思います。

債務整理にも幾つか種類がありますが、個人の方の場合、一般的に債務整理の最終手段となるのは「自己破産」です。「自己破産をすれば全ての借金がなくなるので、もう返済をしなくてよい」という認識を持たれている方、果たして本当にそうでしょうか。

確かに、通常のローンや借入れであれば、自己破産をして免責を認めてもらうことで、その後の返済義務はなくなります。しかし、ここで注意が必要なのが「借金」と「税金」は全くの別物であるということです。この点は、間違えずにしっかり理解してください。

では、「税金」とは一体、どのようなものなのか?
本コラムでは、みなさん意外と知らない「税金」の特性についてお話をさせていただきたいと思います。

【執筆】

株式会社いちとり
代表取締役/代表相談員

林 達治

東証一部上場不動産会社、外資系金融機関、任意売却専門会社を経て、日本全国の不動産を対象とした任意売却を専門に扱う株式会社いちとりを設立。

勇気を出して相談してくださったご相談者様に最後まで寄り添ってサポートすることを信条に、現在も会社代表を務めながら代表相談員として、住宅ローンの悩みを抱える方々の問題解決のために精力的に活動している。

長年培ってきた任意売却に関する豊富な知識と経験を活かして、個人・法人問わず、年間500件以上の相談を受けており信頼も篤い。

目次

税金の特性①:支払いは免除されることはない

税金は、国家や地方自治を運営していくために必要なお金です。国民である以上、定められた期限内に支払う義務が私たち納税義務者にはあります。

また、税金はローンなどと違って借入金ではないため、仮に自己破産をしたとしても、その支払い義務は免除されることはなく、滞納金の全額を完納するまで国や地方自治体からの督促は続きます。この督促は、引越しをして住所変更を行っても戸籍謄本などを確認すれば一目瞭然、当たり前ですが転送届を出していたら転送先に送られてきます。逆に引越しをしても、住所変更しなければ戸籍謄本などをチェックされても転居先は分かりませんが、住民票や国民健康保険などが使用できなくなりますので、相当不便な生活を強いられることになるでしょう。

税金の滞納を続けていると、後々、大変な事態に陥ってしまう可能性が出てきますので、まずは少額ずつでも可能な限り支払いは続けてください。まとめて支払いができない場合には、役所や税務署などへ赴き、事情を説明すれば相談にのってくれます。一番良くないことは、相談や連絡もせずに滞納を続けていることですので、ひとまず窓口へ相談に行くことをお勧めいたします。

税金の特性②:滞納するとさらに延滞税が上乗せされる

税金には、ローンなどの借入金(借金)と違って減免措置(免除の制度)がないことは前述いたしました。

指定された納付期限までに納付しなかった場合には、さらにそこへ延滞税が課せられ、本来支払うべき税金に上乗せされて請求されるようになります。

ところで、この延滞税は一体どれくらいかかると思われますか?現状、税金の滞納金にかかる延滞税の税率は二段階で変化します。

【第一段階】
法定納期限(当初の納付期限)の翌日から二ヶ月を経過する日まで

【第二段階】
法定納期限(当初の納付期限)の翌日から二ヶ月を経過する日以後

第二段階に移行しますと、第一段階よりさらに税率がUPしますので注意が必要です!

そこで、肝心の税率についてですが、令和3年1月1日以後においては、【第一段階】では年「7.3%」と「延滞税特例基準割合+1%」のいずれか低い割合が適用され、【第二段階】では年「14.6%」と「延滞税特例基準割合+7.3%」のいずれか低い割合が適用されることとなっています。

また、ここでいう延滞税特例基準割合とは、各年の前々年の9月から前年の8月までの各月における銀行の新規の短期貸出約定平均金利の合計を12で除して得た割合として各年の前年の11月30日までに財務大臣が告示する割合に、年1%の割合を加算した割合をいいます。

ちなみに、令和6年度(1月1日~12月31日まで)の延滞税率は、【第一段階】2.4%、【第二段階】8.7%です。
この延滞税率は、毎年見直しが行われて更新されますので、延滞税に関する最新の情報は国税庁ホームページにてご確認ください。(注:外部サイトに移行します)

このように、税金は滞納が長引けば長引くほど、高額な延滞税が加算されるようになっていきます。

税金の特性③:滞納が続くといずれ公売が実行される

公売(こうばい)とは、納税義務者が税金などを滞納し続けて納付をしない場合に、国税局や税務署といった行政機関が滞納者の財産を差押え、その財産を入札等の方法を使って売却し、金銭に換えることで滞納している税金を回収する手続のことです。つまり、簡単にいうと「差押えた滞納者の財産を国が売却する」ということです。

公売への参加資格、公売される財産の種類、公売の方法などは概ね次の通りです。

公売への参加資格

公売は、原則として誰でも参加可能ですが、以下に該当する者は参加することができません。また、農地のように一定の資格が必要となる場合もあります。

  • 滞納者(滞納者は、自己の財産を買受けることができません)
  • 国税庁、国税局、税務署の職員
  • 公売への参加を制限されている者

公売される財産の種類

公売の対象となる財産には、次のようなものが挙げられます。一般市場において換金可能なものは、概ね公売の対象になると思ってよいでしょう。

  • 土地や建物などの不動産
  • 絵画、宝石、時計などの動産
  • 自動車、ゴルフ会員権など

公売の方法

公売には、次の2つの方法があります。

  • 入札
  • 競り売り

入札とは、入札の参加者の中で、最も高い金額を入札した者に売却する方法です。入札には「期日入札」と「期間入札」があり、期日入札は決められた公売日に公売会場で提出された入札書をその日に開札する、期間入札は定められた期間内に直接または郵送等で提出された入札書を別の日に開札するという違いがあります。

また、競り売りとは、購入希望者が順次購入希望額を提示していき、最高金額となった申込者に売却する方法で、民間のオークションサイトにおいても実施されている方法です。

税金を滞納し続けるとどうなるか

ご自宅など不動産を所有されている方が、税金の納付を督促されているにも関わらず滞納し続けていると、その所有不動産に差押えが入ります。その後も何も対応せずに放置し続けた場合、所有不動産の公売手続きが開始されます。

同じような手続きに「不動産競売」がありますが、不動産競売の場合は、まずは債権者(金融機関、保証会社、管理組合など)が対象不動産を差押え、裁判所に競売申立てを行います。債権者からの申立てを受けて裁判所が競売開始の可否について判断し、開始決定となった場合には裁判所が主導して競売手続きを実行します。

しかし、公売の場合は、債権者である国や地方自治体が直接公売手続きを実行します。裁判所などを介さず、自ら手続きが実行できるという点が不動産競売と異なりますので、その違いを知っておくことは重要です。

【イメージ】

  • 不動産競売①債権者(金融機関など)が裁判所へ競売申立てを行う→②裁判所による開始決定の可否判断→③(開始決定された場合)裁判所が競売手続きを実行
  • 公売:①債権者(国や地方自治体など)が公売手続きを実行

所有不動産が差押えや公売申立てされた場合の対処方法

では、税金の滞納により所有不動産に差押えが入った、あるいは公売申立てをされてしまったときはどのように対処すべきでしょうか。

何もしなければ、所有不動産はそのまま公売によって売却されてしまいます。このような場合には、まずは滞納している税金を管轄している行政機関(税務署や役所など)へ出向き、納付についての相談をしてください。話し合いによっては、差押解除や公売の取下げなどに応じていただける可能性があります。最悪の事態を避けるためには、とにかく何らかのアクションを起こさなければいけません。たとえ可能性が低くても、相談に行くという行動はとても大切です。

ところが、相談に行っても状況が改善しなかったということもあるでしょう。その場合には、次の手段として「任意売却」という手続きで問題解決の道を探ってみる方法があります。税金だけでなく、住宅ローンの滞納もある場合には、任意売却で一緒に解決できる可能性があります。

任意売却では、債権者の合意を得ることができれば、債務が残ってしまう場合でも所有不動産を売却することができます。公売や不動産競売よりも高く、市場相場に近い価格で不動産を売却することが可能になりますので、債務を圧縮することができ、売却後の生活の負担も現状よりは少なくなるケースが多いです。

但し、任意売却を行うことのできる期間には限りがありますので、任意売却を検討したい方はできるだけ早い段階で、任意売却を専門に扱う不動産会社に相談されることをお勧めします。

まとめ

税金は、住宅ローンなどの借入金とは違って減免措置がなく、いかなる理由があっても支払いが免除されることはありません。たとえ、自己破産したとしてもです。であれば、少しずつでも支払っていくことが、差押えや公売を回避するための唯一の方法となりますので、税金を滞納している状況にある方は今一度、税金に対する意識を見直し、早めに対策を行ってください。

株式会社いちとりは、任意売却を専門に扱う不動産会社です。

税金を滞納している、住宅ローンが払えない、所有不動産が差押えられた、公売・競売の申立てをされてしまった・・・などの問題にお悩みの場合は、まずは一度、いちとりまでご相談ください。状況に応じた解決策のご提案やアドバイスをさせていただきます。

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